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発掘調査

KV62のふざけた出来のいい棺の彫刻や、壁画に対する謎の遊び心・・・次代ファラオがアイで実質簒奪とはいえ、正統性を示す王家の墓の造成でふざけるのも考えにくいのですが?

でも、現実にある以上何か理由があるとは思いますが・・・だれか知りませんか?

部屋を出ると、村長(むらおさ)は何回目かの分岐路で来た時とは別の道を選んだ。

その後ろをついていくと、すぐに誰かの家にたどりついた。


扉を開けた先で夫婦二人と子供が驚いていたんだから、事前に連絡はなかったのだろう。

「ワジ、掘りに行ってくれ。」

村長は夫婦者の旦那にそう命令した。


「ワジはこの村一番の堀り師だ。奴に探らせろ。」

そういうと村長はドアを閉め、帰っていった。


「よく呑み込めないんだがけど?」

ボクはメネラオスに向き合うと尋ねた?


メネラオスの説明だとワジっていうのは涸れ川という意味らしい。

交易路に必要な水場を探すのが、彼の仕事だ。


「地面の下を流れる川を探し出すのが彼の仕事で、そこを掘って水場を作るんだ。」

その水場は人や家畜の飲み水、生活水、野生動物をおびき寄せる罠、等に用いられるらしい。


「旦那さん今回は、どこを掘るんですかい?」

リヴィア人の外観ではあるが、聞きやすい発音のギリシャ語でワジが訪ねてきた。

目線はメネラオスに固定している。


「王家の谷だ。」

メネラオスのその言葉を聞くと、ワジはいそしそと準備を始めた。


「20キュビット(10m)までは探れます。届きますか?」

そういいながら、青銅のパイプのようなものをカラカラと束ね始めた。


メネラオスが目線で尋ねてくる。

「たぶん届くと思う。場所自体は特定できてるから・・・」

ボクの言葉にワジは一つうなずく。


「3代ぶりですね。」

王家の谷に向かう途中でワジと話した結果、ファラオの墓を掘ったことがあるのは60年前、彼のひい爺さん以来になるらしい。その時に黄金や副葬品を見つけて、ヤギや小麦といった食料を大量に手に入れたそうだ。


「穀物札が何十枚もありましたよ。」

彼は自慢するのだが、ごめん、ピンとこない。

(言い伝えだと小麦で穴倉二つが満タンにできたそうだ。)

小声でメネラオスが教えてくれる。

・・・それはすごい。何トン分あるんだろう?


そんなこんなで王家の谷についたときには夕方になっていた。

そこで一休みして焚火を起こすとパンを焼いて夕食になった。


「じゃあ、暗くなったら場所をお願いします。」

ワジの言葉にちょっと驚いた。

もう夜になりそうなのに、始めるらしい。

もともと調査をしてるところを見られないように、夜に調べるそうだ。

我々にも周囲の警戒を依頼された。


彼の調査方法は簡単だ。

地面に釣り竿のように細い青銅の竿をつきさしていく。

何にかにぶつかると引き抜いて引き抜いて水気や付着部を調べている。


数か所確認するころには次の日になっていたと思う。


「この辺に、大理石の平板が埋まってますね。」

ワジは予想地点の調査結果を報告してくれた。


「平板なの?」

「天井だと思います。」

ボクがつぶやいた疑問に答えてくれた。


「で、深さはどれくらいだ?」

「6キュビット(3m)ですね。一日で届きます。」


一日で届く?

一日で掘るってことかな?

「これから戻って村に伝えます。準備でき次第、戻ってきますので見張りお願いします。」


「わかった。そっちも気を付けろよ。」

「では。」

ワジはメネラオスとの会話を終わらせると、村に戻っていった。


「メネラオス・・・」

「なんだ?」

「彼らって信用できるの?」

「信用0だな。約束を守るとは思えない。」

「えぇ?」

「ただ村長はコリントスの人間だ。アリキポス商会とことを構えるとは思えない。」

・・・そういうことですか。ボクの上司がアーシアならそうなるよね。


メネラオスの予想は当たり、ワジが連れてきた人夫は翌日夜半には、砂に埋もれていた極彩色に彩られた階段を掘り出していた。


「珍しい墓ですね・・・ともあれ盗掘にはあってない。」

ワジのつぶやきはボクらに聞かせるためのものだったのだろう。

「珍しい墓?」

「ええ、規模が小さい。せいぜい大貴族程度なんですが・・・使われた材料や手間はファラオ級ですが・・・」

その辺については、よくわからないからそうなんですかとしか言いようがない。


「おまけにこの絵を見てください。

ワジが指さしたのは神々が並んでいる絵だった。

「書かれている絵も材料も一級品。なのに、なんで真ん中にアトンが書いてあるんですかね。」

・・・言われてみると、人間の中に火星人が紛れ込んでるくらいに違和感がある。

「この蛸もいい出来なんですが・・・絵師はきっとアメン・ラーを書きたかったと思いますよ。」

何でそんな・・・って・・・わざと失敗作に仕上げさせたのか。

絵師が絶対に口を開かないように。

斬新だな。

最高な技量をつぎ込んだ失敗作。

作者として笑われたくなければ黙るしかない・・・きっとミイラにしての永遠の命も約束してもらったろうから、永遠に続く笑いものか。見つからないように祈るしかないだろう。

「この様子だと中にもこういう変な奴があるかもしれません。」

確かにあるんだ。棺や壁の彫刻、絵にも変なのが・・・・


扉の入り口は彫刻の刻まれた大理石の平板でふさがれていたが、ハンマーが振るわれ砕かれた。


ぽっかりと空いた穴の奥から冷たい空気がわずかに埃と薬の臭いを運んできた。


「さあ探検開始だ。」

1000年を超える年月を経てなおわずかに香る没薬が、この先に手つかずの財宝があることを示していた。

メネラオスを先頭に次々と人が入っていった。

ボクは殿しんがりを務めながら、首筋がチリチリするのを感じていた。


今、関東に出張してるんで少し更新遅れました・・・すみません。来月初めに戻る予定です。

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