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亭主様と恋の種  作者: まるあ
第一章 種は勘違いの末に
5/58

亭主様は、常にプラス志向です。2

今回も読んでいただいて、感謝です!


リウヴェルのターン後半戦(?)です(>_<)

 今の心境を簡潔に言おう。



 ――― あ、り、え、な、いっ!! 

 ……あり得ないとしか言えないだろう。

 


 名前を名乗り忘れた挙句、プロポーズをするなんてあり得ない。

 あまりに恥ずかしすぎて、涙が出てきそうだ。

 俺の一生の恥になるに間違いない。 

 ……だが、過ぎてしまった事はしょうがない。



 とても恥ずかしいが、同時に理解した事がある。


 

 彼女は一度も、俺の名前を呼んでくれた事が無いのだ。

 食堂で彼女を口説いていた筋肉ダルマの名前は呼ぶのに、どうして俺の名は呼ばないのだろうと思っていた。



 だが、謎が解けた。



 知らなかったから呼べなかったのだ。

 もう少し早くにその事に気づいていれば、彼女にこんなバツの悪そうな顔をさせる事は無かった。

 もう少し早くにその事に気づいていれば、彼女の口から俺の名を呼んでもらえていたのに。


 ……ああ、勿体ない事をした。


 俺はマルスに頭を玩ばれながら、先ほどから筋肉親父直伝のジュースがどうのと言って百面相している彼女に、これからの未来、俺の名前を呼んでもらえる期待をこめて、自分の名を音にした。



 「……………リウヴェル。 リウヴェル=ホルスタインです」



 俺の名を聞いた彼女は、何やら乳牛とか言いながら、ブツブツ言い始め、最後には何だか納得した様子でこちらを向き、俺を虜にしたその笑顔と手を俺に向けた。



 「私はココットですっ! 」



 その手に魅せられ、吸い寄せられた俺は、彼女の手の平に口づけた。

 親愛や敬愛の挨拶は、手の甲にする。

 しかし、


 ―――どうか、これから一生、俺にその笑顔を向けていてくれ。


 懇願に近い想いで、彼女の手の平に己の唇を落とした。

 手の平から視線を彼女の顔へと移すと、何故かとても赤くなって、俺の手が触れていない方の手で胸元を押さえている。


 彼女の愛らしい双眸が驚きに見開き、俺だけを見ている事に喜びを隠せない。

 俺は、口から飛び出てきそうな程高鳴っている心臓を感じながらも、平静を装いながら、彼女の口から紡がれる声を聞きたくて、慌てて口を開いた。


 何を話したのか、正直なところ微かにしか覚えていない。

 彼女との会話を覚えていないのは勿体ないとは思う。

 だが、仕方がないと思う。

 

 口は勝手に動いていたが、俺の心は彼女しか見ていなかったのだから。

 彼女の視線、紅潮する頬。

 呼吸を繰り返している、上下する胸元……。



 これから毎朝毎昼毎晩彼女を見る事ができて、且つ話す事や触れる事が出来るなんて、夢みたいだ。


 

 彼女に見惚れ、これからの未来に夢を馳せていると、彼女の高すぎず低すぎない声音(こわね)

俺の名を呼んだ。



 「リウヴェルさん」と!

 初めて彼女が俺の名前を……っ!!

 感動しすぎて、涙が出そうだっ!!

 さっきから強く鼓動を刻み続ける心臓が、本気で口から出てきそうだっ!!!

 


 ―――ああっ、早く家に帰って彼女ともっとたくさん触れあいたいっ!

 ―――早く家に帰らなければっ!!



 俺は彼女をエスコートしつつ、男心からその腰の細さを堪能し、何か言いたげの彼女を言いくるめながら家路を急いだ。

 


****



 家に入った俺たちに待っていたのは、強烈なクラッカー音だった―――。


 彼女と二人になりたかったが為に、『本日休業』の看板を表に出しておいた筈だったが、店内に居たのはこの店の従業員達。

 


 ―――クソッ! 何でいるんだ!? 彼女と二人になれないじゃないか!


