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合成生物(キメラ)

エリシア・クロロティカですが、幼生時代に食べた植物プランクトンの葉緑素製造能力をコピーして成体は光合成できるようになるという・・・綺麗な葉っぱそっくりのウミウシです。

このキメラ化の技術は次章のリヴィア編で詳しく説明の予定です・・・続いていればですが・・・

あとアレクサンドロス王の身体能力ですが1世はオリンピアの競技に出て1位決定戦で敗退したとあるので、相当鍛えこんでいたのは間違いないと思います。

メガクレス到着の一報を受けたアーシアは安堵する一方で、心の奥底から滲み出る不安を消せないでいた。

「メガクレスだと威力偵察までか・・・」


デマトラスのあの反則級の強さを知った今では、アギス王家の結晶レオニダス殿下でも来てもらわないと勝てないのではないかと思っていた。

はっきり言えば強さの次元が違いすぎる。


敵兵ヘレネス1000人に対してはスパルタ海軍150人で制圧できる自信がある。

同様に元親衛隊39人も海軍150人なら制圧可能だ。

ただしデマラトスが指揮を執ると・・・想像がつかない。

決戦になると40人Vs150人でもひっくり返されかねない。


テルモピュレイの戦いで親衛隊300人は20万を超えるペルシア軍に対し互角の戦闘を行った。


単純に同じ比率なら40人を倒すのに二万人以上が必要になる。

そしてそれが誇張と思えない・・・まったく困ったものである。


むろんこちらも、レオニダスかキモン、もしくはミルティアデスのような名将が指揮をとれば40対150の比率に戻る。

おそらくデマラトスはいったんトラキアに退却して、大軍を準備しマケドニア侵攻を始めると思われる。


アーシアは自分に名将の素質があるとは思わないが、自分が指揮することでスパルタ海軍の士気を異常に高揚させることはできると思っていた。

軍の進退に占いが用いられるこの時代に、神託のできる巫女が直接指揮する。

そして、その巫女はペルシア軍相手にマラトンの勝利をもたらしたという実績がある。

スパルタンなら勝利のためといわれれば、指揮のままに炎の中でも飛び込むであろう。


もちろんこのような士気が高すぎる状態は、敵味方ともに損害が大きくなりすぎるために、本来はあまり好ましいものではない。

ただし今回に限り非常に有効である。

なぜなら元親衛隊は39人、潰しあいになれば補充のきかないデマラトス側が不利である。

最悪150人が全滅しても、デマラトスを討てればこちらの勝ちである。

むこうが勝つにはマケドニア征服が必要な現状では、圧倒的に有利な状態である。


もっともタソス島を押さえられてしまうと、マケドニア征服がぐっと近づいてくるのでデマラトスの判断は間違ってなかったといえる。

ラムヌースⅡが出来上がっていなければ一気に終局したかもしれない。


「まさかアレクサンドロス王を投入ともいかないしな。」


知名度、地位、そしておそらくは身体能力も拮抗するであろうアレクサンドロス王だが現状では出陣はさせられない。


もし王が出陣して死んだ場合にはマケドニア王国がペルシアに寝返る可能性が高い。

そうなると敵はデマラトスが死んでも、アレクサンドロス王を討てば勝利になるため39人+デマラトスが死兵となって王の首を取りに来るだろう・・・もともと数だけは向こうの方が多いのである。

たぶん・・・負ける、もしくは島への上陸の段階で莫大な損害がでる。

そして・・・デマラトスに逃げられる・・・


アーシアは現時点での王の出陣はデメリットが大きすぎると判断していた。


(怪我さえなければ・・・)

口に出してしまえばアレティナ姫とトリュガイオスが無意味に責任を感じてしまう。

アーシアは焦る気持ちを抑えつつ、次善の手を考えていた。


(ともあれ、メガクレスとスパルタ海軍150人で威力偵察をさせるべきか・・・しかしここで150人を失えば本当に詰みになる・・・)


考えれば考えるほど不利に思えてくる。

(デマラトスがタソス島攻略の基地にしたのは・・・たぶんアプデラ・・・あそこは川向うだから防衛線の外か・・・ここを攻略すれば・・・ダメだ、デマラトスが退却する保証が全くない。)


