コリントス会議
おもったより進まなくて、まだ9月2日です。
ラムヌースⅡに出現するのが9月9日です・・・次回でそこまで行きたいのですが・・・
アレティアの判断はレイチェルが脳共振をおこせるかどうか、見える位置で試す必要があるので会わないといけません。個々で脳共振を起こせる部位が異なるのでそれが電話番号になって、連絡先の指定ができるようになっています。
部位が共振後は増設HDDのように読み書きできますが、ポートが1個しかないので最大一人の接続になります。
時間は少し巻き戻る。
BC490年9月1日 タソス島へペルシア軍が侵攻の報を受け、コリントスではアーシア教皇招集による主要国会議が始まっていた・・・のだが・・・
「ともあれ、兵を向かわせるのか急務、至急援軍の派兵を!先鋒は我らラケダイモンに!」
「しかし派兵をすればペルシアとの正面衝突は必須。アルゴスとしては派兵は時期尚早と考えます。」
「既にマラトンにてアテナイは正面衝突しています、わかっておいででしょうがアルゴスもマケドニア防衛に参加の以上は・・・」
「いやいや、それはイオニア人の一存。アカイア人の我らテーベにとっても今回が初の判断、慎重に検討を行わないといけませんな。」
「しかしタソス島を落とされたのでは防禦陣の横に短刀を突き付けられた形になります。海運を行うアテナイとして発言しますが輸送の安全のために取り戻さなければなりません。」
「そうなると、タソス島を落とされた責任を追及しないといけませんな。ふむ断罪のため、この防衛作戦の責任者を定める必要がありそうですな。どうでしょう、立場的に中立な我がコリントスから代表者を立てるということで。」
「それは話が違う。そもそも防禦陣の作成とペルシアとの戦争は別と我々テーべは考えています!」
「戦闘で我らラケダイモンの上に立つ民族はいない。」
「誇り高きアルゴスはスパルタの下につくことはありえません!」
とまあ主要5ポリスですら意見の統一は無理と思われた。
大まかにいうと主戦派はアテナイとスパルタ。非戦派はテーベ、中立派がコリントス、そしてスパルタの意見を否定するのが目的のアルゴスである。
アルゴスに政治的目的や戦略を求めてはいけない・・・単にスパルタのすることを邪魔したいだけだ。
師匠からそうは聞いてはいたが、ここまでとは思わなかった。
ある意味非戦派として徹底していてくれれば、拮抗した状況をコリントスの誘導やデルフォイの神託で先に進めることもできたが非戦派ですらないので困ってしまう。
結局9月1日は何の進展もなく会議は終わった。
「ダメだ。このままだとタソス島が要塞化される。」
「アーシア様の予測は正しいと思います。早急に奪還しこちらの手で要塞化しないといけません。」
タルゲリアが静かにアーシアの言葉を肯定する。
彼女はピュロスよりも軍事的な判断能力が高いので軍師的な位置についてきた。
そのピュロスは部屋の外で衛兵をしているコリーダを含め、桑の葉で作ったお茶を配って皆の間を歩いていた。
お茶を飲みながら、広げた地図の上に船の模型を置いていた、姫様が話しかけてきた。
「アーシア、この配置だと一番早く行けそうなのは小アジアを回らせていたアンティキュラ号ね。艦長はメガクレス。アルクメオン一門よ。」
(重鎮のメガクレスが大叔父になるんだっけ・・・ミドルネームつけてほしい)
「メッセニア級だと戦闘員20人だ。全然足りない。」
「でも・・・」
「わかってる。とりあえずアンテイキュラはネアポリスへ回してくれ・・・できれば途中で馬を仕入れてくれるように頼んでほしいけど?」
「レスボス島に来るまでは連絡がつかないわよ。小アジアのアレティアは全部引き上げたし。」
「予想は?」
「レスボス寄港は3日後かな?」
「充分だ。それで連絡頼む。」
その言葉で以前から疑問に思っていたことを尋ねてみる。
「ねぇレイチェル。アレティアって全員で何人なの?」
「あたしが知ってる限りだと、アタシを入れて23人。どうしたの?」
アーシアは姫様のその返事の中に見逃せない部分を見つけた。
「あたしが知ってる限りということは知らないアレティアもいるの?」
「ああ・・・うん、たぶんいないとは思うけど・・・」
?
