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ファレロン港

やっと仮想戦史に入ります。

ラムヌースに一度戻りたいのですが・・・しばらく先になりそうです。

コリントスのアリキポス商会の状態とか書きたいことはあるんですがうまくつなげる方法を模索中です。

ピレウス港の沖合に到着したとき、陽は傾き水平線に沈みかけていた。

港は入港待ちの船であふれ、ガヤガヤとした雰囲気が伝わってくる。

「ボレマルク、港から伝令が来ます。」


水面をアメンボウのように滑りながら一艘のカッターが近づいてきた。

「執政官テミストクレスより軍司令官ボレマルクアーシア様に伝令です。」

近づいてきたカッターから大声が響く。


メガホン(自作)を片手に返答を返す。

「伝令、アーシアは俺だ。内容を話せ。」


俺を確認した伝令は大声で続けた。

「ピレウス港はアテナイ船で混雑のため、東のファレロン港へ移動されたし。」


ファレロン港?

ちょっと考えたが、すぐに思い出した。アテナイの旧貿易港か。

確か、ここから東に5kmくらいのはず。


「戦功第1のスパルタ海軍に対して無礼ではないですか。父上」

「まあ、そういうな。入港の順番は、来た順にしないと船乗りたちが騒ぎ出す。」

怒り気味の口調でキモンが不満を述べるが、司令官のアーシアまで同調すると収拾がつかなくなる。

キモンにしても乗組員の不満を代弁しているだけなので、本気で怒っているわけではない。


「進路右一杯、東を目指せ。両舷微速、ケフィソス河の河口で沖への流れにのらないよう注意しろ。」

指示を出しながら心の中で考え込む。


(テミストクレスはまだ安心してないのか・・・ペルシア海軍に対し、沖だしがすぐできるように、スパルタ海軍だけをファレロン港にまわしたとみるべきだな。)


「どうしました。父上?」

小声でキモンが話しかける。

「テミストクレスが何を考えているか、ちょっと気になってな。陸に上がったら実父ミルティアデスに伝令を出して情報を手に入れてくれ。」

「わかりました。」


到着したファレロン港は予想通りスパルタ海軍専用になっていた。

新しくピレウス港が整備されるまでは、貿易港として使用されていたため、桟橋も大きく造船所もある。

戦闘員を上陸させ臨時の報奨金をばらまくと、全員、酒場や娼館へと突撃していった。

漕ぎ手のヘイロイタイたちは、奴隷解放の契約を行なっているため、まだ船中で事務作業中である。彼らの上陸は明日朝以降になるだろう。


アーシアは各船の船長とサルピズマに集合をかけ一番大きな酒場兼宿屋に陣取った。

「全員、ご苦労。まだペルシアは退却していないが、最大の山場は乗り切った。あとは戦闘があるとしても陸で行われるだろう。今日はゆっくり休んでくれ。」

「殿、警備は大丈夫ですか?」

半面刺青のサンチョが懸念を伝えてくる。

「今夜、襲撃があるとすればピレウス港になるだろう。こっちは小さいから陸軍の揚陸には時間がかかる。」

「桟橋が3つあるむこうが狙われると・・・父上、ペルシアは時間がかかるのを、そんなに嫌うでしょうか?」

「まず間違いない。アテナイに援軍のスパルタ歩兵が合流すれば、揚陸戦はそれこそ血の海になるだろう。」

「なるほど。」

キモンが代表して船長たちの考えそうな疑問を問いかけてくる。


「わかったら各船、乗組員は今日はゆっくり休ませてくれ。漕ぎ手の奴隷解放に必要な事務員は港で臨時に雇ってよし。解散!」

その場から船長は全員持ち船に戻っていく。

残ったのサルピズマと4人の女性だけだ。


「サルピズマも今日は休め、明日、馬をピレウス港に受け取りに行ってもらう。」

馬はアテナイ船でマラトンから輸送してもらっていた。


「じゃあ寝る。キモン、何かあったら起こせ。」

「ゆっくりお休みください。父上」


キモンは自分が休む前にアルクメオン家、キモン家、実父ミルティアデスに対して指示・連絡文を出さなくてはならない。休めるのは一番遅くなるだろう。


(すまないな)


