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タソス島攻略戦 後編

アポロ&アルテミス兄妹もそうですが、神々が怒ると街ごと滅亡させる話がギリシャ神話にはしょっちゅう出てきます。

こう考えると、日本の神話って結構平和です。

八百万もいると平和になるのでしょうか?

徹底したことにリメナスのすぐ近くにいっても兵は一人も見なかった。

「歩哨すら立っていないとなると、やはり異常ですね。十分に注意をアーシア様・・・」

タルゲリアがささやくような声で注意してくれた。


「パンティテスにファランクスを組んで、喚声を上げさせろ。弓隊はその後ろに配備、出て来たら、狙いはいいから矢を上から降らせろ。」


コリーダが伝令で離れて、少しすると前方で大声が上がった。


「ヘレネス最強は!」

「「「スパルタン」」」


「我々は!!」

「「「スパルタン」」」


「今日の勝者は!!!」

「「「スパルタン」」」


パンティテスの掛け声のもと戦意が急速に揚がっているのがよくわかる。

やはり敵にはしたくない部隊だ。


声がリメナスに届いたらしく次々と兵が建物から飛び出してくる。

隊列も何もなく突っ込んできた。

数だけは多い、たぶん1000人近いと思う。


敵も喚声を上げながら突っ込んできた。


「戦闘開始、ファランクス前進!」

アーシアの指揮と共にファランクスの後方から矢が放たれる。

敵兵は矢を受けようと盾を上に掲げる。

その瞬間にスパルタ兵が槍で刺し殺す。

連携が見事に決まっていた。


「コリーダ、タルゲリア、弓兵の半分を連れて左翼に、ファランクスの左を守ってくれ。」

「「はい!」」

彼女らが飛び出していくと、戦況は一方的なものになった。


・・・おかしい・・・おかしすぎる・・・


「メガクレス、変だ!」

「確かに・・・・そういえば・・・」

「なんだ!」

「いえ、兵にイオニア人が見えないなと?」

「そうなのか?」

イオニア人とアカイア人とドーリア人、アーシアには、みんな同じヘレネスに見えるが、生まれついてイオニア人のメガクレスにはこの暗闇でも差が見えるらしい。


「だとすると、あそこにいるのは・・・」

「リメナスの民だけかと思われます。」


それで納得がいく。


デマラトスは人質でもとって、リメナスの市民に時間稼ぎを要求したのだろう。

そして戦闘は始まってしまった。

もはや、止める術はない。


「・・・人質がいるとすればどこだと思う?」

「対岸のアプデラのどこかの神殿でしょうね。」

「神殿?」

「殺さないという保証になります。」

もっとも奴隷契約はできるのですがと、メガクレスは続けた。


1000人対170人で兵の質で圧倒しているが・・・手を抜く余裕は全くない。

向かってくる以上は殲滅しかない。


「まいったな。完全にデマラトスにやられたか。」

勝っても、タソス島、いやマケドニア防衛地域の統治は難しいものになるだろう。

住人の血縁がこの島だけに済んでいるわけではないのである。


「緊急です!アーシア様。」


前線からタルゲリアが戻ってきた。

「前線より、敵兵がマケドニア人のみと連絡がありました。」

「ああ、メガクレスが指摘してくれたところだ。」

「では直ちにアーシア様が先頭に立ち、歯向かうものはアポロ神の生贄として殲滅すると宣言ください。」

「?・・わからんが、わかった!」


テーセウスの盾を左腕につけると前線に向かった。

メガクレスがピュトン旗をもって後ろをついてくる。


アーシアは走りながら腰のメガホンを口元にあてる。

「聞けい!デルフォイの教皇にしてスパルタ海軍軍司令官アーシアが告げる!アーシアはアポロ神より新しき姿をもらった。今宵の生贄を汝らはその身で払うか!歯向かうものはテーセウスの盾にかけて、殲滅しアポロ神への供物となし冥府に突き落とすぞ!」

(・・・でいいの?タルゲリア・・・)

(はい、オッケーです。)


松明の明かりが浮かびあがらせたのは、光り輝く髪をもった神秘的な姿の少年、いや見ようによっては青年といえる美男子が、大音声で敵に最後通告を与える姿だった。

その男の後ろには勝利を約束しているといわれたピュトン旗がはためいていた。


リメナス市民の士気は一気に下がった。

もともと数だけで押し切る計画だったのである。

マラトンの戦いで活躍した神兵マギナサルピズマの指揮官が来ているとは聞いていなかった。

僅か50騎で1000騎を打ち破る指揮官である。

先ほどからの戦いも200に満たない兵で一方的にたたかれている。


もともとが市民である。浮足立つと一気に逃げ始めた。

「メガクレス!急いで部下と、ラムヌースⅡをリメナスに!」

「マリスタ・キーリエ!」

アーシアの指示にメガクレスはアンティキュラ号の水兵を率いて来た道を戻っていく。


代わりに旗を持っているのはコリーダである。

「なんか安心するね、ご主人様。」

「あたしの定位置って感じで。」

ああ、そういうことか。


「まだ、終わってないぞ。」

アーシアの周囲を、スパルタ海軍は囲みつつ警戒していた。

「リメナスに無事着いたら、たぶん、もう一回だ。」

「どういうこと、ご主人様。」


アーシアは冷ややかな笑みを浮かべた。

「まだデマラトスはアプデラにいるはずだ。」

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