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メンフィスにて

ナイル水牛と描写しているのはアジア水牛です。

アジア水牛の原産地はアフリカか中東らしいのですが・・・不明でしたので使わせてもらいました。

エチオピア以南の方はアフリカ水牛で体長はアジア水牛より大きいのですが、わずかに軽いです。

ただ気性の面で家畜化は難しいようですので、人里近くにいれば駆除するしかないでしょう。

メンフィスの高床式木造住宅は想像ですので根拠を突っ込まないようにw

アマルナで兵士を使って埋めること2日。

瓦礫や砂で王墓を埋めながら、部隊の指揮官を選んでいた。

指揮官は部族長を中心に70人、縦隊長以下は彼らに一任した。

さすがにそこまでは手が回らない。


しかし、この辺はマケドニアの時を考えると大分楽だ。

少なくとも命令には従ってくれるし・・・思わず遠い目になってしまった。

部族間の諍いもとりあえず対ペルシア戦の間は保留ということで話がついた。

終わってからファラオが裁定を下すということで問題はないようだ。

王笏、剣、鏡の3つを身に着けた俺はラーより認められたファラオとしての権威を備えているらしい。

・・・レオスの方が統治者なんだが・・・


指揮系統を確立したことで、大分楽にはなったが時間のロスが不安だ。

俺たちは、その後は昼夜兼行で移動し、アマルナ出発5日目にはメンフィスがみえるところに来ていた。


ナイルを治める人間にとってメンフィスは非常に重要な街である。

上ナイルと下ナイルを接続する場所にあり、メンフィスより下流のデルタ地帯が下ナイル、上流の流域が上ナイルと定められている。


古代エジプトの第1王朝が王都と定めたり、アクエンアテンの死後一時的に王都になったりした重要な都市なのだが、不思議に、遺跡はラムセス2世の石像ぐらいしか聞いたことがない。

その理由が近づくにつれわかってきた。


「木造の家なんだ。」

洪水期に備えて高床式の家なのだが、木材で1階部分が組んである。

その上に葦や板で葺いた屋根の家が乗っている。

「この地域だけは気温が体温を超えることはないからね。湿気を避ける方を優先して作ってあるのさ。」

レオスが説明してくれた。


確かに一般的な建材の泥煉瓦では毎年の洪水で破壊される。

このため木材で土台を組むと、上に乗せる家も軽量である必要があるために木造になる。

遺跡が残らないのも納得である。


それとひときわ引いたのがその家の下を闊歩する水牛である。

でかい・・・1トンはありそうだ。


「ここの家畜はナイル水牛だ。エチオピアより南にいる水牛と違って、性格が温厚で人に馴れやすい。」

水牛って性格荒いのがいるのか?沖縄とか東南アジアで車引っ張てるイメージだが?

・アジアゾウとアフリカゾウの違いみたいなものかな、それならわかる。


水牛がいることも相まって、タイとかベトナムみたいな感じに見える。稲作してればそっくりなのに。



「パトラ様注意してください?警備隊が出てきません?」

ワジにそういわれて、奇妙なことに気付いた。

川上から二千を超える小舟がやってきているのに、敵味方確認のための使者も来ていないのである。


「メンフィスにも募兵の使者は出していたはずだよね?」

「ああ、出しておいてある。5000人は集まりそうだと連絡があったが・・・」

俺の独り言を聞きつけたレオスが答えてくれた。


「船団は一旦停止、確認しよう。レオスはこっちで指揮を執って。ワジ行くよ。」

「わかった。」

「わかりました。パトラ様」

すぐさま二人で小舟に乗り変え、メンフィスを目指す。


水面をミズスマシが進むように走る小舟の上で

「あの・・・パトラ様。私だけ行けばよかったんでは?」

棹を操っていたワジが尋ねてきた。


「ちょっと、起きてることが不気味すぎてね・・・蛙絡みだと人数は少ない方がいいし、倒せるのはこのファラオの遺品だけだから。」

そう言って王笏を軽く振った。

「ああ、確かに。それ借りて偵察はできませんね。」


流れに乗ってメンフィスに入る。

街の人々は家の中で静かに息を潜めていた。

ワジが街の人と話して原因をつかんでくれた。


「今戦える人間はすべて下流に現れた巨大船の方に向かっているようです。」

「巨大船?」

「ええ、話を聞くと航海用二層櫂船のようなんですが、河を帆で登ってきたそうです。」

「航海用二層櫂船か。何隻で来たんだ?」

「それがよくわからないようです。一隻という話もあれば、百隻という話もあって・・・確認のため全員で捜索中だそうです。」


メンフィスから先は洪水期は浅瀬に島だが、今だと小川クリークや河が入り組んだ迷路のような湿地帯というのが近い。

樹木や灌木もあることから見通しも悪く、広大な地域であることも相まって捜索には莫大な人手がかかる。


「ペルシアじゃなきゃいいが・・・まてよ。河を帆で登ってきたと言ってたか。」

「ええ、それが?」

「舟の帆は何枚だったか聞いてくれないか?」

ワジは船の帆は一枚でしょうとブツブツ言いながらも確認のため住居に登っていった。

そして、すぐ家から顔を出すと

「変な帆が二枚だそうです!」

叫んでくれた。


二本マストなら、間違いないスパルタ海軍。ローテーションからすれば、たぶんイオニア級アカイア号だ。船長は・・・キモン!?

「まずい!」


下手をすると同士討ちの可能性がある。

レイチェルなら上手く交渉するとは思うが・・・

ペルシアの軍船が追尾してきたのかもしれない。


戻ってきたワジに手早く状況を伝える。

「ワジ、レオスに状況を伝えて、アカイア号を探させないと、同士討ちになったら・・・」

「確かに、えらいことになりそうですね。」



(そういえば、このところ、レイチェルから連絡ないな?)

急いで船団に戻る最中、俺はようやく疑問に思い始めた。


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