プロポンティス
プロポンティスについてはメネラオスの自虐が入っています。
兵士にも姫にもなりきれないってとこです。
さて、ミルティアデスの立ち位置ですがアテナイでは・・・マリナーズのイチロー扱いが一番近いのかな?
尊ばれ尊敬されていますが、ポリス運営にはかかわらわせないようにする派閥が力を増しています。
マラトン戦の総司令官カリマコスが自分を超える武勲を立てられ、嫉妬したのが大きいです。
カリマコスとクサンティッポスが手を結んで、ミルティアデスを排除しようとするのを、対ペルシア戦を考えたテミストクレスが庇護している状況になっています。
「アテナイのミルティアデス?」
その言葉を聞いた瞬間、疑問に思った。
「ケルソネサスのミルティアデスのこと?」
その問いかけにメネラオスは頷いた。
「最近はアテナイのミルティアデスの方が通り名として使われているな。」
あれ・・・すこし考えよう。
ミルティアデスはマラトンの戦いで勝利に導いたことで比類なき名声を得た。
それは彼個人に由来するもので・・・それゆえ、パロス島攻略に失敗した瞬間に名声を失うと罰金刑を受け、没落した。
これが史実だな。
では今の状態は・・・
アテナイのミルティアデスということはアテナイの内部に組み込まれたとみるべきか。
アーシアがキモンを使ってアルクメオン家との対立がなくしたせいなのか?
なんか、もう一つ原因がありそうだ。
「もともとはパロス島を狙ったようだが、カリマコスとクサンティッポスが反対に回ったようだ。」
カリマコス?・・・あ、そういえばマラトンで死んでない。クサンティッポスはアテナイ黄金期を作ったペリクレスの親父だ。
となるとミルティアデス=テミストクレス同盟とカリマコス=クサンティッポス連合の派閥争いが原因か。
また面倒な・・・
「パロス島遠征は中止することになったが、ペルシアにマケドニア方面へ増援を出させないようリヴィアの反乱を援助する話になっている。」
「そこまではなんとなくわかった。なんでメネラオスに話がきたの?」
「ミルティアデスの正妻がトラキア王家の出で私の年上の姪に当たるんだ。」
そうだった。キモンの母親がトラキア王家出身だった。
これでようやくつながった。
「ただし、マケドニア戦線が手を抜けないので、ミルティアデスとレスボス島征服の時以来の子飼いの士官がきてリヴィアの兵を指揮する形にしたいらしい。」
この手を抜けない=木材の伐採を止めたくない、という意味だな。
だとすると援軍はなしか、早いとこイナロス王子の権威を確立して兵を確保しないと。
「状況はわかったわ。ミルティアデス、彼の指揮なら問題ないと思う。」
「ともあれ、イナロス王子の権威を上げないと・・・」
そういえばなんでイナロス王子が民衆の支持がないんだろう?
特に問題を起こす暇もなく国が滅んだと思うが?
「イナロス王子が最後のファラオの家系なのよね?」
「そうだ。彼以外は行方不明だ。」
「・・・なんで、民衆受けが悪いの?」
「・・・」
「普通に考えるとお神輿に担がれそうな気がするんだけど?」
「・・・殿下は外観がな・・・」
外観?
健康がな・・・じゃなくて外観?
「母親はリヴィアの有力部族の長の娘だ。そのせいで肌が赤銅色でなく黒になってしまった。」
・・・え?
「ファラオは代々赤銅色の肌を誇っている。王家の血筋の象徴でもあるな。このため殿下は生まれ落ちた瞬間からファラオの後継者たる資格を持っていなかった。」
それで、ペルシアも軽視して放置したのか。
そう言われてみるとファラオや王妃の像って赤土色の肌してたけど、なるほどねー
元々はアジア・ヨーロッパ系の血筋だったんだろうな。
それで、土着を拒んで血族婚を繰り返した結果が王家の肌の色か・・・あるいは王家の肌の色を守るための血族婚か、もうどっちかわからないな。
・・・まてよ?
「ねえ、メネラオス?もしかして君とイナロス王子の子供って赤銅色の肌にならない?」
メネラオスはもともと小アジア系の血が入ったトラキア王家出身だ。
今では赤銅色の肌になっている。
「それは可能性が高いが・・・リヴィアでは血脈は母方を通じて受け継がれると考えられている。だから子供にファラオを継がせることを考えても、王家の血の入った貴族から嫁を迎えた方がみなに受け入れられるだろう。」
「・・・難しいのね。」
「ああ、むずかしい。」
ラオスは半分あきらめ顔で、急ごうと呟いた。
このままいけばメネラオスはアグネスにもエーゲ王女にも戻ることなく、歴史の中に消えていくんだろうな・・・そう思ったら、ちょっと切なくなった。
前方にあったカルナック神殿を右に見ながら、ムト神殿への道を歩いていく。
日が昇り始め、急激に気温が上がり始めた。
マントのような毛織物のヒマティオンは寒さのほかに、暑さ対策にもなっていて、短時間なら熱気を遮断してくれる。
通気性があると熱気が通ってかえって熱いのだ。
日が昇って30分程・・・推定だがギリシャなら午前八時ぐらいだと思う。
ムト神殿の日陰に潜り込むことができた。
空気が一気に涼しい。
「誰だ!」
神殿の奥の暗がりから誰何がかかった。
「プロポンティスのメネラオスと従者だ。」
従者ですか・・・まあそうだよね。ここで、兵士に正体教えるわけにもいかないし。
「メネラオス、プロポンティスって?」
「アマゾン海とエーゲ海を結ぶ海だ。」
パトラは知らないがアマゾン海とは現代の黒海のことで北岸にアマゾンという女性部族がいたことから、古代ギリシャではこの名称で呼ばれていた。プロポンティスはマルマラ海のことで、北はイスタンブール、南のエーゲ海に通じるアジア側の地域はトロイアと呼ばれていた。
暗闇の中の緊張が目に見えて柔らかくなる感じがする。
数人の足音が聞こえた後、ボク達の目に入ってきたのは、身長高め・・・180cmはあるな・・全体的に細身の黒い肌を持ち、豹の毛皮を身につけた男性だった。
30過ぎに見える彼がイナロス王子だと思う。
・・・でもヒョウ柄をまるで漫画の原始人のように着られると、どう反応すればいいのか困ってしまう。
「やあ、メネラオス。元気そうで何より、そちらの女性は?」
そう言って彼はボクに注目した。・・・主に胸に・・
で、テミストクレスでも徐々に守り切れなくなったんで(陶片追放6000票が集まりそうになった)いったん海外に逃がすためのリヴィア派遣です。
ミルティアデスはこれを逆に好機と考え、ある作戦を立てているんですが・・・おいおいに