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ハトシェプスト

アーシアの改革からの伏線回収です。

この時代の登場人物って、トトメス・アメンホテップが多すぎ、ファラオだけでなく建築家や彫像家までその名前だから・・・きっと佐藤や鈴木みたいなもんだったろうと思ってるんですが?

作者的には、はやく女性陣に合わせたあげたいです。

ワジが引き抜いたナイフの刃はシャンパンゴールドに輝いていた。

「錆びてないんだ。いい青銅使ってるね。」

松明の光を鏡のように反射する刀身を見て、ボクは素直に感想を述べた。


そんなことより、王錫である。

ミイラの脇に置いてあった副葬品を一つ一つ丁寧に調べ始めた。


その間も、ナイフをまじまじと見ているワジにちょっと腹が立ってきた。

「ワジ、財宝を調べて。特に王錫を・・・」


その言葉を聞いても彼は魅入られたように刀身を見つめているだけだった。


?!


「・・・どうかしたの?」

この言葉への彼の反応も全くなかった。

ようやく異常を感じてナイフの刀身を見ないようにして、鞘に戻し取り上げる。


「あれ?なんでパトラ様がナイフもってるんですか?」

ワジが正気に戻った。

どうやらナイフに魅入られている間の記憶が飛んでいるようである。


「心ここにあらずという感じだったんで、取り上げたんだが・・・どこまで覚えてる?」

「たしか、ナイフを抜いて刀身を見てたら・・・キラキラ輝き始めて・・・神が・・・踊り?」

「まて!幻覚を見たのか?」

「たしかに自分の周囲で神々が踊り出したような・・・?」


どうも自信はなさそうである。

「神々ってだれとだれだ?」

「いやアトンだけが複数出てきたんですよ。」

そういえば、ここの壁画にもあったな。

「あれか?」

石棺の一部に混ぜて書かれているアトンを指さした。


「それそれ、よく似てます。でも動いてたし・・・玉虫色に光ってました。数は多かったり少なかったり」


・・・うーん、いやな予感に満ち溢れてるんだが・・・


これってもしかして「銀の鍵」?


ヨグ・ソトースに会えるっていう・・・前にアーシアだった頃にはアレに遭った記憶もあるが・・・アカシックレコードとの接続の時だっけ。

ということはナコティカ、黄金鏡の時が最初か・・・ずいぶん経った気がするが・・・


今、黄金鏡のところでナニカがひっかかった気がして、それを思い出そうとしたときに

目の前に蛙人間が落下してきた。


=ベチュン=

下半身は千切れ内臓ははみ出しているが、指先に吸盤がついている。


「VARYUUU」


「キャー―――」


叫び声はメネラオスである。


ボクとワジは棺の蓋を盾代わりに、黄金の棺の陰で武器を構えた。

・・・ボクはナイフ、ワジにいたってはツタンカーメン第2の黄金仮面である。


「それって重くない?」

「鈍器ですから」

冷静に突っ込むワジ・・・すげーな、もう尊敬しかない。

おかげで緊張がほぐれた。


ともあれピタピタいっている蛙人間の蛙面に向かってナイフを投げつける。

下半身がなく回避もできない蛙にナイフが突き立った。


すると刺さった部分を中心に、猛烈な火傷が発生し、皮膚が乾燥し粉になり、骨がみるみる露になっていく。


「え?」


ボクが呆けた一瞬に、ワジが頭蓋骨を仮面でぶん殴り砕く。

恐ろしいことに、出てきた脳も血もナイフが、乾いた粉に変えていく。


・・・ヨグ・ソトースに直接触れられた時みたいだな。・・・


ようやく似た現象に気付いた。


ここまで行けば、このナイフが銀の鍵ということで間違いないだろう。

問題は・・・王錫が見つかってないことだ。


「パトラ様、そのナイフってアトン・ラーの力を使えるんですか?」

そのときにワジの質問が飛んできた。

「まあ、きっと似たような神様の力が入ってるね。」


そう言った瞬間に黄金鏡の時の記憶がよぎった。


「ヨグ・ソトースっていうのに似た名前のファラオいなかったっけ?」

ワジは困惑顔だ、あの時も全く違う言葉に直されたような・・・


「イアフメフ・トトメスだったかな?」

「そっちなら知ってますよ。」

ワジが微笑みながら爆弾を落としてきた。

「トトメス2世と王妃イアフメフの間に生まれた女王ハトシェプストじゃないですか。」


「え?」


「この王家の墓を定めたトトメス1世から見ると孫になりますね。」

・・・ツタンカーメンと同じ第18王朝の女王か・・・偶然というには作為的な何かを感じるな。


「と、とにかく・・・このナイフの刀身には、乾燥の呪いがかけられていて、触ると死ぬから気を付けて。」


動揺のあまり言わなくてもいいことを言ってしまう。


「なるほど。水分を乾かすんですね。だからミイラに一緒に入ってたんですか。」


・・・その考えはなかった。


確かに除湿剤になる。風呂場においておけばカビ知らずになりそうだ。


そこまでいったところで、ようやく腹がきまった。


ボクはおもむろに蛙からナイフを抜くと刀身をじっと見つめた。

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