キモンへの感謝の気持ちとは別に、寝室に入るとベットにぶっ倒れる。

次々と女性陣もぶっ倒れてきた。色気も何もあったものじゃない。


「レイチェルは裸で寝る、ピュロス、コリーダは彼女と一緒にねて様子を見ていてくれ。」

「「かしこまりました。」」

「大丈夫よ、アーシア。」

「いいから!無茶したんだから、空間の迷路に入ったらどうするんです!」

「・・・はい」

魔術の後遺症で空間の迷路に入り込んだとき、一番頼りになるのは人肌の指標だ。


「じゃあ、あたしはアーシアと一緒ね。坊やはおっきくなったかな。」

「パンドラ・・・今日は寝ようか。」

「まあね、さすがに眠いわ。」

5人の中では比較的マシな状態とはいえ、5隻とサルピズマの指揮を執っていた彼女パンドラも目の下に隈ができている状態だ・・・いつもすっぴんなのもすごいが・・・


全員が倒れこんで寝息を立て始めた中、俺は重くなる頭をフル回転させていた。


・・・これまでの状況からすると・・・史実と大きく違ってはいないはず、ペルシアは撤退を決めるはずだ・・・じゃあなんでテミストクレスが警戒を解いていない?・・・何かが違い始めたのか?


(・・・父上)

部屋の入口でキモンが小声でアーシアをよんだ。


「おう今行く。」

ボクサーパンツ(自作)だけ身に着けると、枕元のホルスを抱いて、静かに部屋を忍び出た。


「どうした?」

実父ミルティアデスからの急使です。マラトンでヒッピアスの死体が確認されました。」

「なに!」


「ヒッピアス」それはアテナイを恐怖政治のどん底に突き落とした僭主であり、養父クレイステネスによってペルシアに追放された敵である。

史実では70才を超えてなおペルシア軍とともに侵攻を続けてBC490に死亡・・・ただし場所がはっきりしない。

リムノス島で亡くなったとも言われているが確定ではない。


一つだけ言えるのはマラトンの戦場では死んでいない!


(これがどう影響してくるかだよな・・・)


集めた人材も、ペルシア戦争前期に大きな影響を与えるのを避けるため、後期の英雄を集めたので、キモンを除くと未成年で訓練中の人材が多い。

極端な変動があっても現行の国々(ポリス)を動かして対応せざるを得なくなるだろう。


「それに伴って、彼につきしたがったギリシア人がヘレネ島に集結しているようです。アテナイはパトロクロス島に抑えの兵力を配置するようです。」


・・・それか、テミストクレスの懸念は。


「わかった。ごくろうさま、キモン。ゆっくり休んでくれ。」

「しかし、父上。」

「たぶん我々がヘレネ島に行くことになるだろう。その時のためにゆっくり休んでくれ。」

「・・・はい、父上もお休みください。」

「うむ、ありがとう。」


ベットに戻るとホルスを撫でながら考えに耽った。


スニヨン岬の西、アテナイ側にある小さな島がパトロクロス島、反対に東の北に細長い島がヘレネ島である。

スニヨン岬に連合軍が駐留している現状では動けないが・・・逆にペルシアがどこかに攻めてきて連合軍が移動すれば・・・野放しになる。


ヘレネ島は南北が10km程度、幅は1km程度の小島である。大規模な軍勢での攻略は難しい・・・。


(うまい位置に配置するな。戦略眼がしっかりしている。まるでテルモピュレイのレオニダスみたいだ。)

もちろん有名な300人の散歩である。

(・・・まさか、スパルタニアン・・・デマラトスが来ているのか?)

嫌な予感がした。史実ではまだ参戦がなく、後半戦で従軍しているはずだが・・・

(もしも、一緒にペルシアに行った近衛兵40人が来てるとすれば・・・)


「下手をするとヘレネ島が血で染まる。」


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