アレティアネットワーク
英語を集大成したシェークスピアどころかカンタベリートールもはるか未来。
それ以前に、まだキケロも出てないんだからラテン語も完成しきってない時代です。
英語の勉強しなくてもいい時代・・・いいなーそれ。
でもレイチェルの方はたぶんフェニキア語とかペルシア語とかでクレオパトラの声が聞こえてると思います。
29-Jul-16 とある読者からの提案で後書き部分にレイチェル視点での話を加えました。
(・・・電波系・・・彼女・・・)
ボクってそういう系なのかな。シリウスや冥王星からの電波を受信するとか?
(Call me. I'm Aletheia. Your Kin.)
「アイム アレティア。・・・あ!」
あれか、気が付いた。
「レイチェル。君なのかい?」
(I order to don't call me Rachel ! )
「なんで?」
(Call me Rachel. Its giving permission only husband ASIA!!)
「えーと・・・アーシアなんだけど?」
(Really? But Pyrrhus said・・・Why you can use Aletheia network.)
「わかんないけど?女性になってる。」
(Feminized! Are you all right?」
「お、気が付いたか?」
(ちょっとまって、またあとで)
入口の、たれ布をあげてメネラオスが入ってきた。
頭はかぶり布で覆い、ティアラで押さえている。
黄色の胴着の上に革の胸当て、ペルシア風の足首を絞ったズボン、毛織物の長いマント・・・パッと見、腰にはシャムシールらしい剣、ペルシアの戦士風の格好である。
「熱は下がったかな?」
「ご迷惑をかけました。」
にこやかにほほ笑むと気にしないという風に手を振って部屋に入ってきた。
「食べれるようなら果物を運ぶけど、バナナは知ってるかい?」
「バナナがあるんですか。」
「じゃあ、バナナとオレンジを用意するね。」
ダメだ、顔がほてって、メネラオスの顔が直視できない。
きっと真っ赤になってる。
ボク、どうしたの?
「まだ、熱があるの?」
顔色を見てメネラオスが近づいてきた。
「いえ、ちょっと・・・恥ずかしい・・・」
「なにが?」
彼はボクに不思議そうな顔で尋ねてきた。
「ボクの裸見たよね。」
「ああ、それが、健康的な体だったけど?恥ずかしい部分はないと思うが?」
あ、そうだった。
スパルタでは一般市民でも全裸が普通だし、他国でも王族になれば裸を見られても恥ずかしいって概念はなかったんだ。
そうはいっても・・・だめだボクの意識が・・・恥ずかしい。
「ごめん、気にしないで。バナナとオレンジお願いします。」
「わかった。ちょっと待ってくれ。」
そういうとメネラオスは外に出て行った。
(Hey Girl . Who are you ? Please tell your name.)
「あ、レイチェル?無事だった。ほかのみんなは?」
(・・・ Really ASIA?・・・Where are you?)
「リヴィアのクルナ村だって」
(Wait! Don⁷t leave village. Stay ! all right?)
「わかった。」
電波が切れた・・・
しかしアレティアの精神感応ってなんで英語なんだろう不思議?
まだ英語できてないはずだよな。
「食事を持ってきたぞ。」
たれ布のむこうからメネラオスの声がした。
思わずキトンのひだを取り繕い、髪を三つ編みに整える。
入ってきたメネラオスはその様子をみると
「櫛ならそっちの引き出しに入っているぞ。」
「ありがとう。」
目を伏せながら答える。
だめだ、意識しちゃいけない。男なんだ。ボクは男なんだ。
・・・あ、それでもOKなのか、この時代・・・詰んだ気がする
「それじゃあ、食べ終わったらでいいから、アーシア教皇に連絡を取ってもらえないか?使者と筆記具は用意するから。」
「ええ、それはこちらからお願いしたいことだけど、何か頼みごとがあるの?」
ボクの問いに、メネラオスは力強くうなずくと
「王笏を手に入れるために、神託を頼んでほしい。」
「王笏ですか?」
「ああ、ファラオの権威を示す王笏だ。正統な王朝継承者として民衆に納得してもらうため探している。」
ボクは変なものを見る目でメネラオスを見てしまった。
・・・だってヘレネスがリヴィアの正当な王位継承者って無理あるだろう・・・
