ネフレンカーの神殿
このあたりの資料になってくると吉村作治先生や三笠宮崇仁親王など、作者より超遙かに有名かつ勤勉な人たちの著作を参考にしてます。
・・・それを参考にしてもこの程度しか書けないのはごめんなさいです。
その答えはボクの予想していたものだった。
「ラオスは王様になりたいの?」
その問いにメネラオスは少し考え込むと首を横に振った。
「じゃあペルシア戦争の支援なんだ。」
今度は間髪入れず首を横に振られた。
・・・まさか民族自決が理由とか、だとしたら半端ないな。
「すまない。パトラ、君を疑うわけではないんだが、どこまで話していいか決心がつかない。」
「ごめん、無遠慮にきいて」
ちょっと気まずい雰囲気が流れた。
「さて、次の神殿を見に行くか。」
メネラオスはそういうと腰を上げた。
「うん、お願い。」
ボクもそういうと食べこぼしを叩き落とし、マントを整えると後に続いた。
元の道に戻るとやや急な坂を上り始めた。
「この坂を登り切ってすぐ右手にネフェルティティの社がある。」
そういわれて前方を見てみたが、木々に埋もれてよく見えない。
それに気付いたらしいラオスが指さした。
その指に従い上を見ると、社は3階だての高さをもった物見やぐらのようなものだった。
「彼女は、失われたファラオの王妃で、その美貌の伝説により王の名が失われたあとも名前が伝わっている極めて珍しい女性だ。美の体現者として人気が高い。」
「なんで木のやぐらなの?」
「リヴィアでは神殿は石、家は日干し煉瓦で作るから、神でないものを祀るのに選んだんだと思う。」
「で、本音は?」
「物見やぐらを組んだけど、置く理由に困って伝説の人を持ってきたというところかな?」
それなら納得できる。
「道を挟んで斜め前には第1王朝最後のファラオ カアの社だ。」
「そっちは石造なんだ。」
「ファラオだからな。」
8畳くらいの大きさ・・・そう、公衆トイレを思わせるような四角い建物がそこにあった。
入り口もあるのだがむしろ、横の階段を登り、天井から矢を射かけられるように狭間ができていたのが目立った。
「完全に迎撃施設だよね・・・これ」
ボクの呟きにネフレンカーの最終防衛線だからなと聞こえないぐらいに小さな声でラオスが呟いたのが気になった。
「もう少し先に行くと右手にオシリス、左手にイシスの神殿があってその奥に本殿のアメン・ラーの神殿がある。」
「主神ってアメン・ラーなんだ。」
「ん?アトン・ラー神だとでも思った?」
「ううん、ラー単独かと思ってた。」
ボクの発言にラオスは怪訝な顔をした。
彼らにとってアメン・ラーというのは太陽神そのもの、後世の人間だと、名前から2柱が合祀されているってわかるんだけど、マケドニア人でもその認識は無理か・・・
ともあれ、吉〇先生ありがとうございます。
あなたが起こしたエジプトブームのおかげでN〇Kを見ていたボクでも、これくらいはわかります。
「気にしないで、そこが王家の谷に続いてるの?」
「そう、そこから伸びてる洞窟が王家の谷に続いている。ただ正規のルート以外だとクレバスに落ちたりするから案内人無しでは無理だけど・・・パトラさん、もしかして酔ってらっしゃいます?」
「平気だよ。酔ってなんかないよー!」
ああ、だめだこれって顔してる。
ボクだってこんな大事なときにおちゃけ飲むわけないじゃないか!
おい聞いてんのかラオス!
(まいったな、こんなに弱いとは思わなかった・・・)
なにブツブツいってんだー、ラオス。気分がいいのにグダグダいうなー!
(麦酒一杯ででき上がる人初めて見たよ)
「アーシア教皇がそんなにおちゃけ弱い訳ありません!!大丈夫です!」
「アーシア教皇!!」
「ほうだよ、なんか文句ある!」
「いえ、ありません!」
「よーし、えーとオシリスとイシスだっけ・・・」
(あ、寝ちゃった・・・)
次にボクが目を覚ましたのはどこかの神殿の中だった。
30畳はありそうな石畳に立派な石像・・・たぶんアメン・ラーだとは思うだけど・・・よくわかんない。
「アメン・ラー神殿だよ。」
ボクの横から入った説明で、いつの間にかアメンラー神殿についていたことがわかった。
「ごめんラオス・・・なんでか記憶がない。どうしてここにいるの?」
「記憶ないんだ・・・」
その声は呆れ半分、羨望半分という感じだった。
「暑いから脱ぐーって大変だったんだよ。」
言われてみると着ていたウールのマントを脱いでる。
「麦酒で酔ったみたいだった。そんなにお酒弱いの?」
「うーん、前は普通だったけど・・・体質かわったかなー?」
体質どころか性別変わったしね・・
「まあ、とりあえずこれを見て。」
そういうとラオスは近くの石を拾うと、神殿の隅の床の割れ目に落とした。
カーンという音が聞こえるまでたっぷり1秒は過ぎていた。
「クレバスが落ち葉に隠されることが多いせいで、この先、安全な道はこの神殿の地下道だけになる。あくまで比較的安全というだけだけど」
ラオスはそこで一息まつと躊躇いながらも言い切った。
「パトラも王家の谷に行ってみる?」




