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この森と人

作者: 夕月法師

 ある所に、森があった。人が踏み入れることを拒むように崖に囲まれ、激しい波に守られた孤島、そこに支配者の如く生い茂った木々の群。それらはまるで神様のようにそこにいた。ここは人が入ってはいけない聖域だった。



 いつからだろうか、ひとつの噂が流れた。

「あの孤島にある森。そこには一生遊べるほどの財宝があるらしい」

 人々は、その財宝を求めてその森にやってきた。だが、その森の中で財宝が見つかることはなかった。人々はがっくりと肩を落とし、それぞれ帰っていった。前と何も変わらない森。静かで美しい森。だが、誰も気付かないところでこの森は変わりつつあった。


 かなりの時間が経った時、再びある噂が流れた。

「あの孤島にある森。そこには美しい泉があって、その水を飲むと不老不死になるらしい」

 人々は、その泉を求めてその森にやってきた。だが、その森の中に泉が見つかることはなかった。人々は無駄な努力に怒り、帰っていった。人が失せた。その人が通った場所で可笑しな現象が起きていることに、人間は気付かない。


 時間が経った。また、噂が流れる。

「あの孤島にある森。そこには不思議な石があって、それはどんな願いも叶えるらしい」

 人々は、その石を求めて、森にやってきた。だが、その森の中に泉が見つかることはなかった。人々は崩れ落ち泣いた。戦争が広まる世界、勝利を欲しがる暴君である主君に見つからなかったことが知れたら殺されることは必然。殺される覚悟で、人々帰っていく。人々が侵した美しい森を、誰も振り返ることはない。


 人々が普通に船を活用し、世界に足を伸ばす用になる。そして、ある噂が流れた。

「あの孤島にある森。そこには太く強い木が生えていて、それがすごい金になるらしい」

 王は命じた。「その木を全て持ってこい」

 王の命令により、船団が送られた。それを指揮する男は、孤島を見て愕然とする。美しい森があると聞いていたその孤島には、腐れきった大地しかなかったのだ。冷静に見ても、そこは荒れきって、二度と植物の生えることの無い腐れ土が広がるのみ。そこに目的の木は、ない。


 森は死んだ。それは長きに渡って聖域に人間によって滅ぼされた。孤島の木々は、最初の侵入から腐りつつあったのだ。

噂によって群がった人々。彼らが歩いた近くの木は、その後消毒をしなかった深い傷のように腐り、若い木から数万年生きた木まで破滅させた。欲望によって集まった人が侵す。また、木が腐り、崩れる。そこの土は、それこそ人間の死骸の様に死臭を放ち、そこには二度と木は生えない。

 それが何度も繰り返され、遂に森は消えた。人間が欲によって動いたがために消える森、そこにはもう何も無い。






屋久島を題材に考えました。奇跡の環境でつくられた聖なる森。しかし、人間の訪れで島は半分以上木々をなくし、その島にも人が住む。森が人だったら侵略ですよね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 環境問題を上手くかけていると思います。 ぞっとするお話ですよね。 人間ってつくづく自分勝手な生き物だと思います
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