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女に出逢った

 廃鉱に着いた俺はラインドに借りたツルハシで目的の特殊鉱石を採掘をし、なくなると奥へ進むと繰り返していた。

 目的数は採ったがここまで来たんだから、持てるだけ採って帰ろうと思う。


 随分採ったがまだ腰巻き鞄に入るからその分を採る。

 カンテラの火はまだ持つし追加の燃料も少しある。


 ここはインガルスパイダーと言う魔物が出る。

 大きさは1.5メートルくらいの中型だ。

 毒も持っておらず特に脅威は無い。

 スパイダートラップにさえ引っ掛からなければ何て事はない、デカいだけの雑魚だ。


 しかしこいつの残すインガル糸は、欲しがる人も居て高く売れるんだ。

 楽なのに金になる廃鉱だ。問題はバリアルスから遠い事だな。


 ほくほく顔で素材を回収しながら進んでいく。

 サブスキルのシャドウのお陰で魔物は暗くても分かるんだが鉱石となると別だから、カンテラが無いと欲しい鉱石が分かり難い。普通の鉱石と非常に似てるから間違えると勿体無い。


 灯りを揺らしながら進んでいく。

 曲がり角が見えてきた。

「また蜘蛛居るなそんな気配する。」


 そしてショートボウの準備をしておく。

 インガルスパイダーは目が弱点だ。弱点さえ分かってる相手なら短弓スキルのウィークストライクが非常に良く効く。問題は射程がそれほど長くない事だがな。


 ゆらゆらと揺れる灯りと共に曲がり角を曲がり、暫くすると女の叫び声が聞こえて来た。


「お願いーそこの人!たーすーけーてーー!!」


 こんな所に人が居るとはな。

 しかしここまで来れる実力があるなら死にはしないだろ。


「ここまで来れたんだろ自分でなんとかしろ!」


 冷たい様だが他人を利用して、美味しいとこを持って行く奴も居るから無視が一番だ。

 そう思っているとまた叫び声が聞こえる。


「武器も何もないのよー!気付いたらここに居たのー!たーすーけーてー!!」


 武器を持ってないってどこかで聞いた状況だな。俺みたいに下着だけなら助けてやるか。くっくっくっくっ。


「お願いですーーー!何でもしますーーー!助けてーくださいー!!」


 スゲー必死だな。しかも何でもしてくれると言ったな。帰りに荷物持ちでもさせるか。


「ほう、何でもするのか助けてやろう!」



 そんな大仰(おおぎょう)に言わなくても、雑魚だから楽勝なんだけどな。

 身の丈に合わずこんな所まで来たんだろう。


 そしてインガルスパイダーの目にウィークストライクを二発打ち込み、苦しんでいる間に近付き影斬りで瞬殺した。

 おおう。今回はインガル糸が三つも出た、大当たりじゃないか。



 そして近付いてカンテラの灯りが女の顔を照らした。

 顔を見た瞬間ドキッっとした。基本的に女好きな俺だがこれはいつものとは違った。

 ああこれが一目惚れかと分かった。

 物凄く可愛くそして俺好みな顔をしていた。

 スタイルも良いし、胸もそこそこ大きい。

 全て俺好みな女だった。

 この女が欲しい、嫁にしたい。初めてそんな事を思った。

 ずっと嫁なんて要らねえと言っていた俺がだ。



「ほうほうほう、これは中々。変わった格好してるが可愛いなお前。何でもするって言ってたな。」


 そう言うと女は少し下がった。警戒されたかもしれない。

 これはもう強引に行くしか無い。


「お前俺の嫁になれ。」

「はあー?」

「聞こえなかったか、嫁になれって言ったんだ。命助けて貰ったんだ安いもんだろ。嘘でしたって言うなら今ここで俺が殺してやっても良いぞ。」


 俺は嘘付きが嫌いだ、これは方便じゃなく本当に嫌いだ。

 今までに報酬をケチった奴等や依頼で嘘を付いた奴等は、痛い目や怖い思いをしただろうな。


「待って待って、私は死にたくない。」

「なら俺の嫁になるしかないなあ。俺が居なかったら死んでたよなーー。」

「そうだけど、他のものじゃ駄目かな。」

「駄目だ、ここで蜘蛛に食われて死ぬか嫁になるか選べ。」

「蜘蛛に・・・?」

「そうだお前を捕まえて蜘蛛の前において俺だけ逃げると言うわけさ。そしたら死体も残らんだろ。」


 完全に無茶を言っている。

 それを分かっているが、無茶をしてでも欲しいと思った。

 普通ならキッパリと断り、あとで金でも払うと言う。


「わ…分かりました、もう何でも良いです何でもします、嫁でも何でも好きにして下さい。」


 あれ・・・もうどうでもいいって。こいつ文無しか。と言うか完全に項垂(うなだ)れてやがる。


「何だお前・・・心でも折れたのか。」


 返事すらしねえ。

 見たところ裸足だし自警団でもらった靴でもやるか。


