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ナニカ

ツタンカーメンの墓は入口につながる前室(antechamber)そこから入って左奥のくぐり戸で奥の別室(aneex)につながっていて、右手の門から玄室(burial chamber)につながっています。

玄室から宝物庫(treasury)に門がつながっています。

この辺、後で図を入れる予定です。


9/2追記 図入れました。

掘り当てた墓への入口は左右に衝立のついた通路であった。

そして、その奥の大理石の扉をうち破り、人々が入っていくと歓喜の声が響いた。


「「「宝だー!」」」

「まて!勝手に手を出すな。手を出せば斬る。」

メネラオスの殺気だった声が響いた。


ワジが仲介しようと、双方に声をかけているのが聞こえる。

(・・・あれ、予想以上に宝が多かったのかしら?)


静かな怒気が入口のむこうから伝わってくる。

首筋を冷たい氷で撫でられたような悪寒がはしる。

ボクは入口直前で止まり、腰に吊るしていた青銅の剣を抜いた。


タガが外れたような村人の喚き声(意味は分からないが)が不安をあおる。

視界を確保するために持っていた松明を部屋に放り込んだ瞬間だった。


=GREEEEWWWWUENN=


人が出せるとは思えない叫び声が室内から鳴響いた。

放り込んだ松明に映し出された村人の姿が固まっている。

部屋の右奥にいたメネラオスも固まっている。


部屋の左手の奥からピチャリピチャリと、砂漠で聞くには違和感のある音がしていた。

(まずい!)


ボクは部屋に飛び込みメネラオスの腕をつかむと、右に見えていた通路に飛び込んだ。


=BRWEEEEYUU=

「ウギャァーーー」

後方から断末魔の絶叫が聞こえる。

後ろを振り向くことなく、メネラオスの松明を奪い取る。


飛び込んだ通路は部屋につながっていたが、石の壁が前に立ちふさがる。

「これって石棺?」


天井近くまで届く石の箱は有名な黄金の棺を覆っていた石棺だと思うが・・・部屋の壁は一面、彩色画で埋まっていた。

左右を見回すと左手はすぐに行き止まり、右手は回り込んだ先に通路があるようだった。

迷わず右手に向かって走り出す。


「ウギャギャァーーー」

最初の部屋から絶叫が聞こえる。

また一人襲われたようだ。


通路の先の部屋は宝物庫だったらしい。

まず飛び込んできたのはアヌビス神の像だった。

黄金の輿に乗っており、美術品としかいえない彫刻だ。


「起きろ、メネラオス!!」

=パンパーン=

手加減なしの往復ビンタである。

唇がきれ血が出たが、目に焦点が戻ってきた。


「こいつを運ぶ。手伝え!」

そういうとアヌビスの神輿を指さす。

彼女は、のろのろと担ぎ棒に手を伸ばす。

呻き声を上げながら二人で持ち上げる。

100kgはないと思うが、女性二人で運ぶにはきつい重さだ。


神輿を最初の部屋と石棺の部屋の通路に放り出し、バリケードにする。

放り出したときの衝撃でアヌビス像の耳が折れ飛んだ。


「次は、奥のオシリス像とイシス像。どんどん運ぶ!」

メネラオスに指示を出していると、まだ腰の高さまでは行かないバリケードを誰かが乗り越えてきた。

とっさに剣を向ける。


「待った。俺だ!ワジだ!」

たしかにワジだった。


奥から荷物を運ぶのは二人に任せ、ボクは入口で見張りをする。

どうも入口の左奥には通路があったらしく、そちらからぺちゃぺちゃと音がしている。

時々悲鳴や絶叫が響いているが・・・ナニカが村人をもてあそんでいるとしか思えない。

恐怖と絶望を楽しみながらの狩りだ。


そちらを警戒しながら待つことしばし、二人が何回か往復すると、やっと入口が埋まるバリケードが完成した。


「急ごう。所詮、急ごしらえのバリケードよ。」

「急ぐって、何を?」

まだメネラオスは復調とはいかないようだ。


「王笏を手に入れるに決まってるだろう。」

ボクは石棺を指さす。


バリケードを作る時に宝物庫からは結構な量の宝物を運び出したが、それらしいものはなかった。

だとすれば、この中に入っていると考えていいだろう。

ミイラが持ったままというのが一番可能性が高い。


「パトラ、この石棺の構造知ってるのかい?」

「ええ、確か石棺が3・4層、その中のミイラにつくまで、金の棺が何層かあったはず、時間がないから急ぎましょう。ラオス」


「おいおい、たった3人でかい?」

ワジが呆れるように呟いた。

「3人いれば上の蓋をずらして落とすことで、部屋の入り口を完璧にふさぐくらいはできるはず。」


挿絵(By みてみん)


「それだと脱出でき・・・」

「そっちはあとで考える。急を要するのはこっち。」

ワジの疑問に対してボクがバリケードを指さした瞬間


=ドゴン=


大きな音を立ててバリケードが揺れた。


3人は顔を見合わせ急いで石棺の上によじ登ると、石棺と蓋の隙間に剣を入れ、ゆっくりずらし始めた。

幸い剣の強度は足りたらしく、ゴゴゴと音をたてながら蓋はずれ始めた。


(よし、うごく。)


慎重にかつ急いで蓋をずらし5cmほどの隙間ができたあたりで、バリケードに対しダンダンと連続して殴る音が聞こえてきた。

扉の向こうにいる、何かがこちらに踏み込もうとしているようだ。


てこ替わりに使った剣は、刃が欠けまくり、凸凹になっていた。

蓋を10cmほどずらしたころには作ったバリケードがグラグラ揺れ始めていた。


(まずい、間に合わない。)

15cmほどずらしたところで、松明で中を指さすと身を踊らせ飛び込んだ。

二人も後から続いて入ってくる。


次の石棺との隙間は30cm程度だろうか。

何とか這いつくばれば移動もできる。

その時だった!


=バゴーーン!ドム・ドム・ドム=


ボクらはものすごい没薬の臭いが充満する石棺の中で、バリケードが崩れる派手な音を聞くはめになった。

パトラが動かせと言ったイシス像はでかい黄金の台座のレリーフなんで・・・この台座の方が門よりでかいのでたぶん動かしてないと思います。

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