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ネアポリス防衛戦(後編)

どっちが悪役かわからない・・・(笑)

まあアルゴス防衛線が待ってます。

デマラトスさんの目的もそこまでいけば。きっとバレルはず?

https://www.youtube.com/watch?v=INGl8LB9Zxo 3層櫂船の復元船の試験航行です・・・カッコエーわ

沖の方で放たれる火焔を見ながらアーシアは続けた。

「今、敵の艦隊はこの旗を目指して突っ込んでいるはずだ。」

そういうとピュトン旗を軽く振った。

「まもなく中央突破されるだろう。艦隊は左右に分断されるが展開は抑え込んでくれるはずだ。」

見る見るうちに沖の火焔の数が多くなっている。


「アッティカ級各船は帆を張り、横陣のまま敵に正面から突っ込んでくれ。」


そこまで言うと旗を大きく振って指し示す。


「そして、あの港の突堤のあたりで中央の4隻に火を放て!敵を焼き討ちにする!」


船長たちに動揺が走る。

古代ギリシアにおいては木材が貴重な戦略資源である。

それこそポリスが動くぐらいに。


それを敵味方関係なく燃やせというのは・・・金貨を海に捨てるぐらいに、贅沢で考えたくない行為であった。


「いまはそれしかない。アリステラとアッティカは左右から突入艦を誘導してくれ。艦隊がぶつかったら両艦も全員、船を捨て逃げ出せ。」

逃げ出す漕ぎ手はアルカディア号のボートや港の漁船を使って救助する指示を出した。


「急げ、アポロの息吹はあるだけ積んでいけ。出撃!」

号令と共にアッティカ級各艦が出撃する。


港に残ったのは船から降りてきた400人のぺゼロイタイだけである。

彼らは、急いで脛当をつけると、盾と槍を構え、アーシアの前にファランクスを組みだした。

アーシアはその様子を見ながらピュトン旗が目立つように篝火の位置を調節させていた。


「各隊はアーシア様を守れ。敵はここに集中してくるぞ」

タルゲリアが陣形に指示を出し、中央の厚みをやや厚くしている。


僅か8騎ではあるが騎馬隊もタルゲリアが指揮していた。

「敵は船火事を避けて海に飛び込むはず。波打ち際でできるだけ潰します!」


いい判断だ。波打ち際を馬で走るのはそれだけで敵を怯ませる手になる。

敵は戦士1000人。漕ぎ手がつながれていなければ、それに1万5000人が加わる・・・防ぎ切れるのか?


