南イタリア防衛線BC487 10月
ナポリ落ちました。
この世界ではサレルノの方がおっきくなる雰囲気大です。
地図の赤がヘレネス勢力、黄色はペルシア勢力です。水色は中立勢力ということで、
トランプのスートの位置にサルピズマがいます。
=BC487 10月 タラント=
まさか1週間持たずにネアポリスが陥落するとは思っていなかった。
タラントから急遽イタリア半島つま先防衛に向かわせるサルピズマのクラブ隊を見送りながらボクは自分の見通しの甘さを後悔していた。
デマラトスの甥(彼もデマラトスと名乗ってるらしいのでデマラトス2世としておこう)の軍事的な才能はまるでハンニバルやスキピオのようだ。
少なくとも宿営地の考え方や防御設備など、100年以上後のローマの軍団のような段取りである。
結局、彼は700名でネアポリスを破壊してしまった。
彼は自分のトラキアーノ軍団を先鋒に5000の兵をローマから進発させた。
9月下旬のことである。
途中5か所に兵站集積所を設け、6か所目は柵と堀を併用した大規模な集積所、それこそ5000人が寝泊まりできそうな集積所を作ったらしい。
いわゆるローマ軍団の宿営地だ。
そこに5000の兵が入る前日にこれ見よがしに大量の兵糧が運び込まれた。
海岸までは船、それ以降は500人の人夫による輸送だったらしい。
この500人の人夫がトラキアーノ軍団だというのはわからなかったようだ。
彼らは宿営地でひそかに武装して警備についていた。
大量の兵糧が運びこまれ5000の兵がつくまで一日時間があることは何者かの手によってネアポリスに伝えられた。どうも行商人か旅芸人が伝えたらしい。
ネアポリスでは急いで確認し、急遽その夜に宿営地の兵糧を奪う作戦を決行した。
兵糧そのものは脱穀してない小麦とか、馬用の飼い葉、オリーブオイルなど5000人が1週間は戦える量だった。
結果から言えばネアポリスの宿営地襲撃は成功に終わった。
彼らの全力3000人が陣地を襲うと警備兵は兵糧を捨て逃げ出した。
大量の兵糧はネアポリスに戦利品として持ち込まれた。
そして兵糧のほとんどがもちこまれたときに、町中に潜んでいた騎兵隊が兵糧に火を放ち暴れまくった。
騎兵隊は兵士が出て行った後に馬を曳いて大規模な隊商(馬商人)のふりをしてネアポリスに入り込んだのだ。
同時に宿営地の兵たちも攻め寄せ、内側から開けられた門を通ってネアポリスに乱入。
建物に放火し人々を殺しまくった。
ネアポリスは自分たちが持ち込んだ燃料のせいで焼け落ちたと言っていい。
次の日に主力がついたときにやったのは、まず街の消火活動だったらしい。
港湾設備は一部無事だが、アテナイ人の作ったネアポリスはここでいったん消滅してしまった。
生き残った人々も奴隷として売られたと聞いた。
ウエイ陥落といいネアポリス消滅といい、デマラトス2世の知略は十分に警戒するべきもののようだ。
急ぎ南イタリアのギリシア植民都市の安全保障のためタラントからスパルタ海軍100名を北上させ防衛用の警戒ラインを構成させた。
シチリア防衛用にはサルピズマの13騎とタラント兵300を向かわせている。
本格的な戦闘は無理だが味方の増援が来るまで遅滞防御をすることはできるであろう。
急ぎスパルタから増援を呼びたいが、下手に呼ぶとオリンピア攻略で欲求不満がたまっている彼らは暴走しそうで怖い。ここで余計な損害を出してペルシア戦争に悪影響を出すのは避けたい。
とりあえずは近場のメッセナ、シチリアに援軍を依頼してコルシカ島からダイヤ隊も呼び寄せるとしよう。
カルタゴ対策は当面エジプト頼みになるが、何とかしてもらうしかない。
ヌミヴィア騎兵との交渉がうまくいけばいいのだが・・・
=BC487 10月 サレルノ デマラトス=
ネアポリスから南に30kmの地点で宿営地の作成に入った。
サレルノという漁村らしい。
ここはタラント、メッセナを見据えた後方の補給基地になる予定なので、ネアポリス前に作った餌用の基地とは違ってがっちりした基地を築く。
周囲は深さ1mの堀を掘ってその土で1mの土塁を作る。
これで高さ2mの外壁の出来上がりだ。
近くのイルノ河から用水路を引いてきて水堀にする。
これで飲料水と防衛力の両方を向上できる。
土塁の上には柵を組み防御力を上げる。
見張り台も作成し、さながら木製の街のようだ。
ここに常駐するのは500名、
徐々に周辺を侵攻し、ローマの橋頭保を作っていく。
第1目標はタラントだが、同時につま先も抑えないと挟撃される可能性がある。
ともあれ、ネオポリスではヘレネスをだいぶ殺せてすっきりした。
イオニア人というのがまた良かった。
まったく心がとがめない。
ドーリア人だと若干は心が重くなるのだ。
忠実な部下たちのことを思い出すから・・・
だが感傷に溺れる余裕はない。ヘレネスは根絶しなくてはならない。
デイアネイラの言う通りなら、彼らこそ諸悪の根源になるのだから。
ペルシアが彼らに滅ぼされれば、ヘレネス以外は人間でなくなる。
かつては自分もそう思っていたのだから間違いない。
他民族など自分らに使える動物にすぎない、そう思っていた。
ペルシアのように多民族が融合し文化を生み出すという考えはなかった。
競争し協力し進みあう。そんな考え方もあったのか。
そうやって進歩する速度を上げたところで果実を奪い取る。
それが最大の成果を得る方法だ。
デイラネイラによればペルシアが滅ぼされれば、人の進歩は止まるらしい。
俺の取り分を増やすためにはペルシアに生き延びてもらわなくてはならない。
なぜなら、俺は神を欺くために力を欲している。
少しでも多くの力が必要だ。
それぐらい神は面倒な相手だ。
デイアネイラは神ではないがその手前の不死者である。
こいつすら殺す方法が現状では見つけていない。
アーシアはそれを見つけたようだ。
ならば、それをうまく奪わないといけない。デイアネイラを服従させるために。
その力を使ってデマラトスこそ人を超える英雄になるのだから。




