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指輪

1ー1 ( 指輪 )





九月末の深夜、暑苦しさと喉の渇きで、目が覚めた私。

横から感じる仄かな温もりに目をやると、夫の崇生が静かな寝息を立てていた。

この、仄かに感じる温もりが、いつも私をホッとさせていた。



私は、神経質な夫を起こさない様に物音を立てず、そっと寝室を出て、キッチンへと向かう。



キッチンに着くと、すぐに冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、渇いた身体を潤す為、ゴクゴクと気持ちいいくらいに音を立てて飲んだ。


砂漠の様に渇いた身体の中に、小さな川が出来て、熱を持った砂を徐々に冷やしていく様な感覚だった。

「あ〜、生き返るぅ〜」

間の抜けた声がキッチンに響き渡り、なんだか、笑ってしまった。



キッチンからリビングへ移り、お気に入りの三人掛けの真っ赤なソファーへ深く腰を下ろし、重たいため息を吐く。



目の前に掌を翳すと、左薬指では銀色の指輪が光っていた。

指輪をなぞってみても、はめたばかりの頃と何ら変わらず、私の指の上でキラキラと輝いていた。


この指輪と同じものが、崇生の左薬指にもはまっている。

崇生は、この指輪をどう思って着けているのだろうか。そして、いつ、何処で外しているのだろうか?

私には理解出来なかった。



三年前の秋ーー

私達はこの銀色の指輪を神聖なる教会で、家族、友人、職場の方達の前で祝福されながら交換し合い、互いの指にはめ合った。



そう晴れて夫婦となった。


あの日、夫に指輪をはめて貰った瞬間の喜びは今でも鮮明に覚えている。

暫くは、指輪をはめ続ける生活に慣れずに、むず痒い様な違和感があったけれど、一年も経てばすっかり慣れ、今では指輪をはめている事を忘れそうになる。



私と夫を結び付ける指輪。互いに縛り合う事を進んで誓い合った証の指輪……

今は、互いを縛り、苦しめるだけの『モノ』となってしまったけど。



崇生は、国内の自動車メーカーのSEシステムエンジニアとして働いていて、残業もたまにあり、出張もある。

ひどい時には会社で徹夜などもある。

新しく車を作るとなれば、自宅にも仕事を持ち帰る始末。

自宅で仕事をはじめたら最期とも言おうか。何を言っても、アクションを起こしても無反応で、ただひたすらに仕事仕事。


ただ、唯一、崇生の良い所は仕事に妥協はしない所だった。


『仕事が、好きなんだ。新しい車が出来ると、自分の子供みたいに思えて。大変だけど、やり甲斐があって、甘えは許されないけど、頑張った結果が形になるのは、俺にとっての最高の幸せなんだ。毎日、仕事仕事なのに、家でも仕事って、嫌かもしれない……。でも、俺は、君も、仕事も好きなんだ』


そんな事を、付き合いたての頃に崇生が言っていた。

昔は、仕事に対してストイックな崇生が素敵に見えたし、誇らしくも思えた。

今も、仕事を頑張る姿は頼もしく思っている。



だが、今は状況は一変した。

信じて、愛し合って、共に支え合える夫婦として一緒に生きていく事を誓い合ったのに、夫は私を裏切り、今年の二月から浮気をしている。






夫婦の再生と家族愛を書いていく予定です。初心者なので、温かく見守って頂けると幸いです。

ゆっくりと、大事に書いていこうと思います!

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