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裏切り

作者: しの

マフィアをテーマにストーリーの一部として書いてたら、この文章中にマフィアとわかる表記がさっぱりないことに気付き、ここで言い訳。

補足するなら、主人公はイタリアマフィアのボス、李桂は主人公と協力関係にある中国マフィアの幹部。

他にも諸々設定作ってました。



 武器は持った。

 今日、周りに固めている部下は全員信頼出来る者たちだけ。

 この中に裏切り者はいないはずだ。そうでなければ困る。

 ここにいる部下たちを省けば、俺には味方がいないことになってしまうのだから。

 さて、準備は整った。そろそろヤツの元に向かうか。

 この俺を、この組織を裏切った相手。

 自らの正体を明かそう、とわざわざ呼び出し状を送り付けてきやがった。

 罠でない筈がない。だが、無視をしようにも代償は大きすぎた。

 ――『指定時刻までに一人で来なければ、シマのひとつを爆発地獄に陥れよう』

 実際、とある一角から爆弾は大量に発見された。

 それらを全て発見・回収するには、時間は足りなさ過ぎた。

 なら、俺自らが赴くしか道は残されていないのだろう。

 この際、罠だろうが形振りは構っていられない。

 組織のモノに手を出されるのだけは我慢がならん。




 ―― ピリリリ


「ボス、電話です」

「誰だ」

「李桂様です」

「寄越せ」

「はっ」

 このタイミングで一体何の用件なんだ。

 今日、裏切り者の相手に向かうことは伝えてある。

 もしかして、その件で何か情報が得られたのだろうか。

 電話を受け取ると、部下の開けたドアから車の座席シートに乗り込んだ。

 車が発進するのと同じタイミングで、電話の向こうに声を返す。

「俺だ、李桂」

『あぁ、アルフィオ。良かったです。まだちゃんと電話に出られる状態だったんですねぇ』

「これから向かうところだったからな。それで、今は一体何の用だ?」

『いえね。実はひとつ不穏な内緒話を、ウチの部下が小耳に挟んだみたいでしてねぇ』

「不穏? そんなのは日常茶飯事だろう」

『まぁ、そうとは言えますけどねぇ。でもその日常茶飯事は、貴方のその日本刀ひとつで切り抜けられるようなものだったでしょう?』

「むしろコイツで切り抜けられない問題なんてあるのか? コイツは最強の刀なんだぞ」

『……ふ、ふふふ。それを本気で言っているのだから、あなたを敵に回すのは恐ろしいんですよねぇ』

「それより、いいからさっさと用件言ってくれないか? 今は無駄話をしている余裕はないんだが」

『それは失礼を。実はですねぇ、その内緒話の内容っていうのはどう考えても貴方の刀だけでは切り抜けられないようなものでしてねぇ』

「だから、コイツで出来ないことなんて……いや、いい。さっさとその内容とやらを教えろ」

『ふむ……』

「なんだ、早く言わないのか」

『いえねぇ。そんな風に急かされると、どうしても焦らしてみたくなるのが人情と言うものでして』

「……切るぞ」

『ああ、そんな……もう少しくらい付き合ってくださってもいいのに』

「こっちは時間がないと何度も言っているんだ。お前のお遊びにいつまでも付き合っていられるか」

『しょうがないですねぇ。手遅れになっては私も困りますし。そうそう、貴方、今日は待ち合わせ場所への移動手段はどうする予定でしたか?』

「移動手段? いつも通り車だが」

『それって……もう乗っていたりします?』

「当たり前だろう、そうぐずぐずしていられな……おい、まさか」

『そのまさかですよ。今ハンドルを握っているのは……ちゃんと貴方が指定した人物なのでしょうか』

 外を流し見ていた視線を、ちらりと運転席へと向ける。

 運転席とを隔てる防護ガラス越しに見える顔は……ビンゴだ。

 おそらく俺が指定した人物は、入れ替わる際に何らかの形で動けなくさせられたのだろう。

 自分の詰めの甘さに、舌打ちしたい気分になった。

「ありがとう、これから脱出する。出来れば、もっと早く言って欲しかったんだがな」

『どういたしまして。その車、大量に爆弾が積まれていますからねぇ、扱いには気をつけてくださいねぇ』

「それもさっさと言え!」

『健闘を祈りますよ』

「……」

 

 ―― ブチッ

 

 なんだか憎たらしく感じて、乱暴に携帯の電源を切る。

 さて、どうしたものか。

 爆弾が積まれた車とのこと、出来れば穏便に事を済ませたいのだが……

「……」

 コンコン、と防護ガラスを叩き、運転手の気を引いてみる。

「おい」

「……」

 もう一度、今度は強めに叩いてみる。

「おい!」

「……」

 これは、どうやら完全に無視を決め込む態勢らしい。

 仕方ない、走行中の車から飛び降りるのにどれだけの負担がかかるかはわからないが。

 とりあえずドアを開けようと、ノブを引いてみる。

 当然ながら、鍵が掛かっている。

 鍵を外してみる。

「……外れない、な」

 完全に閉じ込められたようだ。

 だが、これで勝ったつもりにはなるな。

 何せ、俺には――


 刀を鞘から抜き出す。

 多少刃こぼれするだろうが、背に腹は変えられない。

 ちらりと横目に、運転手の驚愕する表情を捉えながら。

 俺は、最強の相棒を車のドアへと振り下ろした――


 

 


 ――ドォン!



 ――派手な爆発音があがる。

「ほらな。やっぱりコイツで切り抜けられない問題なんてないだろ」

 愛しい者に愛撫するように、柔い力で撫でるように刀身に触れる。

 どうやら李桂の言う通り、車には爆弾が積まれていたらしい。

 それも致死量。運転手自身は、それを知っていたのだろうか。

 かつてのボスと、心中させられるということは。

 考えても無駄か。元々、裏切り者に制裁を下すのは俺の仕事でもあった。

 その仕事のひとつが、消えただけなのだから。

「さて、これからどうやって待ち合わせに行くべきか」

 走っていくには時間が足りなさ過ぎる。

 格好は付かないが、公共機関――関係ない一般人を大量に巻き込む事態が起こらないとも言えないな。

 巻き込むなら、最小限に。

 運が悪かったと、諦めて貰うしかない。

 無事に待ち合わせ場所に行けたなら、その分チップを弾ませてあげればいいか。

 客引きの悪さに同情しながら、俺は通りがかったタクシーを止めたのだった。



女性向け(BLじゃない)で中国マフィアがメインヒーローになる小説あるいは漫画、あるいはゲームがあったら是非とも紹介してください。中国マフィアもの好きなのに、供給が少なさ過ぎて飢餓感に苦しんでます。


……自分で書いても萌えないっす。


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