「アレティアかどうかを確認するには、顔を会せて判断しないといけないんだよね。王家なら生まれた姫は全員あってるし、王家から外れるぐらい血が薄まってればアレティアの能力がなくなるのが普通だから。」
「全員王家ってこと?」
「ううん、王家から外れて2・3代くらいまではチェックしてる。今のアレティアでも3人はそうだし。」
それでも23人か予想より少ない・・・
「自由に都市を移動できるの?」
「大体が結婚して家庭もってるから、自由に動ける人間は殆どいないんだけどね。」
「今だと?」
「スパルタに一人、アテナイに、あ、でもパンドラいなくなったから動かせないか、あと私」
「つまり2人か・・・」
「どっちも未婚の王族だしね。」
情報をすり合わせ、作戦を作ることでその夜は更けていった。
翌日、結局、昼まではまったく進捗はなかった。
その昼休みにアーシアはついに決断した。
「全ポリスは全力を挙げ、防禦施設の建設を急ぐこととしたい。」
これに関しては、既定のことなので文句は出なかった。
タソス島に関しては船1隻で強行偵察を行うこととして、その偵察結果をもって判断するとした。
この先送りのような決定に、スパルタは明らかに不満を示した。
おかげでアルゴスは賛成してくれたので全会一致(スパルタは不満だったが、スパルタ海軍が強行偵察することで納得させた。)でまとまった。
「レイチェル、アテナイのアレティアは動ける?」
「動けるけど?いなくなるとアテナイの情報がこなくなるわよ。」
「ラムヌースⅡ号は明日アイギナに寄港予定だよね?」
「ええ、そうね。」
「じゃあ、アレティア姫をラムヌースⅡに乗せて。」
・・・
「彼女に何をさせる気?」
「夜間航行の航路指示。」
その言葉を聞いて姫様はヒステリックに叫んだ。
「無茶よ、彼女は素人よ。」
「天体観測の報告を聞いて、ピュロスと一緒にやれば、こちらで船の位置は割り出せると思う。」
「でも、船1隻・・・じゃ。」
「ラムヌース級は1大隊150人乗っている。この船以外に強行偵察のまま占領できる可能性の船はない。」
「じゃあ、普通に行けば」
「一月後だと遅すぎる!」
徐々に当初の感情的な声からしぼんでいく声の中、姫様は精一杯の抵抗をしていた。
「どうしたの、レイチェル?やけに強く反対するけど。」
「あの子は次代のアレティアになる予定なの・・・アタシとパンドラに次ぐ能力を持っていて・・・しかも儀式に失敗してるから・・・子供が産めるの・・・」
?
「やがてアレティアの血は薄まって消える定めなのでしょうけど・・・あの子は母親より能力が高いのよ、先祖返りね・・・だから、」
「アレティア一族の未来への希望ということか。」
「ええ。」
もっとも、それを聞いてもアーシアは判断を変えなかったし、姫様も何かにとらわれたような自分の過保護を恥じていた。
次にアーシアはネアポリスへの移動方法を考えていた。
直線距離で400km・・・1週間では絶望的だ。
「空でも飛ばないと無理か・・・」
「ご主人はイカロスにでもなられるのですか。」
コリーダが呆れた顔で批評した。
「・・・待てよ…いけるのか。」
そのまま部屋を飛び出すと会頭宅に飛び込む。
「師匠!くうか・・・失礼しました!」
垂れ幕をくぐって部屋に入ったアーシアは、一瞬で部屋を飛び出した。
すこしすると、ものすごく不満そうな目を向けるパンドラが部屋から出てきた。
ついで師匠の疲れた声が聞こえた。
「はいれ、弟子」
「はい、お邪魔してすいません。」
「いや気にしなくていい。」
そこで、空間操作による空気密度の操作について詳しく尋ねた。
「なんでまたお前さんが、そんな基本的なことを尋ねるのかね?」
「やったことがないので・・・」
「空間転移が先って・・・やったこともなかったのか、呆れたやつだな・・・」
基本としては空気中の分子エネルギーを熱として抽出すると残った部分は冷えて、自己収縮を始めるので圧力が低くなる。
抽出した熱を特定地点に排出すると、空気が膨張するので圧力が高くなる。
ただすぐそれを打ち消す動きを自然が起こすため、それを利用すれば髪の節約になるという。
「冷えた場所に風が吸い込まれた後は熱が出て、また噴き出してくる。あったまった場所は吹き出して冷えると風を吸い込む。この座標を操作すれば1回で2回分の操作が行える。」
・・・ジュール熱?カルノーサイクル?あいかわらず不思議な魔術だ。
「で、なにをやる気だ。」
「ええ、ちょっと空を飛ぼうかと。」
「・・・イカロスかい。」
また、いわれた。やっぱ神話は強い。
イメージとしては時間もないのでパラグライダーを考えているのだが・・・大きな布を手配しないと。




