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アルゴス城砦

マケドニア編そろそろ終わりが見えてきました。

たぶん3-4話だと思うけど・・・そのあとはリヴィア編につながります。

まあ、一応予定ということで

アルゴス防衛線に到着したアーシアが見たものは、ひどく物悲しい風景だった。

乾期が終わり、冬季の到来を告げるようなそぼ降る雨の中、アルゴス防衛陣はただひたすらに静かだった。


「・・・誰もいないのか?」

不可思議な状態である。

防衛陣の木の柵も壊れないままに人だけがいなくなっていた。


「アルゴスが戦わずに降伏したのでしょうか。アーシア様?」

ピュロスが不可思議なものを見る目で陣地を見回していた。

「それはないな。たとえ降伏したとしても、会議から5日もたっていないんだ。あの時点で降伏していないなら・・・今頃撤収の準備でばたばたしているはずだ。」

防衛設備が無事なのだから、アルゴスの財宝も無事と考えるべきだろう。

そうなると、木材をはじめとする財宝を運び出すなら1週間はかかるはずだ。


「だとするとアルゴスの民はどこに行ったのでしょう?」

「考えられるのは、どこかに誘き出されたとみるべきですね。」

ピュロスの疑問にタルゲリアが答えた。


誘きだされたか・・・それが一番可能性が高いが・・・何を使っておびき出したのだろう?

ともあれ、それは後回しだ。

警戒しながら、アルゴス城砦に近づいていく。

周囲に人の気配は感じない。

それが一層不気味さを増していく。


防御陣地の横を通り抜けるとき、食事の途中のままに、冷めてしまったかまどと夕食?が見えた。

メアリーセレスト号みたいだ・・・人だけがいない。


「武器と盾はみえないですね・・・」

かろうじて聞こえる程度の声でピュロスがささやいた。


人っ子一人見かけないまま、アルゴス城砦まで1km程度の距離についた。


観察していると城砦の屋上にマストのようなものが立っている。

それにミノムシのようにだれか吊るされている。


それがアルゴスの誰かを確認しようとして、じっくり見た瞬間に血が沸騰した。

執事服だ。


「コリーダ!!」


気づいたときには駆け出していた。

慌てて、二人が追いかけてくるのが分かった。

同時に周囲の建物の中から何かが動く気配がする。


「来るな!何かいる!」

叫びながらもアーシアの足は止まらない。みるみるうちに、城門に駆け寄っていた。


幸い城門は開けてあった。

そのまま、一気に屋上を目指す。

幅広の階段が唯一の通路のようだ。

激しい運動に息が激しくなるが、まだ余裕はある。


屋上についたとき、そこには猿轡をされ、ボロボロに破かれた執事服、そして血まみれのコリーダが、縄で竿に吊るされていた。

その高さは3m程度、完全に気を失っていて・・・生きているかはわからない。



「簡単に釣れすぎてつまらないな。」


今まで気配を感じなかった場所から、デマラトスの声が聞こえてきた。


「魔術に頼りすぎだ。戦士なら気配を感じられるようにならないと、このようになるぞ!」


巨大な熊の放つような殺気が襲ってきた。一瞬怯えで動きが止まる。


「エイボンの印一つで隠れられるとは、拍子抜けすぎる。」


声に震えが出ないよう、気合を入れ短く尋ねる。

「貴様、何をした。」


「女はいたぶらせてもらった。面白かったよ、動けなくなっても、お前の悪口一つで死力を奮ってかかってきた。完全に動けなくなった後は、吊るさせてもらった。むろん、お前をおびき寄せる餌だと教えてな。あの絶望の目は最高だったな。」


・・・今頃コリーダは死ぬこともできなかったことを、悔やんでいるに違いない。


「それとも、アルゴスか?アルゴス達はディオニソスの力を借りて、理性が低くなったところに、ペルセウスの黄金の鎌を見せてやったら、みんなそっちに行ったな。」


黄金の鎌?


「ディオニソスの力はお前が作った蒸留酒とかいうやつの、カクテルとかいうやつだ。」


なっ!!


「スクリュードライバーとか言ってたな・・・。あれを皆にジョッキでふるまったぞ」


・・・


「もう聞きたいことはいいか。では死ね、我が崇高な目的の達成のために!不死隊アタナトイ


明らかに人の気配がなかった城砦のあちこちで、前と同じに何かが動く気配がする。


「まず、お前が倒した我が友35人がお礼をしたいそうだ。下を見てみろ。」


言われるままに、城壁の屋上から下を見ると、そこには前進に包帯を巻きつけた人影がうごめいていた・・・


「・・・まさか。ナコト写本か?」


「不死のカーを操るのはアメン・ラーだけではないよ。アメンホテプ3世たるアトンもこの程度はたやすくできる。」


なんだろう、少し引っかかる部分があるんだが?


「女を連れてここから脱出はできないぞ。女を見捨てるか、一緒に心中するか選べ。」


違和感の原因がどこにあるかがわかってきた・・・


「デマラトス、お前どこから、そんな知識を得た!」


その言葉を聞いたデマラトスはしてやったりという顔をした。


「ようやく気付いたか。教える義理はないが教えてやろう。・・・ヘレネスならざる古きトラキアの支配者がヘレネスを滅ぼすように決めたのさ・・・教えられて光栄だよ。」


雷が響き、そこに照らされたデマラトスの顔には人間離れした邪悪な笑みが浮かんでいた。

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