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後悔


「勝木じゃないか。やっぱり、そうだ。俺のこと覚えてるかな?」

懐かしい声のほうへ目をやると高校時代の同級生、能瀬友治が立っていた。三年間一度も同じクラスになることはなかったが、覚えていないはずがない。

「能瀬君だ。うわ、懐かしい。」

180センチ近い高身長、すらりとした長い手足。濃紺のスーツに身を包みあの頃と変わらないさわやかな笑顔を向けている彼に近づくとほんのりアルコールの匂いがする。

「会社の飲み会でさ、久しぶりに飲みすぎちゃったよ。」

見透かすように友治はそう言った。

「奇遇だね。私も同僚と一杯飲んで今帰りなの。明日も仕事だから、飲み足りない気持ちを抑えて解散。」

そう言って少しオーバーなぐらい不服そうな顔をして見せた。これではまるで誘って欲しいと言っている様なものだ。一瞬湧いた羞恥心をかき消す様に心底に眠る欲求がちらりと顔を覗かせ美和子の脳を支配しようとしていた。

友治は初恋の相手だった。ここで別れればもう会うこともなく、美和子の中で友治は思い出のままで終わってしまうのだろう。それは嫌。脳がささやく。美和子は友治の顔をじっと見つめていた。短い沈黙の後、

「一軒行こうか。」

友治の言葉に安堵し、期待を込めてうなずいた。



神様がいるのならあの日、あの場所に戻して…。

そして全て無かったことにしたい。人は何故後悔をするまで、人生の選択ミスに気づかないのか。繰り返される過ちの中で何度となく学んできたつもりなのに。子供とは呼べない年齢である事も重々承知している。友治の左手の薬指に堂々と存在している銀色の指輪を見て見ぬふりをして踏み込んではいけない地への境界線を越えれば、きっと断ち切れないだろう。しかし、このとき目の前に現れた初恋の男はとても魅力的だったのだ。

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