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怒ってないよ! の「間」

 久々に筆を執りました。

 今回のテーマは「あのマンガ」です。

 久々にできた時間を使い、京都・東山にある喫茶店へと入った時だった。コーヒーとホットサンドを待つ間、気を利かせたマダムが品書きを下げるのと入れ替わりに、夕刊ですよ、と、インクのにおいも新しい、京都新聞をテーブルの上へと置いた。

 とりたてて興味を引くようなニュースもなく、ただペラペラと灰色がかった紙をめくっていると、オヤ、と目に留まったものが。

 それは、子供たちからの投書やイラストハガキを紹介しているコーナーの下段で、にっこりと笑っている漫画「ポプテピピック」のポプ子・ピピ美のご両人であった――中指を立てていなかったのが採用の理由だろうか? ――。

「思いがけないところであったナア。ハテ、作者の年齢は……?」

 軽い気持ちで見てびっくり。なんと十四歳――ざっと中学二年ぐらいか? ――ではないか……。

「ワオ、日本の誇るクソマンガ――これはほめているのだ――は中学生にも名前が知れとんのか……」

 と、人のことをあれやこれや言ううちに、そういえば自分が深夜アニメを見始めたのもそれぐらいだったなア、と今更ながら気づいた。考えてみれば、十代の前半という時期は、とにかく心の内側の穏やかならざる頃。世の中、特に今まで信じてきたものに少しずつ疑いの眼差しを向けるようになって、毒のある事物へ興味の沸くのは不思議な話ではない。

 かくいう自分もそんな一人であったわけだが……今となっては見る影もありゃアしない。無残な話だ。

 とはいえ、まさか二〇代そこそこでこういうヒトコマに顔をしかめてしまうようになるとは思わなかった。放っておくと、タダのガンコジジイになりかねない懸念がある。気をつけねばならない……。

 与太話はこの辺にして、話の本筋をクソマンガ――くどいようだがホメている――に戻そう。稀代の天才漫画家・大川ぶくぶ師描くところの本作は、四つしかないコマとコマの間に、絶妙な「」があるから面白いのでは? ということに気づいたのはごく最近のことだった。タイトルに持ってきた「怒ってないよ」のやりとりが入っている回は、やたらと目にするのでご存知ない方を探すほうが難しいかもしれない。

 ところがどうしたことか、あれがアニメーションになった途端、急に面白くなくなったのである。つまり、「原作にあった、次に何が起こるんだろうなァ、と期待させる『間』がなくなって、テンポよく進む新喜劇的な笑いへ変化してしまった」のだ。

 もちろん、一五分の尺へ収めなければならない、放送というメディアやギャグ・アニメーションというジャンルの性質は重々理解している。それだけに、あのコマとコマの間にある長すぎず、短すぎない、読者に期待を抱かせる「間」の魅力がうすれたのは残念でならない。

 ところで……。

 俗に、エンタメの世界の流行は現実の逆さ写しである、と言われている。世の中が平和だと残酷なもの、世情穏やかならざる時はゆるりまったりとした調子のものが流行る、ということらしいのだが――。

 もし、ポプテピピックのあの「間」というもの魅力を感じているのが私だけではなく、同じ世を生きる人々の共通の認識なのだとしたら、これはせわしなく動く世の中に対する、裏返しの反応なのではあるまいか……?

 思い過ごしならばいいんだけどなア、と考えるばかりの今日この頃である。

 繰り返し思い描くのはセカンドの出オチ。

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