戦闘終結
あと1話でリヴィア編終了です。
その一話も後日談に近いんで・・・実質終了かな?
レイチェルの状態は・・・以下次話で
デマラトスの噴き出す血で、レオスの身体が真っ赤に染まったその瞬間に、彼女の目前にシャボン玉のような玉虫色の膜ができた。
それは見えない結界のように血を防ぐと、たちまち吹きあがる血で赤い壁が広がった。
突然レオスの足元から大量の水が間欠泉のように吹きあがった。
水の勢いは激しく、身につけていた防具、衣類関係なく吹き上げて彼女を裸身に剥いていく。
空中から懐かしい声がした。
「カノプス壷は用意してあんのか?空気頭」
「師匠!」
空中に出現したのは麦藁帽に、腰布スタイルのヘラクレイトスだった。
若い!あきらかに以前にあった時より若くなっている。
肌にも張りがあるし、何より白髪混じりの黒髪である。
返事を聞いた彼は泥から様々な形の壷を作ると、空気圧縮の高熱で一気に焼き上げる。
「急いでバラせ!」
彼の指は血を噴き出したままのデマラトスの死体を指していた。
彼の指示にしたがってデマラトスをミイラ化するように解体していく。
バラしてるうちにわかってきたが、ミイラ化する理由は永遠に身体を残すことではなく、永遠に身体が寄り集まって再び動くことがないようにすることが目的だ。
川に捨てようが、燃やそうが永遠の命を持ってしまったファラオは原子単位で意志を持って動いている。
遺骸は管理可能な大きさで、動き出さない大きさに区分けして保管する事でファラオの復活を阻止できる。
それの技術を極めたのがミイラ作りだ。
分けた遺骸はそれぞれ壷に入れ、合体しないようにする。
人型の壷は、認識力の弱い個個の部分に人体と錯覚させ逃げ出さないようにさせる。
実際にミイラ化が必要だったファラオは歴代の中に何人もいないだろうが、ファラオの慣習として伝わり、やがて一般にも広まっていった。
あのミイラ造りはおそらくはミイラ化の研究で作られた失敗作なのだろう。
中身はワニでも魚でもないもの・・・おそらく深きものの一族だと思う。
内臓の区分けや乾燥を防ぐ薬品の失敗で遺骸が動き出した、そう考えるべきとボクの脳が言っている。
今も続くミイラ造りの一族はダゴンの系譜をひく者たちと考えていいだろう。
だから仮面をつけていたのか。
仮面の下は蛙顔ということなのだろう。
カノプス壷に切り分けたデマラトスを入れ終えた瞬間に壺の血液がうごめいて音を発した。
(・・・ローマ)
確かにそう聞こえた。
ともあれ疑問は解消しないと、
「師匠・・・なぜ若返ってるのですか?」
「まずそこから聞くか。とりあえずババアはどうしてる?」
あわててレイチェルをみたがキトンが真っ赤になってるほか外観に異常は見えない。
ピュロスも問題ないと合図してきた。
「レイチェルは大丈夫だと・・・?」
ただし、まださっきの魔術の反動か目を覚ます様子はない。
「大魔術の反動で気を失っていますが、身体に異常は感じません。」
素直に感じたままを師匠に話す
。
その言葉を聞いた師匠は一つ頷くと、重々しい声で話し始めた。
「目を覚ます前に言っておくが、パンドラからの伝言だ。レイチェルが死んだ。」
どう見ても、生きてるじゃないか、なに不吉なこといってんだ師匠?
ボクの不満を見通したように師匠が言葉をつないだ。
「肉体は生きてるが精神が焼き切れてるはずだ。ということだ。」
その言葉を聞いたかのようにレイチェルは目を開いた。ただ、視線は焦点を結ばず、再び目を閉じた。
「たしかに、とりあえず命に別状はないようだな。」
そこから師匠の話は長く続いた。
まず、師匠が若返ったのはパンドラによる閨房術を使った回春法らしい。
外見だけは10歳程度若返ったが、中身は変わってないので寿命は変わらないとのこと。
その反動でパンドラは今30代半ばの美熟女になり、妖艶すぎる美女になっているとのこと。
次にレイチェルの話になったが、何が起こったはわかるが、どうなっているかはわからないとの話だった。
起こったことは、レイチェルがこの場の数千の命が失われるたことによるアカシックレコードへの莫大な情報流入を利用して、ボクの精子の情報を紛れ込ませることで
ボク本体の情報をアカシックレコードからオーバーフローさせ逆流させたこと、その情報を元に戦死した敵の肉体を材料にボクの身体を作りなおしたこと。
当然そんな作業をした彼女はブレーカーが焼き切れるように自己が崩壊したこと。
ただし、崩壊した自己も歴代のアレティア達の記憶で強化されていたので、運がよければ植物人間を免れるかもしれないということ。
「なにしろ数千人分の人生の情報の洪水だ。そんな魔力の中で動けるのは、ババアぐらいのもんだろう。」
情報の洪水=膨大な魔力源という考え方もあるか。
つまりボクは数千人の生贄を使って、元に戻ったわけで・・・完全に魔王だな。
「ババア自体も数百人単位での人生の記憶を持ってたから、瓦解してもどれかの人格が残る可能性があるだけで命がけの魔術だったはずだ。」
そう考えるとあの濃密な死の感触は、この戦場の兵士の死の記憶か・・・わかるような気がする。
「師匠、彼女を元に戻すには?」
「そうだな、同じような手順でやるしかないが、数千人の生贄か、それに匹敵する生贄がいる。そいつらを殺した時に魔力に乗っかりアカシックレコードの過去の領域に手を伸ばして情報を引っ張り出すんだが・・・正直やった人間が廃人になるのは間違いないな。俺でも無理だ。」
そこまで聞いたところでペルシア軍が撤退の鐘と共に戦場を離脱するのに気付いた。
まだ2万は残ってるだろう。
「いったんメンフィスへ移動してリヴィアの統治を確立させたら、彼女の復活方法を考えないと・・・さっきの匹敵する生贄って・・・デイアネイラみたいなもんですか?」
「ああ、行方は知らんがトラキアの伝説の魔女なら数千人の代わりになるだろうな。」
デマラトスは彼女を恨んでいるはず。そう考えるとたぶんローマ。まずはそこを目指そう。いなかったらその時に考えればいい。
やっとリヴィア編のいろいろが繋がりました。
めんどくさかった上にわかりにくかったと思います。すみません、筆力不足です。




