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マケドニア国土改造論

ついにペルシア戦争第2幕開始です。史実に比べると王様はダレイオス大王のままBC 481年の侵攻に前すること10年です。

この時ペルシアはまだマラトンの戦いの後遺症が残ってますので、大規模な侵攻はするつもりはありません。トラキア総督の独断で橋頭保の確保に動いた状態です。

このため兵力が一ケタ違うのですが・・・

今日で8月が終わる。


アポロ神殿にアーシアが作った黒板の前では盛大な掛け声が上がっていた。

「アテナイ城塞横まで150スタディオン、西向50スタディオン。」

「軍用道路近、最寄りポリスまで20スタディオン。」

「傾斜地につきアリキポス商会優先開発地域指定有。100スタディオン!」

「景色良し。やや高台。防御力高。50スタディオン!」


・・・なんだろう。この不動産屋のチラシのような活気は・・・


大小のポリス合わせて200以上が存在するポリスだが、実はヘレネスには契約の概念があまり強くない。

約束という概念はしっかりあるので、その延長で契約も可能なのだが・・・あくまで個と個の約束であり集団で約束するというのは苦手である。

その中でうまくいくのは神々に対しての宣誓の形をとる形である。

この場合のみ集団は契約に従うといってもよいほど、ヘレネスは個人主義である。


ということでアポロ神殿に各ポリスの代表を集め・・・各ポリスで受け持ちを決めるのに大騒ぎしているのだが・・・


防御施設を建築すれば、その前方の木材が自分の物になる。

やっぱり儲け話には皆参加したいようで、ほぼすべてのポリスが代表を参加させてくれた。

(もちろん、商会の4隻の客船は無料奉仕でフル稼働である。)

その上でわかったのが各ポリスの仲の悪さ・・・


アルゴスとスパルタは端と端といっていい地域を選びたがるし、アテナイは中央の山がちな部分(川はないが木材が豊富)、テーベはデルフォイの近くを選びたがる。

困り果てて、防衛施設の距離だけ申告させて、あとはくじ引きで決めた。


中小のポリスは最初は興味薄だったが・・・くじ引きのあとアーシアの仕掛けた儲け話によって過熱ヒートアップすることになる。


アーシアは契約文書で城塞がポリスの大小にかかわらず1個と定めておいた。

実際には大兵力を派遣するアテナイ・テーベは城塞1個で足りるはずもないのだが、あえてこの形をとっている。


足りない分は他のポリスからの名義借りによる城塞建築を行わせることを前提としているのだ。


まずアテナイが、防御設備と城塞を自分で造り、その城塞の使用料を支払う代わりに木材の伐採権をもらう条件で、中小のポリスと契約をはじめた。


中小ポリスにすれば契約すれば何もせず、毎年お金が入ってくるだけの話である。

当然、立地条件の良いところは良い契約ができ、悪い場所だと安い契約になるので、自分たちがくじで決まった場所の利点を売り込んでいる。


アテナイに続きテーベ、コリントス、アルゴスも動き始めると、一気に不動産取引が過熱し始めた。


この時点ではアリキポス商会以外は気づいてないが、これは諸ポリスの再編成を兼ねる作業である。

大まかに言ってアテナイ系列、テーベ系列、コリントス系列、アルゴス系列に分類するようにした。

そうでないと、指揮権が確立不能なほど仲が悪いのである。


防衛戦争はそれら主要ポリスの代表者の協議で決まるのだが・・・正直アルゴス系列は入ってない方が作戦の決定が楽だった気がする。兵力が増えても・・・ねぇ、という感じである。


そのなかスパルタのみは植民都市と自前の分、合計4つの城塞で2000人のスパルタンを常駐させる方針でいた。彼らは木材や覇権に興味がなかったのである。

マラトンの遅刻を取り返すべく、やる気は満々だった。


そしてマケドニアはこの状態を利用して、ネッソス河南岸にフィリッポリス、ネアポリスをはじめとする拠点用のポリスを整備し、駐留軍の補給並びに娯楽で財政を潤す計画を立てていた。

