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カルナック神殿

霊猫香ですがクレオパトラが媚薬として薄めて全身に塗っていたという伝説が・・・

エチオピア特産らしいです。

途中の挿絵が現代ですが、あとで修正するのでとりあえずでplz

10/2修正しました。水色が侵入ルートです。

イシスがいつの間にか現れ、子供に食事をねだっていた。

「…要領いいね、イシス

ボクは思わずぼやいてしまった。


それを聞いたワジの提案で、夕食と休憩をとることになった。


「テーベにはいつ向かうの?」

夕食を取りながらの相談である。


「テーベに入るのを見られたくなければ明日の朝、夜明け前の朝霧に紛れて、そうでないなら霧が晴れたあとの午前中に渡ろうと思っています。」

「できれば、王笏の件もあるので知られずに入りたいのだが、パトラはどう思う?」

「その方が無難なのは間違いないわね。」

三人は、1つ頷くと早朝の潜入を決めた決めた。


「見たことないんだけど、朝霧ってどれくらい濃いの?」

ボクはワジに尋ねた。


「手をまっすぐに伸ばすと、手が見えなくなるくらいですね。」

視界1m未満か・・・ずいぶん濃いな。

あれ?


「対岸は見えないよね。ちゃんと着けるの?」

「・・・朝わたったことはないですが、普段から使ってる道ですので間違えないかと・・・」

「ふーん」


このころのナイル周辺に住んでいた民にとって小舟はサンダルと一緒だ。

たかが、数百mで迷うようなこともないだろう。


パンと干し鯰の夕飯を食べ、一休みしているとイシスが近寄ってきた。

目線をまっすぐに遊べと要求してくる。

大きさが小さいせいか、仔猫のような行動をとるがこれでも母猫である。

猫じゃらしのように麦の穂で遊んであげる。

「あー、そういえば」

お尻の分泌腺を確認して、耳かきのようなもので霊猫香シベットを絞りだす。

10gほどの黄白色のペーストが得られるが、空気中では酸化して真っ黒になってしまう。

このためギリシャにいたころは金の容器に入れて密閉していたのだが、今は適当な副葬品の容器に入れておく。


作業が終わる頃にはイシスも飽きたらしくノテッとした態度で横になっていた。

(それにしても、都合がいい時に現れるな・・・なんだろ、人間並みに頭がいいとか?)

イシスは瞳をまっすぐに覗きこんでも、目線をそらさない・・・メスとしては希少な方に入ると思う。

オスの猫には結構いるのだが?

そんなことも含めて、思わず賢猫とか言いたくなるが、もとの飼い主が義父クレイステネスだから鍛えこまれて人に動じなくなっただけかもしれない。


ともあれ、渡河の準備はワジに任せ、休んでいるといつのまにか寝ていたらしい。

体をゆすられて起こされた。

「出発です。」

穴を出ると夜明け前の薄暗がりの中、一面の雲海が広がっていた。

標高20mで雲海とかどうなんだろう・・・


ためらうことなくワジが松明を手に先頭を進んでいく。

メネラオスとイシスを抱えたボクが、その後をついていくが、松明のオレンジを目標についていくしかなかった。

幸い、山のすぐ下の船着き場に舟は泊めてあった。

ボクら二人が乗り込んだのを確認すると、ワジは松明を水に突っ込んで消すと、小声で出発を知らせてきた。

挿絵(By みてみん)

滑り出した水面は、川というには流れが緩やかなものであった。

水も思ったより澄んでおり泥の川底が見える。

霧は水面から30cm程度で発生している。

水面すれすれの部分は水温で空気が温められているせいか、川の流れが起こす風のせいか、遠くまで見渡すことができる。


「水がほとんど流れてないのね。」

「これでもいつもより早いですよ。」

「そうだな、いつもの倍くらいか。」


川の流れは、時速1km(秒速50cm以下)なのだが、これでも普段より早いのか。


ワジは時折、水面すれすれに顔を近づけて方向を確認している。

方向を確かめると棹をついて船を進めていく。

時折、木のきしむ音と船に波打つ水音以外は、何もない15分程度がすぎ対岸につくことができた。


「静かに、素早く抜けますよ。」

ついた場所には大量のワニが寝転がっていた。

「日の出前ですので刺激しなければ襲ってこないはずです。」

なんとも不安なワジの案内に沿って川岸を抜ける。


そのあたりで日が昇り始めたらしく、あたりが一気に明るくなる。

あっと思う間もなく熱風が吹き込み、気温も上がり霧が掻き消える。


「うわっ!」


いきなり前方に川幅と同じくらいの長さの10m以上の日干し煉瓦の壁が現われたらびっくりすると思う。


「大神殿だ。」

メネラオスの指さす方向には赤い花崗岩のオベリスクが2本、20mを超える威容を誇っていた。

(このオベリスク、史実ではパリに運ばれ「クレオパトラの針」というあだ名がついている。)


「目的地はこっちじゃなくて南のムトの神域の方だ。」

「そっちに王子がいるの?」

「ああ、殿下はそちらで神官をやっておられる。」


(神官なら、反乱にも口を出せるんじゃ?)


ボクの疑問を感じ取ったのかワジが補足してくれた。

「パトラ様、南のムトは地母神です。軍神は北に神殿のあるメンチュ神ですので、今回の反乱でも主導権をもっているのはメンチュ神官になります。」

「はー・・・そういうことだな。」

メネラオスはため息のあと呆れ気味に言った。

「まあ、本殿の老人たちに比べればましだが、結局素人には変わりないわけだ。」

「あれ?ということはイナロス王子は軍務経験者なの?」

ペルシアがそんな危険人物を放置するとはちょっと考えにくい。


「いや殿下に軍務経験はない。」


やっぱり。


「しかし、殿下が主導権を握れれば、神官の手先ではなく軍人が指揮することが可能になる。」

「指揮官にあてはあるの?」


「・・・ここだけの話だが・・・」


そういうとメネラオスは耳元で囁いた。


「アテナイのミルティアデスが協力を申し込んできた。」

史実ですとミルティアデスは翌年(BC489)にパロス島に攻め込んで敗戦・死亡するはずですが・・・

でもギリシアの名将ってほとんどがこれから50-100年後なんですよね。ちょっとまだ人材が足りない。

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