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カイスラ会戦 BC486 3月20日

カイスラ会戦は改良兵器投入と単なる地形利用の戦術で悩み後者になりました。

近くにブルーノ湖があったのが大きかったですね。

改良兵器はもうすぐデマラトスの隠し玉で出てくると思います。

アーシア夫婦も思ったよりいい感じです。レイチェル凹んでそうで(´;ω;`)

=BC486 3月20日 カイスラ近郊 デマラトス=


プロクルス・ウェルギニウス・トリコストゥス・ルティルス執政官コンスルへの面談と打ち合わせは比較的簡単に済んだ。

申し込みの内容自体が明日の開戦には手を出さず、追撃のみに手を貸してくれという内容だったせいなのは明らかである。

むしろこちらの自信過剰に呆れていたといってもいい。

とはいえ軍団長の正式な要請である。

書記官も記録したことで執政官はその要請をうけいれることに決めた。

我々はそのまま近くの漁師の舟を買いあさるのにその日を費やした。

この近くにはブラーノ湖という汽水の湖があるおかげで、漁民は多い。

比較的楽に予定数をそろえることができた。


このブラーノ湖は東西に3km、南北に500mのほぼ長方形の湖であり、海との距離は50mもない。

これが今回の我々の飯のタネである。

季節は冬、明け方は霧で視界が悪い。

その上で海と湖の狭隘部に敵を誘い込んで包囲殲滅する作戦である。


ブラーノ湖はカイスラから南に4kmの地点なのでエトルリアにとっては地元といっていい。

これをどう誘い込むかが腕の見せ所になる。


今回、陣を張るのは第10歩兵隊までである。第11・12歩兵隊は漁船に乗り、湖水上に伏兵として隠れている。

通常とは異なりトリアーリの第1歩兵隊が最左翼、第2.3歩兵隊が最右翼を固め、その間にハスターリ(前衛)

プリンチペ(中堅)で戦列を組む。

これは第1歩兵隊を軸に第2.3歩兵隊が円運動をしながら後退することで敵を引き込む作戦である。

さて、うまいこといくか?


翌日の朝、陣形を組むと高々と戦闘旗を掲げた。

朝もやのせいで実数はよくわからなかったようだ。

偵察兵の報告では我々800に対してほぼ全軍8000で攻め込んできた。

およそ10倍である。


「わがトラキアーノ軍団の精鋭諸君、今日は新しい狩りのやり方を敵に教えてやろう。!代価は彼らの命だ。

命令に従い、一兵残らず殲滅せよ!」


10倍の敵を前にいうことではないと思いつつそれぞれの百人隊長に指示する。

スパルタ人にもこんな命令は出したことはない。

もっともウォーモンガーの彼らは10倍を殲滅しろと言われれば「一人十殺」といってバーサークして飛び出してしまうので言えなかったのではあるが・・・


基本的には第1歩兵隊が扇の要の役であり第2・3歩兵隊が扇の動きで後退をサポートし狭隘地に誘い込み、戦闘正面を狭くかつ敵の大軍のほとんどを遊兵と化すのが目的である。

戦闘正面が少なくなれば、ベテランの第1・2・3歩兵隊で前線を組める。重装歩兵に比べ軽装で同じ防御力を叩き出す、彼らは戦闘が長くなればなるほど持久力の差を見せつけてくれる。

うまく引きずり込めればとどめはローマ軍本体に背後から襲ってもらえばいい。


「第1歩兵隊!今日は私もここで戦うぞ。皆の戦果を見せつけてくれ!」

デマラトスの声に第1歩兵隊が大声で叫ぶ。

一瞬霧の向こうの足音の響きが止まったように聞こえるほどの迫力だった。


挿絵(By みてみん)


「正面接敵!」

エトルリア連合軍が接敵した。

予想通り重装歩兵による戦列で、押し潰しにかかってくる。

こちらの背後は海、一気に攻め潰す気だろう。


挿絵(By みてみん)


第1歩兵隊は一歩も退かない、中央から徐々に押されて後退している。

それをサポートするように第2.3歩兵隊が海と湖の間への退路を確保する。

彼ら自身はまさに背水の陣だ。

狭隘部にハスターリとプリンチペを逃がし陣形を再編する。

それが終わった瞬間に第2.3歩兵隊は前進し第1歩兵隊と合流、殿を務めるように狭隘部に後退していく。

この狭隘部中央に海とつながる水路がある。

敵にしてみれば袋のネズミと思ったのだろう。

どんどん押し込んでくる。

正に予定通りだ。

ほぼ全軍を引き込むまで遅滞防禦戦闘を続けながらゆっくりと後退していく。

戦闘を行いながら後ろに下がるのはものすごい恐怖感を煽る行為だ。

トリアーリでなければ脱落者が多数でて、戦列が崩れていたであろう。


挿絵(By みてみん)


