表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/130

マケドニアへの返書

今回からアレキサンダーがアレクサンドロス表記になります。

なんか、巨人戦争ギガントマキアかっこいいです。自分でヘラクレス主人公で書きたくなるくらいに。

神々が必死に食い止める中、次々に巨人竜を仕留める半神半人の英雄って、厨二心が爆発しそうです。誰か書いてくれないかな・・・


アーシアは木綿の布を取り出すと、一気に巨人戦争ギガントマキアのエピアルテスの姿を描きだした。

この巨人・・・上半身は人間なのだが、下半身は竜である。


オリュンポス神群Vsクロノス神群の最大の闘争ともいえる、この巨人戦争には一つの特徴があった。


巨人には神々だけの力では打ち勝つことができないことが定められた。

打ち勝つためには人間の力が必要であったことだ。

このためゼウスは人間の女との間に英雄ヘラクレスをなし、この戦争に参加させた。

そしてアポロが左目を、ヘラクレスが右目を、矢で射て殺したのがエピアルテスという巨人である。

そしてヘラクレスの子孫がヘレネスとよばれるのである。


左目に矢の刺さったエピアルトスの姿を書き上げると、そのまま手紙箱に入るくらいの弓矢を作り始める。長さ30cm程度だろうか・・・おもちゃであり、コスプレの道具みたいなものである。

・・・本物の弓矢は作れそうにないが、コスプレの道具、そう思うと簡単に作れ、気分だけにしては出来が良すぎるのが問題だが。


とりあえずできた弓矢を箱に納める。封印はしない。


「誰か、マケドニア王の使者のところに案内してくれ。」

弓矢を納めたところで、大声で呼ぶと巫女らしい女性が入ってきた。

「アーシア教皇、わたくしが案内します。」


・・・どっかで見覚えが?

・・・ああ、出現したとき案内してくれた、名前はクリ・・・クリト・・・クリス、えーとクリサンテだ。


「クリサンテか、息災かな?」

「教皇・・・」

クリサンテは名前を憶えてもらっていたのが、よほどうれしかったようだ。顔が紅潮している。


「ともあれ、使者を待たせてはいけない急ごう。」

「はい。」

彼女は速足で部屋をでる。


彼女について使者の部屋に着くとアイオス元神官長と楽しそうに話をしていた。

「おお、アーシア教皇。こちらは・・・」

そこで、使者が腕を、横に伸ばすとアイオスの言葉を遮った。

「失礼、アーシア教皇、手にしているのは手紙箱のようですね。中身を確認されましたか?」


やっぱり、ただの使者にしては態度が不遜すぎる・・・この瞬間に確信に変わった。


「ええ、蓋をあけて、しっかりと確認してください。」

そう言って手紙箱を使者に渡した。

そのまま窓の一つにカーテンのように巨人を書いた布を垂れさがらせる。


使者は蓋を開けて玩具の弓矢を見ると怪訝な顔をしたが、垂れ幕の絵柄を見て気づいたようである。

「・・・朕にヘラクレスをやれということか。」

「ヘレネスならば!」

使者はアーシアのその言葉を聞くと、にやりと笑い、弓を引き絞り矢を放った。

矢は見事に巨人の右目を射抜いた。


「気に入ったぞ!マケドニアはアーシアにつこう!」


射抜いた矢と布を一緒に巻き取ると手紙箱に納めた。


「では、マケドニア王国とヘレネスは共闘体制に入るということでよろしいですか。」

「ヘレネスはアーシアが差配せよ。朕の手を煩わせるな。」

「かしこまりました。アレクサンダー王」

「朕を呼ぶときはアレクサンドロスと呼べ。」

ギリシャ風か・・

「わかりました。アレクサンドロス王。」


よほど気に入られたのか、そのあと肩をバンバン叩かれたが、宴席の準備のため中座すると、アイオスが対応してくれていた。


すべては試験だったのである。

聡いアレクサンドロスである。

デマラトスのトラキア総督着任後の行く末は見えていたに違いない。

しかし、ヘルメスの支援を仰ぐにしろ代償が必要であり、下手をすれば元も子もなくなる。


そんなおりにアーシアからの手紙だ。

ポリス間では中立的な立場にあり、窓口にするには問題ない。

問題があるとすれば、その人物の能力である。

そこで王自らが使者に化けて、その人物を確認しに来た。

前に会ったことがあるアイオスが対応したのは予想外だったが・・・


アレクサンドロス王が事前に立てた木箱に関する予想は以下だった。


・空箱であることを正直に告げて再度の伝令を頼む・・・能力不足、マケドニアが組むに能わず。

・空箱の意味を問う・・・・・・能力不足、王の正体を告げ断る。マケドニアが組むに能わず。

・空箱で使者が内容を口頭で告げると推定する。・・・様子見・・・マケドニアに招待

・空箱から使者が決定権を持っていると判断する。・・・合格・・・マケドニアに招待

・空箱の模様から使者が王そのものと判断する。・・・様子見・・・マケドニアに招待(王と判断した情報確認)


アーシアはどれにも当てはまらない「王と断定の上ヘルメスとしての共闘」を持ち掛けたのである。


宴席でアレクサンドロス王はアーシアになぜ王と断定できたのか問いただした。

アーシアは使者にかけた王太子の言葉から王太子は箱の中身が空だと知っていたと判断。

また、王太子が使者に金貨を下賜されたので王が隠れたがていると判断。

では、隠れた王は?ここでケーリュケイオンの杖の模様から、持っているのは王と判断した。

この段階でアレクサンドロス王は微笑みゆったりと頷いた。

しかしアーシアはさらに言葉を繋いだ。

同時に、ケーリュケイオンの杖は葦笛の代わりにアポロからヘルメスにわたったもので代償を要求すると宣告していると考え、その代償を示すものが必要と判定した。

マケドニアからの提示は領土ではなく船用の木材、これはデウカリオーンのはこぶねにかけ木箱で示していると判断した。

こちらからも、アポロ神殿の総力を尽くし武力を提供するということでエピアルテスの絵と弓矢を準備した。


ここまで話したアーシアはアレクサンドロス王の表情の中に僅かな怒りと不安が隠されているのを見ぬいた。


「心配いりません。そちらが警戒されるのはもっともですが、あとから想定より頭が切れる、ということで疑心暗鬼になられても困りますので、手の内をさらしただけです。敵はペルシア!左目は受け持ちます。」

「では右目は朕が受けもとう。しかしうまい酒だな。」

「それは、コリントスではやっているカクテルという酒でいろいろありますよ。」

「なんと、では別のをくれ。」


そのまま二人は乾杯をつづけ、ピュロスたちが栗の木の移植の報告に来た時には、べろべろになって寝ていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