改作カットアンドトライ
今回は珍しく、小説のお話です
リハビリ的にエッセイのほうを書き出したわけだが、かといってまるきり小説そのものが書けないわけではない。新作とカウントしていいか分からないが、「鴨川浮音捕物控」の第一作であった「七条大橋の魔女」は故あって書き直しているところ。
元々あの作品、とあるローカル誌の予備原稿としてその編集部に預けていたシロモノで、それを引き揚げて同人誌に載せ直したという経緯がある。第二作にあたる「嵐電車中の死者」が書かれるまでには三、四年ばかりの開きがある。そうなると、贔屓目に見ても気になる箇所というのが出てくるわけ。しかもこれが時間差でジワジワッとくるから困る。
そこに加えて、Web書き下ろし、はては番外編に「学校事件記者」なんてのも始めたからいろいろと設定にも「ズレ」が出てきたわけである。篠澤広ちゃんじゃないけれど、まさに「ままならない」わけである。
そうなればひとつ、ここらで「定本」として第一作目を書き直そう──となるのはご理解いただけるかと思う。
てな具合で意気揚々、筆を執りだしたのだがこれがまあなかなか難しい。
元々が一回こっきりでも構わないというつもりで産んだキャラクターだったから、それがウッカリ続いてしまった場合のことなど「七条大橋~」において微塵も考慮されていない。カットアンドトライでここまで来た分をうまいこと反映しようとすると、かなり話の筋にも影響が出てきてしまう。で、その修正をしようとすると今度は話のボリュームがどんどん増えて行って……と、そんな具合になっている。
おかげで、元々は原稿用紙十枚目あたりで登場した「七条大橋の魔女」が、三十枚過ぎあたりでようやく……という始末。まあ、どうせ紙数のほうはこちらの自由、如何様にもなる。
編集は後回し、ひとまず初稿を書き上げましょ……と、今夜もウチダ勝晃は鈴虫の鳴き声を聞きながらパソコンとにらめっこしているのでありました。
よく考えたら、「第三高校殺人事件」も定本で相当に量が増えていたんでした。
さて、いったいどうなる、「七条大橋の魔女(定本)」。