充分に引き込んだと判断したところで銅鑼を鳴らし反撃の鬨をあげる。

湖に伏せておいた第11・12歩兵隊が投槍で湖上から最後尾に攻撃を始める。

投槍は投槍器を使えば飛ばすだけなら100m、つまり海側の敵まで届くのだ。

安全圏から大量に舟に積み込んだ投槍を打ち込むこむだけの、この部隊はこれが初参戦のラテン人である。

地道に的確に投槍を飛ばし続けてくれた。

そこに第1.2騎馬隊を先頭にローマ本軍が攻めかかってきた。

最後尾が隊列を整えようにも投槍が邪魔し、陣列が組みあがる前に突入された。

あとは一方的な蹂躙である。

前にも後ろにも行けないエトルリア兵は海に飛び込み、鎧のせいで溺死する者、多数。

8000のうち逃げられたのは500にも満たなかった。

こちらの800人も終わってみれば650人である。

ただしトリアーリに被害は集中した。

第1歩兵隊は残り30名、半数が死亡した。第2.3歩兵隊も同じ程度まで減っていた。

そこで第2・3歩兵部隊を解散し、第1歩兵隊に組み込んだ。第2・3歩兵隊は欠番とし、その勇戦をたたえることにした。

トリアーリには第4・5・6歩兵隊が繰り上がり、プリンチペに第8・9・10歩兵隊が組み入れられた。

ハスターリが一時的に薄くなったが、これはローマにもどり次第募集する予定だ。

今回の圧倒的な戦果に執政官はトラキアーノ軍団の凱旋式の許可を元老院に願い出た。

問題なく通るだろう。というのが執政官コンスルプリクルスの意見だった。

凱旋式はローマ人の憧れ、これで軍団員の募集もだいぶ楽になると思う。


翌日、我々はカイスラ進駐を行い、適度に略奪を行わせ、兵達の英気を養った。

カイスラそのものは防衛拠点で使うので建物に火は放たなかったが、残っていた住民の多くは奴隷にした。

おかげでトラキアーノ軍団の各兵に奴隷を二人ずつ配給できたので、非常に喜ばれた。


=3月30日 アテナイ・リカヴィトス アーシア=


無事に花嫁エルピニケをリカヴィトスの館に送り届け、一息つく暇もなくヘリコン山に向かう計画を立てていたボクにアリキポス商会から衝撃的なニュースが飛び込んできた。


ローマ軍がエトルリア連合に完勝。カイスラは壊滅。

デマラトスは800で8000の兵を破り凱旋式が許可された。というものだった。

10倍の兵を破った?魔術でも使ったんだろうか・・・その後の詳報を聞くと戦術だけでやってのけたようだ。


化け物そのものだ。

まだ兵力が少ないうちに叩き潰さないと、手が付けられなくなりそうだ。


とはいえ、ヘリコン山も調べないといけない。

優先順位はヘリコン山の調査の方が先になる。

ローマには凱旋式で物資が必要そうなのでアリキポス商会の船とクルナを回して情報収集してもらうことにしよう。


「あなた、お疲れのようですね?」

椅子に座って書類を作っていたボクに、エルピニケが背中から腕をまわしてきた。

「すまない。あちらこちらでバタバタで、すぐに出かけることになりそうだ。」

若干回された腕に力が込められた。

「安心して留守はお任せください。」

若干声が湿ってる気もするが、ひどい奴だよな。新婚早々鉄砲玉だよ。


「わからないことはグラウコスに聞いてくれ。うまく対応してくれるはずだ。」

筆頭奴隷のグラウコス、まだ元気に家宰代わりをしてくれている。


「大丈夫ですミルティアデスもいますので、ご心配なさらずお出かけください。」

そういえばミルティアデスも史実からずれた。


パロス島の攻略には向かわずにすんだので戦傷による壊疽で死んでない。

いま64才でアテナイでは大御所と化している。

陶片追放で追放されてないのは目立つボクの方が僭主になりそうな雰囲気だが、アテナイ市民ですらないので追放できないというジレンマにアテナイ市民が落ち込んだせいらしい。


まあしばらくは安泰であろう。


「なるべく早く戻ってくる。」


「お待ち申し上げています。」


いくらエルピニケがかわいらしくても、レイチェルを元に戻すことは自分の誇りに関することだ。

一瞬で気分を切り替えると、旅の準備のため書類を書き始めた。

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