「まあいい、取り敢えず余ってる靴あるからこれ履けよ。」


 靴を履いたら何か驚いてる。何に驚いてるんだろうな・・・分からん。


「俺はもう目的の物採ったから洞窟でるぞ。ところでお前名前は何て言うんだ。」

「・・・カワゴエ・・エメ・・・。」

「お前嘘付いてるな。俺はそういうのが分かるスキル持ってんだよ。もう一度言う名前は何だ。」

「カワゴエ エメラルド・・・。」

「まだ嘘つくか、若しかして俺を安心させて近付いたどっかの刺客か。」

 そう言うと男はまた武器を抜いて、こちらに向ける。

「嘘じゃないよ。本当にカワゴエ エメラルドって言うのよ。」

「よっぽど死にたいのか俺が舐められてるのか・・・この状況で丸腰がいい度胸だな。」


 何かを思い出したかのようにハッしている。


「あ、エメラルド=カワゴエよ。」

「これは本当らしいな。ところでお前は俺を舐められるくらい、クラスレベルが高いのか。」

「クラスレベル・・・?」

「お前記憶でも無くしてんのか、それともボケてるのか。」

「ああメインクラスね。」


 この子はエメラルドって言うのか。

 誰かに連れ去られてここに来たが、連れ去った奴は死んだのか。そんな所か。

 これだけ可愛ければ、人攫いに攫われたと言われても頷けるが・・・。

 しかしこの先は何処にも通じてなく行き止まりだぞ。

 なんか怪しいな。アイアンロングソードも余ってるが、これは渡さないでおこう。


「メインクラスはマジックシーフでレベルは1よ。」

「お前巫山戯(ふざけ)てんのか。クラスレベル1で何でこんなとこまで来れるんだよ。」

「私が知りたいわよ。気付いたらここに居たのよ。」

「まあ嘘じゃないみたいだな。」

「俺の嫁になるんだ嘘付いても仕方が無い。俺はマイノール=リンゲント歳は二十三でバトルハンター[6]だ。呼び方はマイノールでもマイルでもいいぞ。」

「偉そうに言ってて1と6って大差無いじゃない。」

「お前本当に記憶無いのか。最大10の内1と6の差は大差だと思うがな。」

「最大10・・・?」

「一部記憶は有るようだが、肝心な部分が抜け落ちてるな。今後お前の記憶は無いものとして話するぞ。」



 この子本当に一部記憶無いのかも知れんな。

 しかし完全には信用は出来んしな。

 まあ本当のところが分かるまで良い思いしておくか。


 肩を抱いたら触り心地が凄く良い。

 髪に触るとサラサラで指の隙間を溢れる様に流れていき、更に良い匂いがする。

「(ふんふんふん。)」

 (かぐわ)しい、そしてしつこくない良い香りだ。


 腰に手を回すと程よく(くび)れていて細い腰だ。

 た、(たま)らん。我慢出来ん・・・。

 また肩を抱き、そのまま右手を服の隙間から胸へ手を入れ胸も揉みしだく。

(や・・・柔らけえ・・・手に指に肌が吸い付く様だ。手放したくない。)


「ちょっ何してるの。やめっ・・・。」

 俺を振り解こうとしてるが、驚くほど非力だ。

「やめ・・・て。」

「少し大きめで良い大きさだな。」

「・・・・・あっ・・・はぁ。」

「このくらい良いだろ。これも駄目だと言うなら置いていくぞ。」


 また少し脅し文句を言っておく。

 するとこの子ことエメラルドは俺を睨み付けている。

 勝てないと分かって睨むだけなのだろう。くっくっくっ。


 (ようや)く廃鉱の入口に着き、外に出た。

 顔半分を覆っていた口布の外し、エメラルドを見た。

 明るい所で見ると黒髪で黒い目で非常に綺麗に見えた。

 ああヤバいこれは本格的にヤバい。

 完全に惚れ込んでるなこれ。

 何が何でも俺を殺しに来た奴だったとしても、手に入れたい。

 顔は可愛いのに全てを見ると綺麗だと感じる。


「珍しいな黒く長い髪に黒い目か、綺麗だな。改めて見て惚れ直した。」


 心の中で思った事がポロっと口から出てしまった。

 言ってしまった事はもう戻せない。


「いや実はよ、洞窟の薄明かりで見た時に一目惚れだったんだ。そして今また惚れ直した。」


 ちょっと気恥ずかしかったが、まあいずれバレそうだし嘘じゃないからいいだろう。


「本当に一目惚れとか。一目惚れする人初めて見たわよ。」

「ヘッヘッヘッ。エメラルドお前本当に可愛いな。お前が拒まない限り守ってやるからな。」

「エメラルドって呼ばないでこの名前嫌いなのよ。」

「じゃあエメラでいいか。」

「それならまあ・・・いいわよ。」

「じゃあエメラ、こんな出会いだったが今後もよろしくな。それと偶たまには触らせてくれ。」

「一言多い!まあこっちもよろしくねマイノール。それと助けてくれて有難う。」



 そして俺とエメラの二人でディリへ戻る事にした。




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