また、ヘレネスの大群が駐留する圧迫感を利用して、軍事力を持つ豪族をアイガイに終結させた。同時に国内各地にポリスを作り、牧羊民が安全に暮らせるようにしていた。

豪族たちも日に日に増えるヘレネス勢に不安になっていたこともあり、比較的穏当に移住は進んだ。

後にアイガイでは居住地が不足することから、ペラへの遷都が計画されるがアレクサンドロス王の時代はアイガイが王都であった。



今回の契約用の書面は15枚を綴って一枚にしたものを、木芯に巻き込んだいわゆる巻物スクロールの形をしている。

1本約2kgであるが5本10本ともって走りまわる、剛の者がアポロ神殿にいた・・・

「アーシア、追加10本承認頼む。」

「・・・アレクサンドロス王、大丈夫ですか?」

「資金が足りん、まだ手付かずの地域は多い。専用軍道の建設権利だけでテーベは2タラントン出したぞ。」

「まあ、トラキアとの交易を考えると、それくらいは出すのでしょうが。やりすぎると後で大変ですよ。」

「失敗すればペルシア領になる。その危機感が国内にダイナミックな変化を受け入れる余地になっているのだ。今以上の変革チャンスはない!」

「わかりました。あとで確認してアポロ神殿の誓文を入れますので、明日取りに来てください。」

「頼んだぞ。おお、そういえば、いいオレンジが手に入った。あとで届けておく。」

身軽になったマケドニア王は速足で神殿を出て行った。


「ほんとに王様らしくない王様ですね。」

ピュロスが笑いをこらえる顔で巻物を確認し始めた。

「間違いなくマケドニア王です。でも以前に会った時より明るくなられました。」

その横でタルゲリアが消えるような声で呟くと、同じように巻物を広げ確認を始めた。


結局、タルゲリアはアリキポス商会に居つく形になった。

面白いのはタルゲリアに母猫イシスが懐いている事だ。

猫が一緒に商会に転がり込んできた感じだ・・・


うちは猫屋敷じゃないんだが・・・ネズミが入ってこれなくなるのはありがたい。


タルゲリアの本来の性格は大人しく引っ込み思案?のようだ。

なんでもヘタイラ用の衣装を着た時のみ、あの性格になるらしい・・・というか、ああいうふうに演じていたらしい。

服をすべて脱ぐと、本来の内気な表情になるので、そのギャップにメロメロにされた親ペルシア派は多い。


・・・彼女にしてみれば恥ずかしくて辛い仕事だったようだが・・・


そんなわけで意外にも女性陣からはタルゲリア受け入れに反対は出なかった。

むしろ同情の声が聞こえたぐらいで・・・


タルゲリアは文武両道だが、専門分野ではコリーダとピュロスにわずかに劣る。

そういう意味でもコリーダとの仲がうまくいっているのはありがたい。

デマラトス親衛隊が来たとき2対1なら勝機もあるだろう。


以前だと、文書管理を手伝っていた姫様レイチェルはナコティカの解読をメインにしている。

以前だと手が足りなくてできなかったのだが、あるとき、思い付き「もしかして生命素いでんしのゲノム解析がアルファベットで書いてあるかもしれない?」って言ったら、「アメフラシ!」といってしばらく没頭していた。あれは何だったんだろう?


パンドラは商会の会頭宅に、ついにベットを持ち込んで泊まり込みでサポートだ。

師匠ヘラクレイトス養父クレイステネスに遠慮しているのか・・・まだ手を出していないようだ。

頑張れ46才、枯れるにはまだ早い。


商会の方も無事、副会頭をクセノファネスに引き受けてもらえた。アナクサゴラスは両親ともアリキポス商会で雇用したので、コリントスで勉強中である。


コリントスの工房では工事用の道具の試作がいそがしい。

ツルハシ、スコップ、鍬、を青銅や鉄で鋳造したり、木製手押し車(一輪車)を試作したりとバタバタしている。

いずれもネアポリスに海路で持ち込み、工事現場で売りさばく予定だ。


おまけ・・・といってはすごいおまけだが発行数の1%を納めるという形でデルフォイのポリスから金貨の鋳造権を入手した。

アポロンデカドラクマ金貨として流通させるつもりであるが・・・ラス・メドゥラス金山の開発がうまくいけば資金には困らなくなるであろう。

それまではピドナ、デルペニ、セデス、パンガイオン等のマケドニア各地の金山から算出した金で鋳造することになるが、精錬純度をデルフォイで高め、金900銅100の安定した品質で金貨を作ることでマケドニアへの地金代を払っても十分成り立つ計算である。


しかしこのおかげでコリントスについて、この2か月、寝室で寝てない。

夜も事務室に持ち込んだ寝椅子での仮眠である。

仮眠も、たいてい1晩1回は起こされる。

1日1回の楽しみ「ヘレネの湯」も入浴するなり、寝てしまうので楽しみだけど楽しめない。

ものすごいストレスが溜まっていたんだと思う・・・うん、言い訳はこれくらいでいいか。


タルゲリアに手を出しました。


いや、他の3人は承諾してくれてたんだけど・・・

ペルシア語を習うために事務室で二人っきりでいても、タルゲリアが私は汚れた体だからって遠慮してるの見てるのがつらくて・・・ねぇ。


それ以降、女性陣は余計仲良くなったんだけど・・・ずっと見張られてる気がする。

師匠とパンドラからは笑われるし・・・まったく・・・


そんなこんなでドタバタと迎えた9月、ヘレネスに激震が走った。


ホルスを抱えたまま姫様が事務室に飛び込んできた。


「ペルシア軍1000がネアポリス対岸のタソス島に上陸、島の防衛隊200は撤退、島は中心地リメナスをはじめペルシア軍に掌握されました・・・だってよ。どうするアーシア?」

アーシアにしてみると、ついに始まったなという感じである。

まだまだ準備不足ではあるが・・・


「奪回しないとまずいでしょう。レイチェル、5大ポリスの代表を神殿に集合させてください。」


姫様が部屋を出る寸前に、くるりとこちらにターンしてウインクしてきた。

「頑張ってね。教皇。」

=ニャー=


「まだ、夏毛か、ホルス。」

姫様の抱えていたホルスは目は元に戻っていたが、毛は白いままだった。


「冬毛になる前には、島を取り戻さないと。」


アーシアの技能変更

一般技能(ペルシア語) 習得

一般技能(地理・小アジア)習得

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