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亭主様と恋の種  作者: まるあ
第一章 種は勘違いの末に
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お話しをましょうっ! 3

お気に入り登録ありがとうございますっ!!

いつの間にか330件超えていて、感激してますっ(>_<)

  

 ――― お話をしましょうっ!

 

 慌てながらそう言って、何とかヴェルさんから、淫靡な雰囲気を払う事が出来ました。そして「会話するのなら何か軽食を」と言い、お茶会でも開けそうな程の量の食べ物を用意してくださいました。



 正直、倒れそうなほど空腹だったので助かりました。

 今日一日が訳も分からなく過ぎていき、食事も食べた記憶が無かったですから……。

 私の腹時計が、小さい音でですが食事の時間が過ぎ去っているとずっと伝えてくれていました。

 おいしそうなお菓子の香りに、喉がゴクリと音を立てます。



 湯気がくすぶるカップと焼き菓子や果物が盛られた籠が置かれたテーブルの向かいには、ソファに座るヴェルさんが笑顔を浮かべています。

 勝手に手を伸ばしていいいのか遠慮していると、ヴェルさんが籠の中から白く、ふわふわしたケーキの様なパンの様な、丸い形状の物をお皿に取ってくれました。


 「さあ、食べて? ずっとお腹が空いてたんだよね? 今さっきまで気付かなかったよ、悪い事をしたね」



 お皿の上に乗る丸い物をそっと掴み、口に入れました。

 

 小麦の匂いが高く、甘く、柔らかく、口の中で噛みしめるとホロリと崩れ溶けだします。

 空腹の為か、その食べのもがこの世の物とは思えない程おいしく感じました。

 今まで、お父さんの作る豪快な料理しか口にしてこなかった私には、とても衝撃的な食べ物に思えます。


 「そんなに美味しい? とても幸せそうな顔をしてる」

 「――― えっ? 」


 そんなに表情に出ていたのでしょうか。

 机に頬杖をついたヴェルさんが、首をかしげながらじっと私を見つめています。

 何だか恥ずかしくて、頬が熱くなってきました。

 でも、本当においしかったので、肯定の意味をこめて笑顔で首を縦に振りました。



 「父以外の人の作ったものは初めて食べたのですが、―――とっても美味しいですっ! この世の物とは思ない程にっ!! 」


 やや興奮気味に声をあげてしまったのは、言葉では伝えきれない程美味しかったのだと、そう伝えたかったからです。

 きちんとヴェルさんに伝わったようで、彼もほんのり頬を赤くしながら、頷きました。



 「気に入って貰えて良かった。 ソレ、俺が作ったんだ」



 思ってもいない言葉が聞こえてきて、かなり驚きましたっ!

 あまりの驚きで、喉に食べ物が詰まってしまい、慌ててお茶で流し込んでしまいました。

 ……勿体ない。もう少し味わいたかったです。


 やっぱり『うさぎ亭』の亭主様ともなると、こんなに上品な食べ物を作りだす事が出来るのですね!

 私の大雑把料理とは大違いですっ!!

 


 「―――凄いですっ! さすがは亭主様ですねっ!! 今度ぜひとも教えてください!! 」  

 「凄いかどうかは判らないけど……。近いうちに、一緒に作ろう」

 「はいっ!! 」


 

 私は上機嫌でカップを手に取り、茶葉の香りを堪能しながら、会話が途切れたのをチャンスとばかりに、アノ事を聞こうと思い姿勢を正し口を開きました。


 ―――そう、どうして私がヴェルさんと結婚する事になったのかと。

 お見合いをしたわけでもなく、元々婚約者だったとかでもない。

 彼は家の食堂の常連さんで、私は「おはよう」などの、日常的な短い会話しかした事が無かったのに……。

 


 「あのっ。 ……式場でも聞いたのですが、どうして私と結婚する事になったのでしょうか? 」



 私の言葉を聞いたヴェルさんは、ほんのり赤くなった頬を更に紅潮させ、頬杖を付いていた手を口元に持っていきました。



 その時の光景を思い出しているのか、もの凄い照れ様です。

 見ている私が恥ずかしくなる程に……。

 私って、そんなに恥ずかしくなる程の事をヴェルさんにしたのでしょうか?

