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セベク神の使徒

いよいよリヴィア編も終盤に入ってきました。・・・たぶん

セベク神はナイル中流域では豊穣神ですが、他の地方だと悪神になったりする地域格差の大きな神様です。

ホルスの遺体をナイルから集めたり、セトとの水中戦でホルスの手伝いをしたりと太陽神の味方の神様なんですが・・・ひなたぼっこのせいかな?

物陰を飛び出た後のボクは何も考えず、一直線にメネラオス目指して走った。

でも・・・アーシアの時に比べて、体が上下動してるのがわかる。

骨格が違うせいで同じようには動けていない。


それでも必死に走り、あと2mのところで後ろから突き飛ばされた。

そのままヘッドスライディングで突っ込む。

頭スレスレを投槍が掠っていった。

メネラオスの背中にも投げ槍が突き立った。


言葉をだす暇もなく血だまりを滑っていく。

・・・イナロス王子出血多量、確実だな・・・

自分のキトンが泥と血にまみれて、赤茶色になっていくのを感じていた。


懐にあった短剣を右手に構え、左手で王錫を掴んだ。

その瞬間に王錫は雷鳴を発した。


(ほぇ?)


感電でもしたのか、王錫を掴んだ左手は握りしめるだけで離すことができない。

そのうち右手がバチバチいいだした。

明らかにアーク放電のような光が、短剣にまとわりついている。


(ライトニング使う魔法使いみたい・・・)


ボクは、この状態に及んでも現実感が乏しかった。

というのも、・・・視界にゲームのように敵に赤のターゲット表示がされていた。

全部で4体だ。

ターゲットには下に距離がmで示されている。

これを見ると投槍使いは106m先にいるらしい。


視界の左隅に発射ボタンが見えた・・・本当にゲームか?

視線をそこに集中し瞬きをした。


次の瞬間、短剣から雷光が飛び出し、インスマウスに突き進んだ。

同時にボクの右ひじから下も消えた。一瞬で炭化、消失したっぽい。

・・・ああ、こっちも落雷したようなもんだしな・・・


わりと冷静に見えるが、パニックのあまり、何も考えてないだけである。


「優しい矢(Agana belea)」

アポロンの銀色の矢は撃たれる者を苦痛なく即死させるそうである。


この攻撃は「優しい矢」と「ゼウスの雷撃」どっちの可能性が高いんだろう。

そんなことを悠長に考えていたら、右腕から激痛が伝わってきたらしく、で気を失った。


次に目が覚めたのは神殿の中の寝台だった。

どこか見覚えがあるので、ムト神殿だと思う。

体に異常がないか確認した。

左手に握っていた王錫はなくなっている。

右手に握っていた短剣は鞘に入れられ、ヘッドレストにかけてあった。

ヘッドレストにはたぶん胸飾りだと思う。隼を意匠した金細工のアクセサリもかけてあった。


どろどろのキトンは着替えさせられていた。

今はエジプト風の衣装になっている。タイトな黄色のワンピース。しかもこれ絹だ。

おまけで下着をつけてる・・・これって、三角ふんどしだよね。たぶん

そういえばツタンカーメンはふんどし着けてたって聞いたことあったな。


右手首には幅広の金の腕輪・・・王冠を被ったハゲワシの神様が組み込んである。

左手首には、同じように王冠を被った翼あるコブラの神様が組み込んだ腕輪w、どうも右と対になっているようだ。


・・・右手首?


驚いたことに右手が復活している。

そんなことがあったとは思えないくらい無傷だ。

というか・・・擦り傷、打撲etc全部消えてる。

夢?


「お目覚めになりましたか。パトラ・・・様?」

俺が目を覚ましたことが伝えられたらしく、ワジが部屋に入ってきた。


「ワジ、なにがあった?」

「それは、こちらのセリフだと思いますが・・・?」


ワジの視点では突き飛ばした直後に閃光がおこり、雷鳴がとどろいた。

明るさで目が眩み、視界が戻ってきたときには、俺とメネラオスだけが倒れていたそうだ。

敵のインスマウス人は、傷一つないまま絶命したのが4体見つかっていた。


何が起きたのかがわからないので、皆が俺の覚醒を待っていた・・・ということらしい。


「そういわれてもなー」


それこそ、姫様か師匠に来てもらって調べないとわからないのではないかと思う。

そもそも説明しようにもコプト語がわからない。


「それでメネラオスは?」

「王を失った悲しみで、部屋に閉じこもっています。」


・・・傷は無いそうだ・・・こうなると二人とも魔法で回復させられたような気がする、で誰が?


多分 俺がやった・・・ん?


「俺」・・・なんか違和感があるが?どういうことだ。


「ワジ、この服装はどういうことだ?」

「それが・・・」


メネラオスが天岩戸状態になる前に、次のファラオに俺を指名したらしい。

ファラオの養母に当たるので問題は無いということだ。


「メネラオス様はクレオパトラⅡ世としてイナロス王子との共同統治を受けられました。このためパトラ様はファラオの養母という立場になったのです。亡くられたイナロス王子はアミルタウエスⅡ世と命名されました。このあとパトラ様の王名も決めないといけないのですが・・・」


「ちょっとまってそれでいいの?」


「ファラオといっても今はテーベを治める豪族にすぎませんし・・・女系で血脈がつながっている以上、誰も反対できないと思います。なによりパトラ様は川からきたセベク神の眷属を打ち倒しました・・・」


セベク神はエジプトの神で顔がワニ、農地を守る豊穣神でありながら人を襲う「恐怖の主」「怒り狂うもの」の異名を持つ。「復元したるもの」あるいは「復元されたもの」という意味もある。

あれ?なぜか、わかるぞ!

もしかしたらアーシアに戻りかかってるのかも?


「ワジ、借りてきた鏡はどこだ?」

「アミルタウエス2世の遺品として、クレオパトラ2世閣下が王錫と一緒にお持ちです?」

「なんでまた・・・?」

「鏡の表面に王の血がべっとり付着して真っ赤になっていました。」


遺骸が無い状態なのでそれが遺体代わりか・・・


「ワジ、案内しろ。彼女に立ち直ってもらう。」


寝台を降りると胸飾りを身に着ける。隼はホルス神、右腕は上ナイルの守護神ネクべト女神、左腕は下ナイルの守護神ウアジェト女神か、本当にファラオ用の装身具だな。

だが残念ながら、ここでファラオをやっている暇はない。


デマラトス両王との決着もつけなくてはいけないし、どのみちここにもペルシアが攻めてくる。

せめて史実のようにダレイオス1世はここリヴィアで冥ってもらわないと、ヘレネス世界の危機が大きすぎる。


「クレオパトラ様はアメン・ラー神殿にいます。案内します。」

先導するワジを追いかけ、アメン・ラー神殿に向かった。

ホルス神の胸飾りは新ファラオに用いられたようです。

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