「アーシア、アーシア!」

すぐ横から声をかけられた、レイチェルだ。


「大丈夫?すごい顔してたわよ?」

「あ、あぁ、大丈夫・・・俺は・・・」


物思いに沈んでいるアーシアを見かねたのか、レイチェルが小さく声を出した。

「・・・ったく、仕方ないわね。」

「なにか言った?レイチェル。」

「仕方ないから、怪我をなおそうか?って言ったの。」

「直せるの!」


「・・・・たぶんだけど・・・」

「どうやって?」

「その代り約束して、絶対に生きて帰ってくるって!」

「デマラトスとの戦いのこと?」

「ううん、治療から・・・」


なんとも物騒な話であるが・・・レイチェルの話は簡単であった。

細胞の分裂速度を極端に早める+食細胞をものすごく活発にする=傷が治る=老化する。

とういう方法で治療するのだが・・・本来、黄金鏡ナコティカの調整を受けた体は老化しない。

このため、老化するは無視していいのだが・・・そこで問題が生じる。

遺伝子が短鎖化するのは複写不良のせいだが、実はこれにはメリットが存在している。

それは切れた残りの部分はアミノ酸として体液中に拡散し、遺伝子の複写の原料として再利用されている。

このこともあって、遺伝子は冗長なほど長く作られているのだが、これは非常時の貯蔵庫として遺伝子そのものを利用しているためでもある。


その貯蔵部分がナコティカ調整後はなくなって、高濃度アミノ酸の基本体液を形成し、遺伝子の完全複写をしているのが現在の我々であるが・・・さすがに異常な分裂を行うと体液中のアミノ酸が不足する可能性が出てくる・・・その時にどうなるのかはわからない。

「不足する分は補助する方法はあるけど・・・材料が・・・」

「材料?」

「まるで豚骨スープなのよ。」


彼女曰く、必要なアミノ酸、ミネラルを溶かした溶液は・・・人間に一番近い生物「豚」で作ると・・・豚骨スープになるそうである。


「大きな甕で作って、その中に漬けて・・・煮込んでは冷やし・・・」

「ちょっとまって・・・煮込むってなに?」

「熱エネルギーも必要だから41度くらいまであっためて36度まで冷やすのを繰り返すの。」

「ゼラチンになりそうだね。」

「ええ、うまくいけばゼラチンの中から傷の癒えたあなたが出てくることになるわ。」


・・・マジかい・・・


「でね・・・問題が一つだけあるのよ。」


エリシア・クロロティカ・・・極楽緑貝の仲間で緑色の小さなウミウシである。


「ナコティカを調べてたら、どうも、このウミウシの生命素を参考にしたっぽくて・・・」


ああ、そういえばだいぶ前にウミウシって叫んでたな・・・


「このウミウシって食べたものの生命素を取り込んで、自分の生命素に組み入れできるみたいなの・・・」


・・・は?


「スフィンクスとかキメラ生物の基礎生物みたい・・・当然あたしたちも同じ魔術ぎじゅつの発展形だから・・・」


・・・じゃあなんで今まで変身してないんだ・・・


「ほら、一回に食べる量って全体重に比べれば少しだから・・・身体に組み込まれた調整機能が追いつくんだけど・・・今回はたぶん間に合わないからどうなるか?」


「最悪は?」


「1%で死亡、90%の確率で外観変化かな?」


・・・どこまで変化するんだろう・・・不安・・・


「外観が人間離れすることはないと思うけど・・・そこまで行くと死んじゃうから・・・」


・・・オークになることはないってことか。


そこまで話したところでコリーダが声をかけてきた。


「ご主人様、メガクレス艦長がこられました!」


アーシアは一瞬で判断を決めた。


「メガクレス手伝え!」


到着の報告に現れたメガクレスに対し、全身に血のにじんだ包帯を巻き付け、立つこともできないアーシアが横たわったまま命令した。


「手伝うのはいいのですが・・・何をですか?」

アーシアは目線をレイチェルの方に動かし、力強くうなずいた。


「豚骨スープづくりだ。」


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