表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
亭主様と恋の種  作者: まるあ
第一章 種は勘違いの末に
7/58

お話をしましょうっ! 2

毎日たくさんの方に見ていただいて嬉しいです!!



 ゆらりゆらり、と揺れながら女の子憧れの『お姫様抱っこ』でたどり着いたのは、巨大な寝台が部屋の中央に鎮座する部屋でした。

 ヴェルさんは私を寝台の上に座らせると、靴を脱がせ始めました。


 ……こ、この状況は一体っ?!


 ただ話をしようと言っただけなのに、なぜ寝室にっ?

 ここで話をしましょうと言う事でしょうか?!

 会話するのに寝台に座り、靴を脱ぐ必要があるのでしょうか??



 ――― いやいや、無いですねっ!!



 「あっ、あのっ!! 寝台じゃなくても、あっちのソファで結構ですっ!! 」

 


 私の靴を脱がせる為に屈んでいるヴェルさんの頭を押しながら、半ば叫びながら声をかけると「なぜ?」という表情をして、私の顔を覗いてきました。


 

 未だに靴を脱がせている手を止めない彼が、上目遣いで見上げてきます。

 何だか私の好きなモフモフの子犬の様で、つい「脱がせてもいいですよ」と言ってしまいそうになりました。


 ……でも、()は言ってはいけない言葉の様な気もします。


 

 ですが、必死に靴を脱がせに掛かっているヴェルさんを見ると、「もしかしたら靴を脱いで家に入る流儀かも?」とも思えてきます。

 それぞれのお宅には、それぞれの流儀があると思います。

 我が家にも ”家に入る時は、家中に響き渡る声で帰宅を告げる事っ!” という流儀がありますし……。



 きっと、そうですねっ!

 ヴェルさんの必死さから推測するに、そうに違いありませんっ!!

 靴を脱いで家に上がる事が、このホルスタイン家の流儀と言う事で納得しておきましょう。

 ……必死になって、編みこまれた靴紐を解いているのも、着脱しにくい靴だと思って手伝ってくれているのですねっ!

 

 ――― なんて善い人なんでしょうかっ!!



 ですが、初めて訪問したお宅で、ソファがあるのに寝台を椅子代わりにするのは何だか無作法の様な気がします。

 砂が寝台の上に落ちたら、衛生的にも良くないですし……。

 就寝する時に砂でザラザラした寝台では、気持ちよく眠る事が出来ないでしょうし……。

 何より、男の人に靴を脱がせてもらうなんてっ……!



 「あのっ! じ、自分で脱げるので……。 それに汚れては申し訳ないし、やっぱりソファがいいですっ!! ―――ソファで、じっくりとお話をしませんかっ? 」


 私の言葉に同意してくれたのか靴紐を緩める指が止まり、何故か既視感のある背中がゾクリとする笑みを浮かべました。



 「――― 俺は汚れなんて気にしないけど? でも、ココット嬢がソファがいいと言うのなら……」



 再び『お姫様抱っこ』で、目と鼻の先にあるソファを目指すヴェルさんの顔は、とても嬉しそうで、何も言えなくなってしまいました。



 ―――言えるなら「抱っこする必要があるのですか?」と聞きたいですっ!



 目と鼻の先にあるソファに、私を抱っこしたままゆっくりと座るヴェルさん。 

 ……座ったのですよ?

 私を抱っこしたまま(・・・・・・・・・)

 しかもっ!

 至極嬉しそうに笑っています。




 「さあ、脱いで? 」





 何やら私の思っている事と違う事を、ヴェルさんが考えているのだと判ったのは、彼が私の首筋に口を付け、チリッとする痛みに顔を顰めた私に向かい、淫靡だと思える笑みを浮かべている表情からでした。

 頬と頬がくっ付くほど近くにある、ヴェルさんの瞳に甘い色が宿りつつ、肉食獣の様なソレが、私の身の危険を伝えてくれました。



 顔に熱が集中するのが判り、心臓が早く鼓動を刻みだし、瞬間沸騰機で血液を熱したかの様に、私の体温がみるみる上がっていきます。

 さすがに空気を読むのが苦手で、鈍感と周囲から言われている私でも判りました。



 ヴェルさんが、ナニをしようとしているのか……!!