いや、一番の警戒はデマラトスがいた時だろう。こっちに向かってきて、味方400対敵20でも厳しい。


直接対決で、丸坊主になる覚悟が必要だ・・・


アーシアは大声を張りあげた。

「デマラトスを発見したらすぐに伝えろ。一騎打ちを申し込む!」

その声にファランクスから歓声が上がる。

誰だって自分の指揮官は卑怯であるより勇敢のほうがうれしいのだ。


「艦隊から炎が上がりました。」

ファランクスから声が上がる。

計画通りでつないだ6隻のうち4隻が燃え上がった。


次々、操舵手と船長が海中に飛び込んでいる。

敵も気が付いたがもう遅い。

折からの陸風を帆に満帆に受けた状態だ。まっすぐに敵艦隊に突っ込み延焼を始める。

飛び交う火の粉も風に乗り、風下の船に飛び火していく。


「第3縦隊長はポセイドニクスだったか・・・いい判断をしているな。」

思わず呟くほどカッター隊はいい動きをしていた。

前任の第3縦隊長はリメイラ攻略戦で、戦闘不能になっていたので交代させたのだが、新隊長は有能らしい。


カッターは防盾がないため飛び道具や櫂での叩きつけに弱い。

このため接近が難しいのだが、カッター隊はそれを熟知していて、アポロの息吹で敵の櫂を燃やして折ることに専念していた。

おかげで敵船団の外側は被害は軽微だが、動きが鈍くなっていた。


沖でひときわ大きな爆炎が上がった。

4隻に積んだアポロの息吹が引火したらしい。

天空に大きな炎を突き上げ敵艦隊を焼いていく。


「アーシア様、そろそろ海軍兵は我慢の限界かと?」

「わかった、ピュロス。3.4縦隊は波打ち際の殲滅に向かわせてくれ」


スパルタ海軍の弱点、それは長時間戦っていると、血に酔って攻撃一辺倒になることである。

そのため、一定時間をすぎると、敵の被害と味方の被害が急増する。

そのまえにクールダウンしなくてはならないのだが・・・できないときは虐殺を覚悟するしかない。


現に命令が伝わったらしい彼らは波打ち際に飛び込むと、嬉々として波打ち際を赤く染めていた。

敵の方が10倍以上いるのだが・・・逃げ腰の彼らはただの狩りの標的になっている。


敵艦隊は既に炎上している。

飛び出してきた水兵や漕ぎ手は水面に浮いた時点で、アポロの息吹の火焔で焼き殺されている。


その作業を嬉々としてやっているのは1,2縦隊の面々だ。

港内はものすごい熱気と潮の香り、硫黄と焼き肉の匂いで充満していた。


(どうかんがえても、こっちが悪役としか思えない・・・)


アーシアはそう思ったがどのみち400対16000をまっとうな方法で勝つ方法は思いつけない。

それゆえ、こみあげてくる吐き気を飲み込みながら、自分の作り出した地獄絵図を見ているしかなかった。


予想以上の惨状に敵は怯み、味方は・・・嫌悪感を示すぺゼロイタイ、歓喜をしめすスパルタンと二つに分かれた。

もっともどちらも手を止めず、戦闘を続けているのは変わらないが・・・


「アーシア様、デマラトスが見えませんね?」

側に控えていたピュロスが報告してきた。

たしかに、どこからも発見の報告はない。


「これが主力でないということか?」

「はい」

そうなると、主力が向かう先である。

常識的に考えればタソス島かアブデラであるが・・・


「捕虜は・・・無理か・・・」

「降伏させないよう、見つけるなり殺してますからね・・・」


・・・


スパルタンの価値観からすれば、戦死は他に比べようのない名誉である。

それを得るために全力を尽くし強敵を探すのが彼らの戦場での戦い方である。


ゆえに今の状態は彼らにとっては、敵にばかり名誉が与えられ、自分らに名誉を与えてくれることのない不満の残る戦いであろう。


・・・

それが一層虐殺を加速していく。

悪循環だ。




「ご主人!こいつが」

タルゲリアが捕虜を連れてきた。

「でかした。タルゲリア」

「は?」

彼女は逃げ出して、街に飛び込もうとしていた水夫を連れてきたにすぎない。

褒められるのは意外だったのだろう。


「艦隊はどこに行くつもりだったんだ?話せば命は助けてやる。」


目の前で大虐殺が行われている最中である。

水夫はかわいそうなままでに脅えていた。


「あっしらはタソス島への増援として集められました。出発直前に半分がこっちの略奪に回されました。」

「残りは?」

「知りません。」


水夫の言葉に嘘は無いようである。


「艦隊はいつ出発した?残りは」

「昼に、全艦隊出発しました。途中で半分いなくなってました。」


普通に考えれば半数は予定通り、タソス島に向かったということなのだろうが・・・

何だろう嫌な予感がする。


「カッターを1隻呼んでくれ。タソス島を見てくる。」


3縦隊を降ろした、カッターに乗り込むと、タソス島に向かうよう指示する。

護衛はピュロスとタルゲリアのみである。


「ここの指揮はクレオビスに任せる。タソス島を確認してくる。」

そういうとアーシアはタソス島に向かった。


結局、このときは何事もなくサルピズマに現状を確認しただけで無駄足になる。


しかし、このためアーシアの出発は二日遅れ、会議の日から数えて4日後に、アルゴス防衛線に到着することになった。

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