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魔術の代償

ちょっと短いけど、今日はクリスマスイブ

爆ぜろ・・・

説明いります?


デマラトスからビリビリした視線を感じる。

ただトラキアで感じた昏い感情が伝わってこない。

野獣のように純粋な殺意が襲ってくる。


異形になったせいなのか?

疑問を感じる間もなく敵は突っ込んでくる。

泥の上に踏み出した一歩目の衝撃はミルククラウンのように地面から泥を噴出させ、デマラトスを瞬時に加速させる。

地面すれすれを滑る感じで突っ込んできた。


片手を使って槍のように伸びてきた剣はここで上に避ければ即死、避けなくても即死と告げていた。

後ろに跳びながら仰向けに泥に倒れ込む。

デマラトスの手首が腹の上を通ったときに、持っていた剣が扇風機の羽根のように回転切りに変わる。

認識と同時にイージスの盾が、剣の軌道に割り込んだ。


トラックにでも衝突されたような衝撃が背面全面を襲った。

同時に深さ3m以上のクレーターができて、あたりのものを一気に押し流した。

その泥流はアカイア号すらずり動かした。

デマラトスは後方に跳び、距離を取ると、また折れた剣を交換する。

ボクも地面を蹴ってクレーターになだれ込んできた泥水を避ける。


この状況で唯一の希望は、剣が量産品でデマラトスの力では一撃で折れることだ。

二撃目が撃ち込まれれば死んでいただろう・・・たぶん。


それにしても盾を持っている左腕が痛い。

まるで二本の錐を突き立てられたようだ。

場所を確認する暇もなく、薙ぐような横切りが襲ってきた。

沼で30m以上隔てられていたが、なんの意味もなかった。


水面から斜めに切りあがってくる剣を、無意識で盾で受けとめた瞬間に、肩近くの血管が爆ぜた。

今度は衝撃をこらえられずに空中に放り出される。

体が浮いた瞬間に、水で板を作るイメージでサーフボードを作り出し、水上を滑りぬける。


「グワァ!」


今度は右脚、ふくらはぎの血管が爆ぜ散る。

一瞬赤く霧がかるが、キラキラ輝くダイヤモンドダストに変わって消える。


(もしかして、魔術の代償が髪から肉体に切り替わった?)


そう思わざるを得ないが・・・正直ありがたくない。


そんな風に考えられたのもサーフボードが敵兵の集団に突っ込むまで、中央の道につくまでの1秒の間だった。


四方八方からスローモーションで剣や槍が襲ってくる。

これはこれで・・・恐いものはあるが・・・さっきのような緊迫感は感じない。

ステップを踏み、体勢を変えて簡単に避ける。


空間把握が間一髪で兵士の体を貫きながら直進してくる槍を把握した。

スローモーションの中にピストルの弾が混じったようなものだ。

イージスの盾を射線に飛ばし、足裏にまたサーフボードを創る。


また左腕と今度は右足の裏に錐が撃ち込まれる。


「グワォー!」

足つぼマッサージを数十倍強くしたような激痛で、右脚がしびれた瞬間に槍が着弾、衝撃でそのまま水上を滑り、なんとか左の道まで滑り続ける。


全く右脚の踏ん張りが効かない、コンデションは最悪だ。

そんな最悪のまま、敵兵1万の中に突っきっていく。

同時にデマラトスが水面に飛び込み、魚雷のように突っ込んでくる。

ペルシア兵が予想外の事態にいったん固まる。



一人、いち早く回復した人物が突っ込んできた。

「パトラ、何やってるの!」


ボクはファラオの遺品を、すべてレオスに放り投げる。

「イナロス王子の敵をとれ!」


彼女が素早くファラオの遺品を身に着け、短剣を構えた瞬間に、水面が盛り上がりデマラトスが跳び上がった。


ボクが盾をデマラトスの頭上に飛ばす。


不意に現れた盾にデマラトスが衝突し、轟音が響く。

同時に上腕に深い傷が走り、激痛で視界が真っ赤に染まる。


一瞬、動きが止まった瞬間を逃さず、矢のようにレオスがデマラトスに突っ込む。

構えていた短剣は確実に胸を貫いていた。


今までの轟音に満ちた戦闘に比べると、静かで地味な映像だった。

レオスがわずかに身じろいだ瞬間、デマラトスの背中からわずかに光が漏れる。


漏れ出た光に続いて、すぐさま赤い血が漏れ出す。

漏れ出した血は、たちまち強く噴き出し、周囲を赤い霧で包み込む。


胸から噴出した血が、レオスを赤く染めていく、ボクは凄惨な光景なのに美しいと感じていた。

レオスが一言つぶやいた。


静かな彼女の声が水面に溶けていく。


「さよなら」

この程度で死ぬようなタマなら楽なんですけどね・・・

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