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マラトンの戦い

いよいよアーシアの戦記開始です。

アーシアの改革に比べるとラブコメが少なくなりがちなので注意しますb

一人でも多くの人が読んでくれると嬉しいな。

マラトンの地は緩やかな平原が連なり、騎兵の運用に適した地形が広がる。

ペルシア軍がこの地に2万の兵を上陸させたのはBC490年4月7日、まさにラオニサス祭開催前日であった。

スパルタで行われるラオニソス祭は、アポロとアルテミスにささげられた祭りで、この祭りの5日間は一切の戦闘が禁じられる。

ラケダイモンの特権であるヘイロイタイへの攻撃すら禁じられるほどである。


このためスパルタの兵士は、ペルシア軍に対し初動で後れを取り、祭りの終了後に全力で移動することになる。

今、マラトンの地のヘレネス軍はアテナイ兵9000、プラタイア兵600、ラムヌース兵400の計1万名となっていた。


海岸近くに、前衛は盾を構えた重歩兵、その後ろに弓兵、両サイドは騎兵が配置されたペルシアの諸兵連合が重々しく陣を構えていた。


対するヘレネス連合軍は1.5kmほど内陸に横に陣を構えた。重装歩兵のみといってよい。


「騎兵の数は1000か、何とか行けるな。」

今回先陣を切るのは軍勢、唯一の騎兵サルピズマの40騎である。

アーシアの表情に厳しさは残るものの、予想した通りの陣構えに安堵の声をもらした。


マラトンのペルシア軍の兵士は船で輸送されてきていた。その数600隻。

当初はアテナイ海軍50隻とスパルタ海軍12隻が主力になって上陸阻止のため戦っていたのだが、スパルタ海軍の船2隻が櫂を折られ、港に修理に戻る隙にペルシア海軍が上陸に成功した。


そしてお互いに陣を張り3日が過ぎていた。

アテナイの10人の将軍の意見は攻守半々に割れ、軍司令官ボレマルコスのカリマコスの意見で進退が決まる状態になっていた。


攻撃側の急先鋒はミルティアデスであった。

彼はアテナイに戻っての防衛戦は内部分裂によりうまくいかないと考えていた。

このためカリマコスを説得し、攻撃に同意させた。

アーシアも神託を行い、援護射撃を行っていた。


そして今日、天気は曇り、風は陸から海へと向かって吹いていた。


「今日の担当はミルティアデスか。天祐だな。」

「ご主人さま、先陣はお任せください。」

きらびやかな彼女専用のクロースアーマーを身にまとったコリーダが声をかけてくる。


「殿、右翼はお任せします。」

左翼の先陣になったサンチョが中華風の胡服に胸甲をつけ、持ち場の左翼プラタイア軍の横に向かう。


アーシアはテーセウスの盾、に黄金の兜と脛当を身に着け、サルピズマ10名と一緒に右翼のアテナイ軍最前列にいた。


「全軍前進!」


ミルティアデスの声が鳴り響く。

ヘレネスたちは並足で隊列を維持したまま敵陣に近づいていく。


残り2スタディオン(約400m)になったとき両翼から騎兵が飛び出す。


「サルピズマ吶喊!」


20騎づつ左右に分かれた騎兵の向かう先は、敵の騎兵だ。

彼らは敵の直前でUターンしながら、手に提げていた小天雷を放り投げた。

20発の小天雷が轟音を上げる。


「抜刀、突入!」


試作の小天雷の殺傷能力は低いが、音を聞きなれていない敵の馬はパニックになる。

そこに長武器を構えたサルピズマが突入した。

たちまち悲鳴と絶叫が響き渡る。

時々バババと破裂音がするのはサルピズマが追加で投げた爆竹だろう。

音におびえた敵の馬はすでに逃走しかかっている。


・・・あと1スタディオン(200m)

