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テーベへ

ナイルの川幅なんですが現在は数百mです、でもアスワンダムの工事前はテーベ付近で1.5~3km程度(氾濫時)だったようです。

水平線が2km強なんで、ギリ対岸が見えるかどうかですが、住居は山の上なので楽に対岸の灯は見えたと思います。


あと、ローマ帝国時代にむかいエジプトの小麦はヨーロッパの重要な輸入品になります。

ペルシア戦争だけを考えても、重要な戦略物資になっていきます。


しかし夏は50℃オーバーが普通って・・・書いた日も(9/22)夜25-昼42℃で変化してるみたいだし・・・42℃でも天気が晴れで「うららかな陽の光」って表記があったのが怖い

ボク達が王家の谷を出、クルナ村に向かう途中の小舟の上で日が落ちた。

「いい天気ですね。これだと寒くなるので、ヒマティオンを着てください」

「やっぱり、砂漠みたいな気温になるんだ。」

「ええ、明け方近くは、一面霧になって何も見えなくなりますよ。」

「ふーん」


舵をとるワジの言葉に頷いているパトラであるが、王家の谷付近は特に日中熱くなる。

57℃という気温が観測されたこともあり、夏場は50℃超えが珍しくない。

そのうえナイル川があってもあまり冷えない。(2週間以上地熱を吸収して流れてきた水である。)

その割に、朝は20℃台まで、気温が下がるのである。

このため水温の方が気温を容易に上回って、大濃霧の発生につながっている。

今回の盗掘の日はもう夏場を過ぎているので日中40℃前半、明け方20℃後半というベストの気候だったが、もし少し時期がずれて夏なら熱波、冬になると最低気温が一桁まで落ちるという過酷な目にあったであろう。


「で、ラオス大丈夫かしら?」

「そうですね。王家の墓を長いこと見てきましたが、あれだけ不気味な生き物は初めてでしたし、しばらく静養した方がいいかもしれません。」

一向に気が付く様子もないままにクルナ村に到着した。


そのままワジの家に向かう。

「うちからアルカイオス様に向かいますけど、パトラ様はどうします?」

裏切られて、いきなりばっさりも嫌なので、宝物を家に置いたまま、ワジ一人で向かってもらうことにした。

その間に子供らに頼んでメネラオスの家から薬をもってきてもらうことにした。

あのもらった薬のお茶、たぶん気休めにはなるだろう。


ワジがアルカイオスを呼びに行っている間に残った奥さんと世間話をしながら待っていた。

ワジはコリントス市民のクオーターであり、奥さんの方はクニドスのハーフのため、家庭内でも最初はリヴィア語が標準語で、お互いの言葉を覚えるのに苦労したとか、結構話好きな奥様だった。(推定30才前くらい?)

やがて、子供らが薬戻ってきたのでハーブティーを入れた。

家畜の尿から作った気付け薬でメネラオスを起こすと、ぼんやりしている彼女に、ハーブティーを飲ませた。

幸い今回は幼児退行は起こしていなかったようだ。


かれこれ1時間くらいは立ってる気がした。

むこうの用意もあるだろうかとは思っていたが・・・兵を用意とか?まずい気がしてきた。

キトンの中の鞘入りのナイフを確認すると、王笏を両手でしっかり握りしめた。


わずかに落ち着き・・・周囲の空気が明るくなった気がする。


「お待たせしました。」

奥の隠し通路からアルカイオスがワジを連れてやってきた。

「怪物を撃退し無事に宝物を手にれられたそうで、おめでとうございます。」

時間がかかったのはワジがこれまでの経緯を話していたからのようだ。


「協力ありがとう、アルカイオス。無事に任務は完了です。」

ボーっとしたままのラオスに代わってボクが返事する。

「つきましては報酬の件ですが・・・なにぶん死亡した村人への補償も行いたく・・・」

いきなりアルカイオスが商人の顔で交渉を持ち掛けてきた。


交渉の結果、黄金の仮面はむこうに渡し、隠し金庫の装飾品はこちらということで、話はまとまった。ナイフと王笏は当然こちらだ。

あと、残った財宝については今後持ち出せた時、その1割がこちらの取り分になった。


そこまで言ったところでボクはワジに尋ねた。

「それとワジ、コリントスの市民権はもっていますか?」

「はい。持っています。」

「そうですか・・・あなたはアリキポス商会で働く気はありませんか?」

「は?」

「その気があるならヘラクレイトス会頭に紹介します。月収30ドラクマではいかがですか?」

「30ドラクマ・・・」

30ドラクマはアテナイ市民の平均月収である。


「パトラ様、こまります。うちの腕利きを持っていかれては商売が」

「アルカイオスもどうですか?月収100ドラクマは保証しますよ。」

「100ドラクマ・・・月収ですか。」


アルカイオスは一瞬ポーカーフェイスが崩れたが、すぐに立て直した。

「ありがたい申し出ですが、私は個人で独立している方が性に合っていそうです。」


その答えを聞くとボクはにこりとして答えた。

「では、アリキポス商会からリヴィアに発注する穀類はあなたを通すことにしましょう。」

綺麗にカウンターが決まった状態で微笑みかける。


「ワジはどうしますか?」

「私はお世話になりたいと思います。」

「ではそのように、会頭の賛同を得られれば、リヴィア方面の差配をお願いすると思います。」

「わかりました。」


アルカイオスに羊皮紙とペンを用意してもらい、師匠ヘラクレイトスへの手紙をしたためた。

「これをもって大至急コリントスへ、どれくらいかかります?」

「風待ちを入れて1週間ですね。」

ワジの返答は予想よりも早かった。


ナイル河口まで行けば、知り合いのフェニキア人の船があるらしい。


もともと盗掘品の売買、正規以外のルート持っていて当たり前か。


「では、まずテーベに向かうとするか。どれくらいかかるの?」


その言葉を聞いたクルナ村の二人は変な顔になった。


「あのパトラ様、テーベは対岸なんですが?」

二人は川の対岸に見えるぽつぽつとした明かりを指さした。

「はい?」

テーベはナイル川をはさんで東岸にある。そのナイル川は氾濫も終わりなので川幅数百メートルほどだろうか?


「そうだ、イナロス、イナロスに行かないと!蛙、蛙の話をしないと!」

ようやくメネラオスが戻ってきたらしい。


「メネラオス、少し落ち着いて。王笏は手に入れてきたから。」

「パトラ、王笏、ネウスト=ジェト=テアーメリはどこ?」

「はいはい。」

メネラオスに王笏を渡した瞬間、ラオスの周囲の空気がわずかに光った。

・・・後光みたい・・・


「メネラオス様、その王笏が選んだのは、あなたでは?」

アルカイオスが、恐る恐る口にした。


「え?」

やや、呆然としているメネラオス。


ひとまず詮索はあとにし、明け方の濃霧に紛れてテーベに侵入することとして、王笏は布でくるみ込みボクが預かった。


包みを受け取った瞬間に、チカッと静電気が奔った・・・湿度が高いのに・・・不思議。

拒否されたのかな?


ワジ、ボクメネラオスの3人でテーベ目指して夜更けのナイル川に乗り出した。


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