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青空の下で  作者: 青山 てん
6/6

初戦

前半は完全に欅ヶ丘ペースだった。開始10分ほどに右サイドのクロスからヘディングで先制。その後コーナーキックからこぼれ球をボランチの三年生がボレーシュートで追加点。その後もきれいにパスを繋ぎ、前半2ー0というスコアと圧倒的支配率で折り返した。

後半、相手の石山中は一年生を二人入れてきた。

遼太はその二人に認識があった。

「加山、滝沢…」

思わず二人の名前を口にした。

「どうした、蒼井。あの二人知ってるのか?」

遼太の声に気づいた三年生のキャプテン、大沢が話しかけてきた。

「あ、はい。小学校の時のトレセンで一緒にやってました」

「トレセンか。上手いのか?」

「はい、小学校の時はツートップ張ってました」

「そうか、ありがとう」

そう言って大沢はグラウンドに向かった。

「蒼井、様子を見て後半入れるぞ。準備しとけ」

桂木からそんなことを言われた。

「はい」

ピーーーーーーーーッ

後半開始の笛が鳴る。

彼らは速かった。

一年生コンビ二人は息ピッタリのコンビプレイで欅ヶ丘ゴールに迫った。

そして、後半10分ついに滝沢によってゴールが奪われた。

やはり加山とのコンビプレイから。スルーパスに抜け出しあっさりと決めてしまった。

「蒼井!いくぞ」

失点後すぐ桂木から声が掛かった。

「はい!」

相手のパスカットによってピッチからボールが出た。

第四審判にすね当て、スパイクを確認してもらった遼太は主審に促され、ピッチに出た。

入部三ヶ月。とても早い公式戦デビューとなった。

遼太の技術は確かにチームの誰もが認めていた。

しかし、同時にこのデビュー戦では緊張で固まってしまうだろうとも思っていた。

そんな、不安は遼太のファーストプレーを見て誰もが吹っ切れた。

右サイドバックが持ったボールを受けるため、近づきパスを受けるのと同時にファーストタッチだけでまずマークに来た一人を抜き去った。

抜いて三歩ほどで左サイドハーフにスルーパス。それは、惜しくも合わず相手のゴールキックになったが、チームの遼太への信頼は深いものになった。

遼太が出場してからはまた欅ヶ丘ペースに戻った。

圧倒的支配率。常に相手陣地でプレイしているのにボールを取られない。

そんな中で一瞬にして空気が変わった。変えたのはもちろん、遼太だ。

散々回したところでいきなりドリブルを開始した。

シザースで一人を抜く。残すはセンターバック二人とキーパーが一人。

左サイドにロングボールを出すと見せかけまた一人を抜く。その勢いのまま股抜きでもう一人を抜いた。少しボールが足元から離れてしまう。いや、離した。誘いに乗ったキーパーはダッシュで前に出る。しかし、遅い。出てきたキーパーを嘲笑うかのように遼太はループシュート。

ボールはきれいにゴールに吸い込まれた。

三点目。

遼太は勝利を確信したガッツポーズをベンチに向けた。

桂木はベンチから立ち上がり喜んでいる。

「急げ!」

滝沢が叫ぶ。

しかし、遅かった。

ピッピッピーーーーーーーーッ

試合終了のホイッスルが鳴る。

欅ヶ丘中の三年生たちは大いに喜んでいる。

逆に相手校の選手達は堪えきれない涙を流している。

遼太は初めて中学サッカーというものを理解した気がした。

「蒼井!ありがとう」

大沢がそう言ってきた。

「いえ、そんな」

「次も頼むぞ!」

「は、はい」




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