「ラムヌース吶喊!」


右手にピュトンの旗を掲げ、大声をあげるアーシアにラムヌースの歩兵が続く。

その数410人、10人のサルピズマを指揮官とし、元ヘイロイタイの部下を各々40名つけた特殊任務隊だ。それぞれが矢を受けとめるための木の枝の束を前方に構えている。

敵の弓の射程に入るとたちまち木の枝に矢が突き立ち始める。


「アテナイ突撃!」

「プラタイア突撃!」


やや遅れて主力も突撃をかける。

オリンピア祭で導入された武装競争の人気も手伝って、ヘレネスにとっては完全武装の全速力は手慣れたものだ。


敵陣まであと100m、ラムヌース兵は矢を避けるために持っていた枝束に、火をつけ前にほうり投げる。

煙硝と硫黄が適度にまぶされた枝束は、たちまちのうちに白煙を生み出し、敵を覆い隠す。


視界をふさがれた敵兵は慌てて前に出たり、下がったり、混乱しているのが目に浮かぶ。


特殊部隊を追い抜き、煙幕の中にヘレネスの主力が突入していく。


そのあと30分、煙幕の外に出てくる敵をせん滅しながら、アーシアは待ち続けた。


煙幕はどんどん薄れていく。

その中、ペルシアの太鼓の音が鳴り響く。


「殿、敵軍退却、開始しました。」

「よし!、カッターに急ぐ。続け!」


俺たちの本番はこれからである。

ペルシア海軍はこのあとスニヨン岬を回ってピレウス港に向かうはず、現有の船で可能な限り足止めしなくてはならない。


「聞け、ヘイロイタイ。この戦いが終われば君たちはラムヌースの市民だ!乾坤一擲の戦いを希望する!」


=ドォーー=


地響きのような返答が帰ってくる。


ラムヌースの一団はカッター20隻で沖に急ぐ。


そこで待っていたのはカッター搭載型に改修されたイオニアとアカイア号の2隻を主力としたスパルタ海軍だった。


アーシアは迷わず旗艦アカイア号に乗り込んだ。


「おかえりなさい。父上、いえ軍司令官ボレマルク

「何隻まわした。キモン?」

「2層櫂船を5隻です。資金は十分に持たせました。レイチェル、ピュロス、パンドラ姉さん達が指揮を執っています。」

キモンに聞いているのはアイギナ島にとらわれている、エトルリア人の奴隷を買い戻す話である。

ペルシア海軍は奴隷を回収後、ピレウスに向かって進軍する。

奴隷の価格交渉で1時間でも長く引き留めるのが目的であった。


「残りは5隻か、いけるか?」

「いいえ6隻です。陸が見えた地点でアイギナ号はすべての櫓をエウボイア号に渡してボートに曳航させました。エウボイア号は戦列に復帰しています。」


キモンのこういうセンスはすごいと思う。

まだ16才なので将来が楽しみである。


「6隻あれば2日は稼げます。急ぎましょう。」


船首から一定のリズムで太鼓の音が鳴り響く。

その音に合わせてヘイロイタイは櫂を操る。


「手入れしたてだから6ノットは出そうですね。」

ハンドログ(ロープ式速度計)を使いつつ、機嫌よさそな声でキモンが話しかけてきた。


いつも陽気なキモン。

これが絶望的な嵐や戦闘の中でも維持できるので、船員達の信頼はとてもあつい。


アーシアは一つうなずくと、てでメガホンを作り叫んだ。

「櫓の射手は敵を見つけ次第、火矢を放て。ダメージは出なくてもいい。消火に時間をかけさせろ。甲板や策具には水をかけておけ!」

「マリスタ キーリエ!(YES SIR)」


小気味よい返事が返ってくる。


コリーダがピュトン旗を手におれの左後ろの定位置に立った。


ペルシア戦争、第1回戦マラトンの戦いはこっちがもらう!


特殊技能は・・・前回から引き継いでるんですが・・・書かなくてもいいかなという気もするので、ちょっと様子見です。

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