アルクメオン朝エジプト
リヴィア編終了です。
次からはローマ編に突入予定してます。
ローマの状況確認しながらデマラトス片王の暗躍を加えて書き始めますので、少しだけお待ちください。
この頃だとまだローマは貴族政なんですよね・・・
紀元前488年1月1日クレオパトラ2世とキモンの即位によりエジプト第28王朝 「アルクメオン朝エジプト」が始まった。
王都はメンフィス、開祖はアミルタイエス2世とクレオパトラ1世に定められた。
クレオパトラ2世はアミルタイエスの妻であり、クレオパトラ1世の娘である。
そのせいでキモンとは義理の姉弟であり、血でもトラキア王家絡みでハトコの関係になることから配偶者としても共同統治者として民衆から熱狂的に迎えられた。
クレオパトラ1世はペルシアとの戦闘で敵兵数千人を巻き込み、消滅したと民衆には伝えられている。
その地にいた兵士らの証言により、その噂はものすごい速度で広まっていたが、クレオパトラ2世のセベク神退治という神話のような現実は民衆を熱狂させていた。
ペルシアによって侮辱されたセベク神が冥府を現世に持ってこようとしたのをクレオパトラが防いだという話に作り替えられている。
おかげで当面は上下エジプト共に反乱が起きそうな様子はない。
これで上下エジプトはアルクメオンの私有地に近い状況になってしまった。
近い状態を歴史上で示すなら帝政ローマのアウグストゥスによるエジプト統治が一番近い。
エジプトは神の子が統治しないとうまく統治できない地域なのだ。
即位前の期間を使って、メンフィスとテーベの整備の他にナイル河河口に巨大貿易都市アミルタを作り始めた。場所は現代のアレクサンドリアにあたる。他にネコ王の運河の再掘削等やることは山ほどあるが、当面は貿易都市の整備が優先課題になっている。
というのもカルタゴが勃興してきてシラクサに圧力をかけ始めており、シチリア島の防衛のためにシラクサがペルシア戦争に参加できないという史実があったことを思い出したからである。
実際調べさせていると、カルタゴはシチリア島に寄港地の割譲を迫っており、断るのに苦労している様子が見えた。
このためマルタ島を占拠し対カルタゴ最前線に設定した。このためシチリア島経由でイタリア半島との接触を持たざるを得ない状況になっている。
とはいえ史実より3年早くダレイオス大帝が死亡したことがどんなことになるか?
次の王はクセルクセス1世は変わらないとは思うが・・・彼がサトラップを集め王に推戴されるのに5年は見ていいだろう。
そのあとバビロニアとエジプトの反乱を鎮圧してからギリシア遠征が始まったはずだが、エジプトを強固にして、鎮圧が無理な状態にしたときペルシアがどう出るか・・・まだ予想がつかない。
この辺はクルナ一族に継続して探ってもらうことになっている。
とりあえず当面は東方面は安定すると考えていいと思う。
その間にやることは一つだ。
「アーシアさん、コーヒーはいかがですが?」
「ありがとう、レイチェル」
レイチェルは前に作ってあげたワンピースを身に着けていた。
肉体に変化はない。しかし彼女は記憶を失ったままだった。
15才の王家の姫という人格が残っていたが、ボクにまつわる僅かなこと以外は記憶がなく、対人恐怖症を患っていた。
それも仕方ない数千回の死を間近で味わされたのだ。
ボクのことだけでも覚えていたのは僥倖であったとしかいいようがない。
今では以前のような明るい表情を見ることはできない。
暗く思い沈み、人というものを悟ったような、乾いた感情を時折浮かべるだけだ。
彼女が心を許しているのはボクとイシスとホルスだけ、ピュロスやコリーダですら脅えるのだ。
親しくなれば、その人の死が訪れた時の悲しさを思い、親しくなることを避けようとしている。
イシスとホルスはこの頃はレイチェルの傍にべったりして飼い主を無視することが多い。