 彼には申し訳ないですが、全く記憶が無いです。

 ……お酒に酔っ払ってたのでしょうか?



 ―――いえいえっ!!

 私は、お酒を飲んでも呑まれた事が無いほどの酒豪ですっ!!

 それとも、ヴェルさんと飲み比べをして、記憶が飛ぶほど呑まれたという事でしょうか?!

 その時に私が、ヴェルさんがここまで恥ずかしがるような事をしてしまっていたと言う事なんでしょうかっ??

 いつの間にか私は、ヴェルさんに捧げてしまっていたのでしょうか―――?

 もしかして、その事を彼は気にして私と結婚をする事にしたのでしょうか?



 真っ赤になったヴェルさんは、淹れてから時間が経ちすぎ、冷えきったお茶を一気に飲むと、私を見て話しました。


 「ココット嬢が好きで、君も好きだと言ってくれたから。 確かに告白して一週間で結婚は急過ぎるかなとは思ったけど、……働いている君に『結婚宣誓書』を出したら、サインをしてくれたから」


 赤い顔で、とても恥ずかしがっているヴェルさんですが、その瞳は真っ直ぐに私を見ていて、嘘を付いている風には見えません。 

 その瞳はとても真摯で、見られている私が恥ずかしくなるほど、私の事を想っていると伝えてきます。

 本気で私の事が好きで、私と結婚して嬉しいと言う事が痛いほど伝わってきます。

 きっとヴェルさんはその時の事を思い出して、胸を高鳴らせているのでしょう。




 でも、私は別の意味で胸がドキドキしてきました……。



 ―――全く覚えていませんっ!!

 私がヴェルさんに告白した事も、『結婚宣誓書』だなんて大層な書類にサインをしてしまった事もっ!!


 これは、飲み比べで記憶が飛んじゃった説が有力ですね!!

 有力というか、確定じゃないですかっ!?



 仕事中にお酒の飲み比べをして、その挙句に後戻りできないこんな状況に誰かを巻き込んでしまうなんて……。

 ……ヴェルさんに、アレコレと人様に言えない事をしてしまったかもしれないだなんてっ!!



 まったり寛いでいる場合じゃないですねっ!!

 早くヴェルさんにお詫びしなくてはっ!!

  


 私はソファの下に、座りなおし、お父さん直伝の『最上級の謝罪方法』を実行しようと決めました。

 お父さんが近所のオジサンたちと飲みに出かけて朝方に帰ってきた時に、玄関先でお母さんに向けて行っている行為ですので、見た事は有ります。

 もちろん、今までそんな人様に迷惑をかける様な事をしてきた覚えが無い私は初実行ですっ!!

 

 

 床に膝を曲げてふくらはぎを大腿の下になるように背筋を伸ばして座り、ヴェルさんを真っ直ぐに見た後で、両手の指を真っ直ぐに床に向けてつき、頭を床につくギリギリまで下げました。

 ヴェルさんは私の行動に慌てていましたが、一連の動作は綺麗に決まったと思います。


 そして、ここからが謝罪の本番です。


 相手に許してもらえるように、相手が納得するように言葉を選びます。

 ですが、私は選ぶ言葉は有りません。言わなければいけない言葉は一つだけですっ!!




 「すみませんでしたっ!! 全く覚えていないんですっ!! ……でも、いつか私も―――……っ」



 床に頭を擦りつける勢いで、「でも」の続きである一番大切な言葉を口から出す前に、ドサリと重たいものが勢いよく落ちたような、重量感のある音が部屋に響きました。



 「…………あの? 」



 不審に思い音の方を見ると、ヴェルさんが椅子に(もた)れかかるように倒れていました―――。

 




 





 

 



 

 



 

 

 


 

 

 


  



 

 


  

 

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!!


やっと真相明かし編突入ですねっ☆


途中でココットの酒豪説が出たので、各キャラの年齢を……。


ココット→20歳

リウヴェル→28歳


二人とも意外に大人だったのですよ^_^;


次回は、再び亭主様のターンです(^_^)

やっと皆さまに二人の思い違いの原因(?)を出せます。

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