お話をしましょうっ! 1
実はこのサブタイトル、作者の心の声だったりします^^;
ど、どうしたらよいのでしょうかっ?!
何だか亭主様―――いえ、ヴェルさんの顔がもの凄く近づいてきています。
ヴェルさんっ!
なぜ、目を閉じるのですかっ?!
周りの筋肉従業員さん達っ!!
なぜ、口笛を吹きながら向こうを向いたり、こっちを見たりしているんですかぁ!!
今まで男性とお付き合いをした事が無い私でも、何となくこの先に待ち受ける出来事は理解できます。
先ほどの挙式の時は、ソレが無くて安心したのですが、ヴェルさんから醸し出されるこの甘い雰囲気は、やっぱりソレをしようとしているのでしょうかっ?!
『キス』をっ!!
挙式を挙げ、夫婦となった二人がするのは当然の行為だと判っています。
私も、兄夫婦がくっ付いてキスをしているのを何度か見た事があります。
…… 覗いたのではありませんよっ? 偶然見えたのですっ!!
ヴェルさんの吐息が瞼をくすぐります。
同時に、瞼にそっと優しく彼の柔らかな唇が触れました。
甘い雰囲気が何やらこの場に流れ始めましたが、私の心中は嵐が吹き荒れています。
初めて訪れる異性との口づけに、私はどうしたら良いのか判りません。
胸が、とてもドキドキしています。
頭が真っ白になってきました……。
やはり、結婚したら―――…
―――んんっ? 結婚っ!!
そういえば、今この庶民が憧れる『うさぎ亭』に居るのは、ヴェルさんに「どうして私はあなたと結婚なんて事をしているのですか?」 と聞くためでしたっ!!
あまりに流されすぎて、記憶の片隅に追いやられていましたが、思い出して良かったですっ!!
ヴェルさんの顔を、すんでの所で手で覆い、待ったをかけました。
でも、皆さんの前で聞いても良い事なのでしょうか……?
―――いいえっ!! 答えはNOですねっ!!
祝福モード真っただ中の中で、そんな事を言う勇気は私は持ち合わせていないです。
いくら空気を読むのが苦手な私でも、それは判りますっ!!
自問自答し、ヴェルさんの顔を止めていた手を取り払い、別の場所へとやんわり促す事にしました。
「あの、……出来れば別の場所でゆっくりと、二人でお話ししたいのですが……? 」
そっと囁くようにヴェルさんにお願いし、彼の顔を覗きこみました。
そして、彼と目があった瞬間、何故か背中にぞわわっと何かが走りました。
何と言ったら良いのでしょうか……。
まるで、私のお父さんが食材を前に、調理法を考案しているかの様な瞳だったのです。
一つの塊肉をフライにするか、細切れにして炒め物にするか……。そんな風に考えているような瞳でした。
さすがに私は人間なので調理はされないと思うのですが、なぜそんな風に私を見ているのか判りません。
……やっぱり、不思議な人ですね?
顔を傾げる私を見下ろしながら、ヴェルさんは嬉しそうに、そして妖艶に微笑みました。
「―――そうですね。 ココット嬢がそう望むなら」
あまりに艶やかに微笑むヴェルさんに、私の顔が反応して熱をもっていくのが判ります。
男の方が綺麗に感じるなんて、思っていい事なのでしょうか。
お父さんに報告したら「女みてぇに笑うナヨッちいのは、男じゃねぇっ」と、包丁を振り回しそうで怖いです。
ヴェルさんに向け包丁を振り回しているお父さんを想像し、妖艶に微笑むヴェルさんを見上げると、胸がドキドキしてきました……。
高鳴る胸に戸惑いつつ、俯く私に向かい、ヴェルさんが不意に屈みました。
彼はその体勢のまま私の膝裏に手を差し込み、私の背中に腕を回すと、僅かな浮遊感と共に視界が高くなりました。
ええええええっっ?!
……こっ、コレは世に言う『お姫様抱っこ』じゃないですかっ!!!
巷の女の子が憧れている、いつかはして欲しいランキングの一つに入る事ですよっ!!
……私も女の子ですから、嬉しいかと聞かれれば嬉しいのですが、でもなぜっ?!
話をするのに運んで貰わなくても歩けますよっ?!
歩いて行きますからっ!
恥ずかしいから下してください~っ!!
驚く私をよそに、そのままの体勢で店の奥に進んでいくヴェルさんは実に楽しそうです。
まるで調理法を決定したお父さんが、嬉々として包丁をふるっているかのように……。
ココットは、調理されてしまうのでしょうかっ?!
読者様から何も言われないのを良い事に、好き勝手に書いている作者です(~_~;)
皆さま、きっと突っ込みたいコト満載ですよね……?
やんわりと突っ込み入れてくれると、作者として嬉しいです。