表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
88/130

南部戦線構築 BC487 11月

両軍共に兵力に不安のある中で、安全策を取った結果です。

=BC487 11月 サレルノ近郊 デマラトス=


サレルノの南20kmの地点に橋頭保用の砦を築き始めた。

サレルノの港を使いローマで切り出された石を使って小規模ながらも堅牢な砦をいくつも作っている。

砦の間を軍用道路で結ぶことで軍団の移動を楽にする。

これまでの功績が認められ、トラキアーノ軍団は12個百人隊に増えた。

彼らを砦や周囲の治安監督に使うことで、周囲の平定を行い、安全を確保した時点で宿営地を作る予定だ。


宿営地ができたなら、最小限を残し砦は解体、資材をさらに南方に作る砦に流用する。

今のローマの実力ではギリシア連合には勝てないし、一度でも負ければ侵攻方向が北に変わる可能性がある、それは避けたい。

負けないための安全策が必要な時だ。

成果が上がるには時間がかかるが、歩みを止めなければいい。

ローマ人はその辺を理解してくれている。

スロー&ステディーとはいってもかなり速いペースであるとは思うが、ローマに来る商人からアーシアがタラント入りした噂を聞いた。

これからは充分な警戒で進めていかないと・・・


=BC487 11月 カラブリア地方 ポセイドニクス=


クラブ隊を率いるポセイドニクスは副官のアリストダモスに今後の指示を行っていた。

「基本は3騎で一組、できるだけ広い範囲を被らないように索敵してくれ。現地住民にはタラント兵に情報を当たってもらう。」

アリストダモスは頭はいい。この程度の基本的な指示で十分に動けるくらいには、お互いに信頼が成立している。

隊長ポセイドニクスはどうなされますか?」

「メッセナが見える地点でシチリア島と連絡を取ろうと思う。ラムヌース型での輸送も考慮に入れている。」

それを聞いたアリストダモスは、

「では発見したら、小隊の1騎をそこに連絡にむかわせます。そちらから援軍到着の時には狼煙を。」

「了解した。狼煙は赤で。」


「早いとこパンティティスも合流してほしいな。」

「ええまったく。パンティティス隊長もこられれば大分楽になりますね。」

ダイヤ隊を率いるのはパンティティス隊長である。アーシア様からはすでに招集をかけたとの連絡が来た。


騎兵の役目として重要なのは高速移動を利用した打撃力が重視されがちだが、実はそれ以上に索敵能力が重要である。

目線は高く広く見渡せ、高速で広い範囲を見回ることができ、発見後は高速で離脱して情報を中央に伝える。

この役目は騎兵にしかできない。

特にサルピズマは鐙の採用で足の鬱血を克服しているので、長期間の索敵が可能である。

このため、日に60kmの索敵を行うことも可能なので先手を取りやすい。


アーシア様は騎兵を重視しているが、一方で鐙の存在をひた隠しにしている。

現在のサルピズマは鞍と鐙が一体化したような特殊な形状の鞍と覆布で鐙がばれないようにしてはいるが、ここぞというときにしか使われていない。そして今回はその使用が許された。

馬上槍や青龍刀を扱うにはどうしても必要な装備であり、これらの長物も使用を許可されている。

鞍壺には「アポロの息吹」も結わえ付けられており、アーシア様がこの局面に非常に危機感を抱いているのが伝わってくる。


「いずれにせよ、今回は見敵必戦とはいかないな」

不満顔でポセイドニクスは呟いた。

「海兵の分を残してあげないといけませんからね。」

アリストダモスはおどけて答えた後、別れを告げると部下への索敵指示に向かった。

「俺の分が残ってればいいが・・・」

呟いたポセイドニクスの声は意外に本気が混じっていた。


=BC487 11月 タラント アーシア=


「偶然とは言え百人隊か・・・」

スパルタ海兵隊を率いるアーシアは偶然に驚いていた。

3隻のラムヌース型に乗り込んでいた戦士・衛士・護衛、とりあえず兵力になりそうな連中をかき集めたら100人になったのである。

ローマ軍の基本、百人隊と同じ規模というのは面白い。

同数なら負けないとは思うが、一度威力偵察をしてみる必要があるかもしれない。

それによって対応を考えてもいいかもしれない。

ボクらが進出したのはタラントの北西40kmの地点。現代で言えばアルムタラと呼ばれる地域だがこの頃は語源になった高い塀で囲まれた街は存在していない。

ここにタラントを守るための野戦陣地を構築する予定だ。

土塁と地形を組み合わせ、長期間の駐屯ができるような陣地を建設する。


敵の動向に関してはサルピズマとクルナに任せざるを得ないが、今回クルナは敵進行方向はシシリア寄りとの判断をよこした。

それと大量の石材の移動もだ。

資材の輸送は海路を用いているので、あと少しすればラムヌース級が妨害に入れるが、間に合うかは微妙なところらしい。

デマラトス2世、予想以上に手際がいい。

あるいはデイアネイラの入れ知恵か?


一度本格的にぶつかって手腕を確認したいが、ダイヤ隊とコルシカ島の兵力が増援で来るまでは安全第1で行こう。


この7日後、サルピズマ、クラブ隊は南方、監視砦群を発見。

快足を生かして周囲の偵察を行うも、宿営地までは確認できず帰還。

帰還後ポセイドニクスから使者がタラントに発せられアーシアに連絡がついたのはさらに5日後

太陽暦で11月15日のことであった。


双方とも防禦を固めた状態での接敵になった。


そろそろ、コルシカ島の兵力が到着すると同時に、冬の暴風ボレアースの季節に入りますので、海上交通は難しくなります。アーシア陣営は別ですが・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