 やっぱり先ほどの ”善い人” は撤回しようと思いますっ!!

 間違いでしたっ!!!



 

 「―――ぬ、ぬぬぬっ、脱げませんっ!! 脱ぐのは靴だけで結構ですぅぅっっ!!!! 」




 子供の頃から、駆けっこでいつも最後にゴールテープを切る私ですが、この時ばかりは火事場の馬鹿瞬発力でソファの前にある机を飛び越え、反対側にあるソファの裏に何とか逃げる事が出来ました。

 今のが公式競技の最中だったら、○リンピッ○選手仰天の成績が出た事間違いないでしょう。


 

 「――― え? 」



 驚いた表情でこちらに来ようとするヴェルさんを見ながら、ソファを私と彼との間の防波堤の代わりにし両手を前に突き出しながら必死に「違うっ!!」とアピールします。




 「靴っ! 靴はこの家の流儀に従って脱ぎますが、私は、お話がしたいだけなんですっっ!!! 」

 「―――くつ……? 」



 ヴェルさんが短く呟いた後、瞬き数回程の短い時間ですが、彼と私の間の空間が凍りついた様な感じがしました。


 ……怒っているんでしょうかっ?!



 何も言わずに放心しているヴェルさんを前に、先程目にした彼の淫靡な表情で早鐘を打ち始めた心臓が、皮膚を突き破りそうなほど強く鼓動を刻んでいます。

 


 ――― まるで、衆人観衆の前で歌を披露しろと言われているような緊張感です。



 やがて空気が解凍され、時間が流れ始めた室内にヴェルさんの声が響きました。



 「―――そうだね。 今日はまだ、ココット嬢と話をしてないね? 何だか()いてしまって、大人げない……」  




 


 


 

 



 

  

 


 

 


 


 

 


 

さて、今回のココットの言動……、言葉だけ見ると非常にヤバい感じですね^_^;

どこがどうヤバいのかは、大人な方には判る……のかな?


そろそろ真相明かし編開幕といきたい所ですが、なかなか進みませんね。

スミマセンッ(>_<)



さてさて、今回も作者突っ走りの小話です。

筋肉満載ですが、読んでみようという寛容なお方は是非どうぞっ!!



↓↓↓↓



 『筋肉親父の教訓と亭主様。』


 

 俺の愛するココット嬢の父が、今俺の前で滂沱の涙を流しながら『結婚宣誓書』の親の欄にサインをしている。



 「……ぐぬぅぅぅ……っ!! なぜだっ! いつの間にこんな軟弱野郎と……!! ココットォ~~!! 」



 軟弱野郎と言われるのは好きではないが、この筋肉親父だけは許せると思う。

 

 この親父の教訓は―――、


 一に筋肉増強

 二に筋肉補強 

 三、四が筋肉錬成

 五に愛娘最高



 一から四までは見事に筋肉に関する事だ。ここまで来ると、脳筋(脳まで筋肉)だなと納得できる。

 脳筋なら、筋肉が見えない体系の人間が軟弱に見えるのはしょうがない。


 俺はどれだけ鍛錬をしても筋肉が付かない体質だ。

 マルスが『リウヴェルをマッチョにしてみよう計画』を破棄する程に、筋肉がつかなかった。



 ……この親父以外に「軟弱野郎」と言われたら、俺はきっとそのケンカを嬉々として買うだろう。

 

 何より、この親父を許す理由は、教訓五の『愛娘最高』だ。


 この教訓のお陰でココット嬢は、あんなに素直で無垢な女性になったのだ。


 鬱陶しい程娘想いで、邪魔な筋肉親父だが、今までココット嬢の虫よけを果たしていた事を考えると、感謝をしなければと思う。



 「―――感謝します」




 書類を破る勢いで握りしめている筋肉親父に、不意打ちで攻撃をしかけ、怯んだすきに書類を奪い取る。


 怒って赤い顔で店を放って追いかけてくる筋肉親父を撒きながら、書類を片手に急いで役所に走った。



 ……今日から、ココット=ホルスタインにするために。

 

 




 


 



 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