「いま、リヴィアはペルシアの支配下にある。アレクサンドロス王はここを独立させて戦いを挑み、ヘレネスに戦力を集中させないようにするように命じた。」
マケドニア王、結構しっかりとした戦略眼あるのね。
「彼の意向にも沿うと思う。口添え願えないか?」
=ニャーン=
どこからともなくイシスが現れた。
「どこ行ってたの。イシス?」
しなやかな動きで私にすり寄ってくる。元気そうに甘えてくる。
「わかりましたメネラオス。その件はよろこんで協力させてもらいます。」
「ありがとう。クレオパトラ。」
そういうなりメネラオスは手を握ってきた。
=ボフン=
まるでラブコメのような擬音がボクの頭の中で響いた。
「あ、あの、デルフォイの巫女は処女で・・・男の人に馴れてないので・・」
「ああ、そうか、わかった。でも、ありがとう。感謝してるよ。」
手を、手を離してー、感情が制御できない・・・困ったー。
同時刻アテナイ、旧クレイステネス邸管理棟
「ふー」
アーシアが残した慣習のせいで、アタシは毎日風呂に入るようになった。
今の時期はそろそろ水が冷たくなってくるので湯を混ぜて温かくしてある。
「アレティア姫、寒くはないですか?」
「ええ、コリーダ。ちょうどいいわね。」
大理石の湯船、といってもアーシアの提案で造られた、手足を伸ばせるギリギリの大きさの小さなものだが・・・お湯が少なくて済むので、アタシは気に入っていた。
=ニャー=
ホルスは温かい大理石が気持ちいいのか、風呂桶の縁に丸まって毛づくろいしていた。
その時、アタシの精神に何か異物が入り込んだような感じがした。
以前にも感じたことがある。これは新しいアレティアの目覚め。アタシにとっては嬉しいことだ。
アーシアのことがなければ踊り上がっていただろう。
?
しかし、該当する候補者がいないのに気付いた。
(市民に偶然出たのかしら?)
ともあれ呼びかけてみることにした。
「あなたは誰かしら?」
私の問いかけに彼女は戸惑っているようだった。
「妾はアレティア。あなたと同じ血を持つものよ。妾の名前を呼んでみて。」
(آیا نام خود را از راشل ؟)
レイチェル・・・なんでその呼び名を!
私は喪失感に胸を抉られるような思いがした。
「妾をレイチェルと呼ぶのはやめなさい。」
悲しみから思わず反射的に拒絶してしまった。
デマラトスからアタシとコリーダを救出し、そのままいなくなってしまった最愛の夫、彼の記憶を汚されるような気がしたのだ。
(چرا ممنوع است در آن است؟)
「それは我が夫であるアーシアのみに許された呼び方です!」
(من آسیا هستم.)
「え、え、なんで、本当に、じゃあピュロスが言ってたのは・・・、あれ?でもそうだとするとなんでアレティアネットワーク使えるの?」
(نمی دانم. اما من یک زن هستم.)
「女性になったぁ。あなた正気?」
(از آنجا که تماس بگیرم ، لطفاصبر کنید در حالی که برای)
いったん接続を切った。
私は思わず風呂桶で立ち上がると
「エウレカ(見つけた)!」
とさけんでいた。
「どうなさいました。アレティア姫?」
素っ裸で跳ね回るアタシを不審に思ったのだろう。
コリーダが声をかけてきた。
「アーシアが生きていたの。連絡があったわ。」
彼女は、それを聞いてすぐに悟ったらしい。
「どこのアレティア様ですか?」
「それがねー・・・」
アタシは彼女に連絡内容を話した。
「女性化ですか。大きな問題になりそうですが、ともあれよかった・・・」
そこまで行ってコリーダも床に腰を落とした。
嬉しさで泣き崩れ震えているようだ。
アタシも我慢ができなくなって呼びかけた。
「ヘイ彼女、あなた本当にアーシア?名前はなーに?」
もう顔は笑み崩れて他人には見せられないだろう。わかっていても嬉しさがとまらない。
(آیا زنان دیگر بی خطر است؟ یا راشل بی خطر است؟)
名前を答えてはこないが、言うまでもないという雰囲気が強く伝わる。
「ほんとにアーシアなんだ・・・どこにいるのよ!?」
(خولنا روستای ریور)
「待ってなさい!絶体に村から出ちゃだめよ。じーっとしてる。わかった!)
(فهم)
「コリーダ、旅の準備、商館で馬車と船を手配して。妾はパンドラとピュロスに連絡するわ。」
「はい、アレティア姫」
アタシは微笑むと答えた。
「レイチェルでいいわ。」