まあ不満はないが・・・ここ1年でイシスはすごくふてぶてしくなった気がする。
彼女の失われた記憶はいまでもアカシックレコードには残っている。
それを扱えるかどうかはわからないが、方法も教えてもらった。
彼女の入れたコーヒーを一口含む。
たしかなコーヒーの味がする。原産はエチオピアだ。
流通量はまだ少ないが、徐々に増やす予定にしている。
スパルタ海軍では眠気覚ましということで夜間の勤務に支給することが決まった。
ヨーロッパで最初にコーヒーを飲んだのはスパルタ人ということになりそうだ。
彼女にコーヒーの焙煎と粉砕、ドリップを教えたところ砂地が水を吸うように覚えてしまった。
おそらく、コンピューターのメモリーが余ってるという状態に近いのだと思う。
だとすると、長くこのままでいればいるほど、メモリーが減って元に戻すのは困難になる。
余分な記憶は与えない方がいいのだろう。
キモンに即位後の指示は出してある。
しばらくは表舞台から消えても大丈夫だろう。
「義父さん、マルタ島の住民代表とアミルタからの使者が来てるよ。」
「そっちの準備はできたようだな。キモン」
「まさか、結婚させられるとは思ってなかったけどね。」
「しかたあるまい。パトラは死んだことになったし、レオスでは政治的な手腕は足りない。おまえなら一族の力も借りられるし、子供も作れる。」
「まあ、その辺は納得はしてるけど、イソディケも子供を欲しがってたし・・・どうしたものかなと」
「彼女もこっちに呼べばいいだろう。」
「どういう扱いにすればいいのか・・・もめそうで」
「エルピニケもよんで、その義理の娘扱いでいいだろう。パトラの妻の子なら王族扱いになるはずだ。」
「姉さんも巻き込んでいいのかな?」
「正直、彼女には悪いとは思っているが、今はレイチェルを助けることを最優先にしたい。」
「わかった。じゃあアテナイに連絡するよ。」
マルタ島の住民代表からは税や労役の取り決めが主であった。
アミルタからは新型帆船の試作の報告である。
新型帆船はスループであり、1本マストだが極めて機動性の高いバミューダセイルを採用した現代のヨットに極めて近い形のものである。
この船を使えば最大速度15ノットも可能である。
最大速度15ノットということは時速27km、クレタ島まで500km、アテナイまで1000kmとしても風さえよければアテナイまで4日で着いてしまう。(実際には1週間程度だとは思うが)とんでもない速度である。
機動性のみを考えた船なので戦闘には使えないが、これから必要不可欠なものになるだろう。
最初の目的地はクレタ島経由でアテナイ、カラマタ後にシチリア島で準備してローマに向かうことになるだろう。
連れていける人間も数は限られるが、漕ぎ手がいらない分、船倉に余裕はある。
ローマでデイアネイラの正体を何とか暴き出して倒す。
それが彼女を元に戻す第1歩になるだろう。
「レイチェル、イタリアに行くよ。」
「イタリア?アーシアさんやイシスとホルスも一緒?」
「大丈夫、みんな一緒に行くから。」
彼女の笑みを取り戻す旅の開始だ。
=アーシアのスキル一覧表=
汎用知識(地中海沿岸地域)
汎用知識(北部アフリカ大陸)
一般技能(鑑定)
一般技能(知識・メイド)
一般知識(公衆衛生)
一般知識(知識・ファラオ)
専門技能(薬学)ランクC
専門技能(馬術)ランクD
専門知識(航海)ランクC
専門知識(土木)ランクD
特殊知識(灌漑)ランクF
特殊技能(尋問)ランクC
特殊技能(神学)ランクC
特殊技能(神聖文字)ランクD
特殊技能(法学)ランクE
特殊技能(料理)ランクB
特殊技能(詐欺)ランクB
特殊技能(弁論)ランクE
特殊技能(取引)ランクC
特殊技能(魔術)ランクS
特殊技能(演劇)ランクA
特殊技能(服飾)ランクB
特殊技能(知識・船舶)ランクC




