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アクエンアテン

前に記載した地図を見てもらうとわかりやすいんですが、ルクソールからアマルナまで約400km、アマルナからメンフィスも同じくらいあるんですね。

これがどういうことかというと青森から東京経由で大阪で決戦するというイメージになります。

・・・川にのって動いてないとあり得ない動きですね。

ということでアマルナ到着(予定)です。

ナイル川の流れはゆったりとしており、沼のようにしか見えない場所もあった。

船首と船尾が大きく湾曲した船、儀式用の聖船にのってすでに二日が過ぎていた。

この船はオールを使ったガレー船の一種だが、漕ぎ手はデッキに立ってこぐ。

そのせいで速度は最大で3ノットというところであろう。

川の流れと合わせて4ノットから5ノット出るだろうか?


挿絵(By みてみん)


中央に組まれた日差しよけの屋形には、四方八方から集まってきた小舟から使者が出入りし、また散らばっていった。

この船はアメンラー神殿に奉納されていた聖船である。

ファラオの御座船の準備が無理だったので、代わりに神殿から借りだしてきた。


俺は屋形の片隅で涼をとりながら、使者を捌いているメネラオス、いやクレオパトラ2世を眺めていた。


何かを手伝おうにも話ができない。

言葉が通じないのは致命的にきつい。

ということで使者の対応をクレオパトラに丸投げした。


彼女はどうにか心の折り合いをつけたようだ。

表情は無表情のままだが、使者に指示を出している。

傍らではワジがサポートに入っていた。


クルナ村のアルカイオスは、先行させて新ファラオの即位とペルシアとの対決を宣伝させていた。

クルナ村の人々も総動員で宣伝にあたっている。

カルナック神殿の衛兵を護衛につけ神官たちも各地にとんでもらっている。

以前に征服されたとき、神殿や神像が大量に破壊されたことを思い出させたことで協力を取り付けた。


いま使える札は使い切った感じだ。


ということで俺はナイル流域の粗い地図を見ながら戦略を練るという作業をしていたのだが、味方の人数すら不明確な現状では大まかな想定しかできず、暇だった。


昼過ぎにワジがパピルスにまとめた味方の人数を示してくれたが・・・よめん・・・考えれば当たり前だがアラビア数字ではなかった。


幸い十進数なので、それぞれのマークの個数を数えるのだが・・・

「ワジ、このオタマジャクシ(足有)は?」

「それは敵の数です。」

「10万ということ?」

「・・・たぶんそういう数だと」

ワジにしてもそんな数字は普段扱わないので自信ないらしい。メネラオスに確認したら合っていたが、一事が万事こんなペースでつっかえつっかえ進めていた。


幸いにも天気には恵まれたので船はアマルナまであと一日というところまできていた。


「現時点で7000か予想以上に順調だな。パトラ」

「まあそうだけど、君もクレオパトラなんだし、呼び名どうしよう?」

「そうだな・・・じゃあレオスでお願いする。」

「了解。」

ラオスから一文字違いか・・・問題ない。


報告を聞いている限り、このままいけば予想より多い兵力が集まりそうである。

ペルシアへの怒りが予想以上に高かったのか、あるいは権威が失墜しているのか・・・そういえば、ここまで得た情報では、ペルシアの守備隊をアマルナに集中させて拠点防御に切り替えているらしい。


「アマルナの状況が気になるな・・・」

俺がそう呟いた。

「もうすぐ偵察が戻って・・・あの小舟がそうじゃないか?」

レオスはこちらに向かって全力で漕いでくる小舟を指さした。


「アマルナのペルシア兵が第3勢力にやられて全滅した。」

予想外すぎる事態に、レオスの顔に喜びはない。

「なにが起きた?」

「我々を襲った鰐頭がこちらも襲ったらしい。」

デマラトスか・・・もう行動が読めない・・・いや、アマルナだと狙いは一つか。

「ペルシア兵3000人を5人で壊滅後、神殿跡に消えたそうだ。」


アマルナにはアテン神殿以外に大きな神殿はない。間違いなくアメンホテプ4世、アクエンアテンの遺物が目的だろう。


「まいったな。時間がないところに面倒なのがでてきた。」

「かといって無視できまい。」


レオスはやる気満々だ?・・・!・・・イナロスの仇討ちになるのか・・・じゃあしかたない。


「アテン神殿を捜索する。護衛はいらない。ワジとレオス、俺の3人でいく。」


実際、何人きても、あれ相手だと足手まといにしかならない。


「みんなには目的を隠して、古き偉大な王に敬意を示しにいくとだけ伝えてくれ。」

「ああ、それで文句はない。」


レオスの断言を聞いてワジは天を仰いだ。

悪いな、俺の周りはいつもこういうことに巻き込まれる運命なんだ。


御座船は進路をアマルナの街から北方の神殿に方角を変えゆっくりと進み始めた。


ちょうど、そのころナイルのデルタ地帯を高速で進む奇妙な船がいた。

「姉さん、急にどうしたんですか?」

キモンがレイチェルに尋ねていた。

帆はフルセイルで二枚とも出してある。

折からの北風に滑るように川面を進んでいた。

レイチェルは銀色の猫を抱いたまま船首に立っていた。


「アーシアがまた訳の分からない状態になってるの。」

「父上がですか?」

「今は母上なんだけど・・・ちょっと前はただのアレティアだったのに、今は話しかけられないの。記憶とかはみれるんだけど・・またうろついてるし・・・」

「全く意味が分かりませんが・・・なにかあったのはわかりました。」


レイチェルはそこでため息を一つつくと

「おまけに消息不明だったトラキア王女まで一緒にいるし、目をはなすとこれだから」

「消息不明のトラキア王女ってエーゲ姫ですか?」

「あれ、キモン知ってるの?」

「ええ、母親の叔母ですから一度会ったことがあるはずですよ。」

「あなたにとっては大叔母さんになるのか。世界は狭いわね。」


水面を滑るように進むイオニア号、軍艦として作られただけに、船底は頑丈で荷物も軽荷で喫水も浅い。

泥底の浅瀬も気にせずに全力で上流に向かっていく。

時折泥底を削ってあたりを濁らせながら突っ走っていく。


「これ以上、血縁関係をこんがらせないようにしないと・・・キモンが困るわよね。」

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