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メッセニア・オリンピア戦役BC487 5月~8月

イタリア半島でデマラトスがやってた時にアーシアがやってたことです。

結構オリンピアが大変になってます。


=BC487 5月 メッセニア アーシア=


メッセニアのカラマタの港に着いたのは、胃の中には何も残っておらず、胃液を2日ほど吐き続けた後だった。元気なのはイシスとホルスの親子だけだ。

他のみんなもぐったりしている。


この航路は天気が良ければ景色のいい遊覧ルートになるんだが、「黄金の羊」号は所詮は全長13mの小型艇、3mの波にもまれると猛烈に揺れる。

キールとセンターボードの組み合わせで重心が低く、たとえ60度まで傾いても元に復元することは、わかっているので危険性は少ないが、操帆する人間が振り回されることは変わりない。

今回のメンバーでこの船を操れるのがボクとコリーダだけなので、他の女性陣のように船室内のハンモックにくるまって揺られているわけにもいかない。

船室では回し車のようになった中を二匹の黒猫が楽しそうに飛び回っていたらしいがボクはそれを見る暇はなかった。

コリーダに舵をまかせ操帆を受け持ったが、何度頭から潮をかぶったかわからない。

こんなとき頼りになる交代要員は各地に配属しているか、後からくるラムヌース型3隻に分乗している。


こんな無茶をするほどメッセニアからの情報は緊張に溢れたものだった。

4月のラオニサス祭終了直後で、一番緊張がゆるむはずのこの時期なのに一触即発と雰囲気がビリビリ伝わってきた。

もしアレティアネットワークによる情報がなければ、手遅れになったかもしれないと思うと気が焦り、それが海が荒れそうなのを無視して、出港せざるを得なかった原因にもなったのだから、連絡をくれたスパルタの姫に素直に感謝しきれないもの事実だ。

今回の騒動を起こした奴らに対する恨みは倍増したが・・・


アーシアがメッセニア入りすることでその地の緊張は目に見えてとけていった。

スパルタンの行動に抑制がかかり、ヘイロイタイとも会話できたことで、今回がオリンピアの陰謀ということに納得してもらえた。

これが陰謀だということを信じてもらえたことで、スパルタに向けられた怨みの一部がオリンピアに向けられたことで、かろうじて、暴発をとどまってもらえたというのが実情だった。


ここでスパルタンの説得にもヘイロイタイの説得にも、オリンピアが自分たちを道具として使ったということが効果的に響いた。

彼らのプライドに火をつけたといってもよい。

そのせいでオリンポス攻略の声が大きくなってってしまったが、アーシアはそれを止めることはしなかった。

史実でもオリンピアはプラタイアの戦いで兵を出していない。

逆にスパルタは重装歩兵10000、軽装歩兵ヘイロイタイ35000で参戦し、ほぼ独力でペルシア軍30万を撃破するのである。

ペルシア戦争の今後を考えると、今後もメッセニアを騒がされることは死活問題なのである。


このためオリンピアに対する懲罰は厳しいものにせざるを得ない。

とはいえ、多少戦闘で痛めつけても、あきらめず逆恨みするであろうことは予想にかたくない。

やるなら徹底的になるのだが、あそこにはゼウスの聖域がある以上、危険になればそこに逃げ込むのでポリスの根絶は無理である。

そこで、オリンピアの存在を揺らがしかねない謀略を仕掛けることにした。


第1段階はあぶり出しである。

扇動工作員をクルナを集中的に使って、徹底的にあぶり出し、北に追い詰めていった。

最終的には30人ほどがあぶりだされ北方のテゲアに逃げ込んだ。

この時点で、このオリンピア市民権のある工作員とオリンピアとの関連性を確認し、関係ないなら処断するようにボクはスパルタの軍司令官ボレマルクとしてオリンピアに勧告した。

勧告の時にはオリンピアは15000のヘイロイタイで包囲していた。

当然のことながら、工作員は切り捨てられたが、誰が処断するかで大揉めに揉めた。

完全包囲の中を通っていく人間は命の保証はない。

そこで、アーシアが一つの提案を行った。

「他のポリス市民の処罰を承服なしに行うことはポリス間の大問題になる。そこで今回の罪人に関してはオリンピア市民一同からの依頼があれば当方が代行して処罰してもよい。」

オリンピアはこの提案に飛び乗った。

直ちに処罰(死刑)の内容と名前の入った正式な文書が作成され、アーシアとの間で約束が行われた。依頼はオリンピア市民一同の総意で処刑の代行を依頼することだった。


アーシアはこの約束をすると直ちにクルナに命じた。

「このリストの人間をテゲア南のアテナイの聖域に押し込んでから討ち取れ!」


クルナはエジプトの民である。ギリシアの忌避には縛られない。

その結果、1週間後にはクルナから処分完了の報告が入った。


そこで、その状況を報告書をオリンピアに提出、彼らを絶望の底に落とすことに成功した。


オリンピア祭に出場するのに必要な条件がいくつかある。

①ギリシア市民ヘレネスであること

②刑罰を受けたことがない者

③神を汚す行いをしていないこと

④10ヶ月の訓練を受け、30日間の合宿の成績により審判官に適格者とされた者

この4つの資格をそなえた者に限定されていた。


今回のことでオリンピア市民全員は第3項に該当するアテナイ聖域への冒涜を命令したと判断されるとアポロ教皇アーシア名義で文書を送付したのである。


彼らからはそんな意図はなかったという反論の使者はやってきたが、アーシアはデルフォイ神官の長として聖域を汚した原因はオリンピアにあると主張、オリンピア祭の主催権を彼らから奪い取った。力で反論しようにもまだオリンピアは包囲されていた。


以後、オリンピア祭の主催はドドナのゼウスの聖域から派遣されるオリンピック開催委員会(神官団)が主催することが取り決められた。

オリンピアの市民権はオリンピア祭にも出場できない、対外的に不名誉な市民権となり、他のポリスの市民権を取得するものが続出。

その結果、オリンピアは多数のポリス市民が住む自由都市にして聖地という形になり、皮肉なことにこの事件のあとはヘレネスの重要地点として隆盛を始めることになるのである。

(日本で言えば堺とか長崎のイメージである)

後にはイタリア・デルフォイ航路の中間点として近縁にキクノス港を整備することになる。


ひとまずオリンピアの処断を終えた彼は、この年のヘイロイタイの功績に報いるため従来のタルホコムギではなくエジプト・ペルシア小麦の作付けの許可をスパルタ本国に申請し、許可が下りた。

この年の作付けから土地や気候を考えながら順次切り替えが進むことになる。

タルホコムギの収穫倍率は1.2-1.3倍程度だったので、エジプト・ペルシア小麦の4倍という数字は信じられないほどの増収を彼らにもたらすことになる。

つまり作付面積では翌年の種もみを考えると一人当たり2haの土地が必要だったものが5aで済む計算になる。40分の1の労力ですむことになるのだが、徐々に増える労働力の余剰は木綿や麻等の植物に置き換えられ、大豆や大麦・燕麦・牧草を利用した畜産の開始につながることになるのだが、まだスパルタの経済統制は強く、大きな動きになるにはしばらくの時間が必要そうであった。


アーシアは8月までこの地に留まり、農業指導やスパルタ駐留軍とヘイロイタイの折衝を行った。

しかしイタリア半島からウエイ陥落の報が届くと急いで引継ぎを行い、イタリア半島に向かうことになった。


彼はこう言って出発したという。


「馬鹿な!もう100年ずれているのか?」


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