アーシアの重さ
ちょいペース乱れてます。申し訳ございません。
若干不定期ですが・・・週1ペースをキープするよう頑張ってますのでご容赦ください。
ようやくヘロイタイ(騎馬隊)&ぺゼロイタイ(重装歩兵)が出せました。
最初からヘイロイタイと名前が似ていたんで・・・使うつもりでした。
うまく出せたと思ってますが・・・どうでしょうか?
ラムヌースⅡ号は、いったん沖に出ると海流に乗って、ゆっくりとネアポリスの方向へ流されていった。
船内では昨夜から連続の移動で、水夫の方に限界が来ていた。
スパルタンは死者を埋葬用の壺に入れ、祈っていた。
船底に置かれたその壺にはハデスへの言葉と共に、アポロからの賛辞を刻んだ。
壺に文を刻んだのはアーシア自ら行った。
アポロは冥界で生まれている光明神である。その作業に違和感はなかった。
そして生き残ったスパルタンは、羨望の眼差しとともに、戦死者をほめたたえ、羨んでいた。
・・・つくづく、戦いがスパルタンの価値観なんだと実感させられた・・・
その後、昼まで休憩としたが、アーシアに休憩はなかった。
タルゲリアとパンティティス、コリーダを交えての作戦会議である。
「ご主人様は、少しお休みください。」
コリーダはそういうが、頭の中が熱くて眠れない・・・無駄に13人も殺してしまったという想いが抜けきれないのだ。
「まずは、戦線の再構築だ。それが終わらないと眠気も出ない。」
目の下に隈を作ったアーシアを見ながら、タルゲリアがため息をついた。
「仕方ありませんね。まずはパンティティス様、戦士はどれくらい休ませる必要があります?」
「3日かな。さすがに今日明日は無理だと思う。戦闘は可能だが・・・みんな熱くなりすぎて、敵味方関係なく戦死者が続出しそうだ。」
・・・とんでもない理由だな。クールダウンしないとバーサークするのか。
「では、いったんネアポリスに戻るとしましょう。」
「わかった。」
「到着次第、ヘレネス連合軍に、昨日の夜の弁明をしてもらいます。」
「・・・そうか・・・」
やっぱ、まずかったかな。
「ゼウスの神域に子供の血がはねたので、神罰を下すようアポロから神託が下ったということになりますので、ご了承ください。」
「・・・わかった。」
(神託ですか、いい加減に神罰下りそうな気がしてきたよ。)
「ともあれ、それでヘレネス連合軍は表向き、現状維持になります。次にタソス島ですが・・・」
そういうとタルゲリアは地図を指さした。
「リメイラの奪取と維持が絶対条件になります。さらに対岸にあるアブデラ用に艦隊駐留、できればアプデラの航路封鎖、もしくは港湾設備の破壊が必要になりそうなのですが・・・」
「いずれにせよ、スパルタ海軍が全力で当たらないといけないのか・・・」
「何とかペルシアが攻勢に出る前に、海軍の自由行動を確保してください。」
現状の偵察用戦力だけでは対応が無理になってきた。
「タソス島についてはリメイラ奪取までは要塞化阻止の方向で進めましょう。」
「・・・わかった。」
「あと、とりあえず寝てください。」
「・・・わかった。」
黄連解毒湯を処方され、そのままタルゲリアに吊りベットへ押し込まれた。
漢方で緊張が解けたせいか、数時間眠れたようだ。
目が覚めた時、太陽は真上に会った。
眠ったおかげで頭の中の靄は消えたようだ。
急ぎネアポリスに戻り、体制を立て直すのに必要な事項が思い浮かんでくる。
「タルゲリア、メモを取ってくれ。」
思いついたことをメモしてもらっていると、太鼓の音が聞こえてきた。
ラムヌースⅡ号は休憩を終えてネアポリスに向けて漕ぎだしたようだ。
「いま誰が船の指揮を執ってるんだ?」
「副長のグラチウス様ですが、どうかしましたか?」
「いや、なんでもない・・・」
これまでの操船を見る限り、充分な技量があるようだ。次の船の船長候補に挙げておこう。
ラムヌースⅡ号は3時間後にはネアポリスが見えるところまできておいた。
そこで見張りから予想外の事態を報告された。
「ネアポリスに船影10以上・・・すべて2層櫂船以上です・・・旗・・・スパルタ海軍です。」
「マストに信号旗上げろ。アーシア軍司令官乗艦、ラムヌースⅡ号、船長オロロス」
グラチウスの命令でマストにピュトン旗が掲げられた。
街の方から喚声が聞こえてきた。
その中をグラチウスはテキパキと入港の手続きを始めている。
だけど10隻以上、ほぼ全軍か・・・何が起きたんだろ。
船が港に近づくと、港から十数隻のボートやカッターがこちらに向かってくるのが見えた。
ボートやカッターはそれぞれ舳先に旗を立て、所属を示していた。
「デルフォイにラムヌース、サルピズマ・・・全軍集結してくれたのか・・・」
そしてデルフォイの旗のカッターの舳先には二人、それぞれが白猫を抱いた女性がいた。
「愛人全員集合ですね。アーシア様。」
茶化すような声で、タルゲリアが耳元でささやいたが、怒る気にはならなかった。
まず全員を思いっきり抱きしめたい!男女問わず!そんな気分に包まれていたからだ。
ということで、側にいたタルゲリアを思いっきり抱きしめた。
彼女は不意の抱擁に目を白黒させながらも、強く抱き返してくれた。
次にコリーダ、パンティティス、グラチウスと抱擁していったが・・・一番真っ赤になったのがグラチウスだったのは・・・慣れてないせいもあったんだろう。
「こらアーシア、アタシを忘れない。」
そういうとレイチェルは甲板に上がってくるなり胸元に飛び込んできた。
「ピュロスもこっち、こっち」
レイチェルの手招きでアーシアは二人の美女を抱きかかえることになった。
「「ニャア」」
訂正、二人の美女と二匹の白猫だ。
「アーシア、無事でよかった。・・・その表情だとデマラトスには逃げられたのね。」
「ああ、レイチェル。でもなんで、みんなが?」
「訳は後で話すけど、今集まってるのはスパルタ海軍を離脱した私兵集団よ。」
その時甲板にサンチョが上がってきた。
「お久しぶりです隊長。サルピズマ総員集合しました。」
「???」
「ヘラクレイトス会頭から、隊長が現地で使える兵力は、多いほどいいと、稼働全戦力をここに終結させるよう指示が出ました。」
「師匠が?」
「20タラントンの大損だが・・・タソス島支店を作るには必要な経費とあきらめるだそうです。」
「・・・師匠・・・」
「これらの兵はあくまでアーシア様個人の私兵です。ヘレネス連合軍とは関係なく動かせます。」
ピュロスの鈴のような声が耳をうつ。
「特に今回の漕ぎ手は元ヘイロイタイなのですが、重装歩兵の装備をマケドニアから調達したので歩兵として戦うといっています。スパルタンの手前、新しい呼称をおねがいします。」
「ぺゼロイタイ」
「かしこまりました。」
ぺゼロイタイ、本来ならアレクサンダー大王が創る、王の仲間を意味する精鋭重装歩兵の名前だ。
(騎兵隊の名称ヘロイタイは・・将来サルピズマを拡張したら使おう。)
いまネアポリスにはアーシアが来て以来、作り上げたもの全てが集結していた。
ただし負ければすべてを失う・・・
デマラトスとの決戦が始まろうとしていた。




