分裂の王
マケドニア編終了ーーーーですが、この話の前2・3話が飛び飛びのかんじですね。
何話か話を差し込みたいと思います。
それが終わったらリヴィア編に入りたいと思います。
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ちょっと変更してリヴィア編優先でいきます。
付け足すのが結構前からになりそうなんで・・・6/4追記
体の奥深くで栓が抜かれ、何かが吹き出している。
それが我が体を満たし膨れ上がっているのを感じていた。
「ははは、きたぞ。我が力よ。我を不朽の王と刻め。」
アルゴス砦の屋上で予想した強大な力を受け取りながら、デマラトスは自らを追い落としたスパルタそしてヘルメスに反撃の雄叫びをあげていた。
「みよヘラクレス、我こそ神に連なるべきものデマラトスなり!」
雨を吸ったキトンから湯気が立ち上る。
全身から発熱しているようだ。
体の皮膚一枚下をナニカが這い回っている。
気のせいとか比喩ではない。
皮膚が妙に波打っていた。
「何が起こっている?アーシアの最後の悪あがきか?」
這い回るナニカは耐えがたい不快感をデマラトスに与えていた。
どうしようもなく不快なのだ。
自分の身体に自分ではない自分がいるというか・・・寄生虫が動き回っているようなピクピクする動きは我慢できなかった。
デマラトスは右手で痙攣のように動く胸を掻きむしった。
爪を立て深く掻き毟った。
鋭い痛みが駆け抜けたが、次に起こったことに比べれば何のことはなかった。
傷跡からは血は流れなかった。かわりに肌色の粘液が流れ出してきた。
「なにっ!!」
肌色の粘液は止まることなく流れ続けた。
やがて、それは人型に変化していった。
デマラトスは知らないが「イースの偉大なる種族」が依代にしていた円錐生物は単性生殖をおこない胞子で増える。
つまり体分裂で増えるのである。
「お前はだれだ?」
「お前こそ誰だ?」
そこには二人のデマラトスだったものが存在していた。
見た目にわずかな差はあるが双子といっていいほど似通っていた。
その時に親衛隊のミイラ達が屋上に到着した。
「「あいつを倒せ!」」
奇しくも二人の口からは同じ言葉が出ていた。
屋上に上がってきたミイラは14体だったが・・・きっちり7体ずつに分かれると、それぞれが目標に向かって突き進んだ。
しかし、どちらもデマラトス達に瞬時に粉砕された。
「「使えるな。我が僕となれい。」」
・・・
お互いがぎらつく目で相手を観察しながら、同じことを考えた。
((今は互角、だが1年後はどうだ・・・))
これから1年別々に生活すれば、それぞれの成長で力は変わる。
・・・つまり
「「1年後に決着をつけるぞ。」」
お互いに相手を殺す手段を求め飛び回ることになるだろう。
身体は互角、ならば知識、それも強力な魔術を見つけた方が勝つであろう。
なによりも、直前にアーシアがそれを見せつけていた。
彼らの脳裏に罠が完成していなければ、殺されたかもしれないという思いがよぎった。
二人の目的地は決まっていた。
ニャルラトホテプの地ナイル中流域、今はペルシアのリヴィアと呼ばれる地域であった。
この段階ですでに王の墓のうち25の墓は盗掘にあっているはずです。
残るは1つ、ツタンカーメンの墓のみです。
あとカイレイが王家の出身というのは、第1話でわざわざ母の名前を名乗ったのは、よほど身分が高い女性のみ(普通は父親のみ)という伏線の回収です・・・後付けじゃないです。回収までに35万字かかるとは思いませんでしたけど。