 

 若干苛立つ心を消したのは、小さな悲鳴を上げながら俺の身体に巻きつく、彼女の腕だった。

 まさか抱きついてもらえるなど思ってもいなかった俺は、狂喜のあまり再び魂が天へ逝きそうになった。

 ……こんな幸せの絶頂で天になど逝けるかと、慌てて戻ってきたが……。


 気付けば俺の前でマルスが大笑いを繰り広げ、彼女と親しげに話していた。

 彼女の顔を見るだけで満足していた俺は、未だに彼女と親しげに話した事が無い。

 それなのに、マルスだけが親しげに話し、彼女の熱い視線を受けている。

 なぜかマルスを凝視している。

 ―――俺でも、未だに凝視してもらった事が無いのに……。

 羨ましすぎて、マルスを見る視線がきつくなる。


 俺の視線に気づいたマルスは、彼女に余計な事を言い、それを聞いた彼女は俺の身体に触れていた腕を離した。

 彼女が離れた為に、俺の身体に冷気が纏う。


 

 俺のココット嬢の視線を一人占めした挙句、俺に与えられた彼女の温もりを俺から奪ったなど言語道断だ。


 

 師匠であろうと容赦はしない。

 どんなバツを与えようか……?


 山で熊を100頭倒せ………。(ぬる)いな。

 海へ行って巨大哺乳類を50頭……。これも、温いか……?


 そう考えていた俺に、彼女の声が聞こえてきた。



 「ごっ、ごめんなさいっ!! ……亭主様を別の方に間違えた挙句に、ずっとしがみ付いたままでっ!! ご迷惑でしたよね? 」



 『亭主様』という言葉が若干気になったが、それは『うさぎ亭』の『店主』で『亭主』と言う事で納得した。

 まあそんなことはどうでもいいが、俺は彼女が誤解している事に少し戸惑った。

 大丈夫だ、と彼女の頭を撫でる。



 ご迷惑なものか。

 むしろもっと―――。



 俺の若干おしゃべりな口は、勝手に俺の心情を暴露してしまったようだ。

 彼女が驚いた顔で俺の顔を見た。


 俺の顔を見た彼女は、何故か真っ赤になり、―――その表情が、なぜかひどく官能を誘う。

 蝶が花の蜜に引き寄せられるように、彼女の手の平にキスをした時の様に、俺の顔が彼女に向かう。



 驚きに満ちた彼女の瞳を視界に収めながら、ゆっくりと彼女の顔に近づく。


 俺の視界の端に、店の従業員達が居るようだが……


 ―――― そんなのは、関係ない。


 

 

 

 

 



 










 

 

 

 



 





 


 


 

 

ご覧いただき、ありがとうございました☆


今回の後書きは、少し変えて私が書きたかったけど、あえて入れなかった部分を……(*^_^*)


くだらない内容ですがっ(-_-;)


 ****



 『リウヴェルVS筋肉親父(ココットの父)』


 今日もあの軟弱野郎が、ココット目当てに来てやがる。

 ここん所毎日あの大皿料理を平らげるようになりやがったし、そろそろ何か言って来るか……?



 そう考えている俺の元に、あの軟弱野郎が紙切れを持って俺の前に立った。


 「筋肉親―――、いや、筋肉が素晴らしい親父店主さん。 ココット嬢と結婚させてください」


 俺はその言葉に目を剥いた。

 同時に、その紙切れを見て卒倒しそうになった。

 その紙切れは……

 ―――『結婚宣誓書』だった。


 俺の大切に育て上げた愛娘を、見てくれだけは良い軟弱野郎にやれるかぁっ!!

 

 

 その言葉を言おうと口を開きかけた俺の目に、愛娘のサインを見つけた。

 しかも婚姻の承諾の欄に……。


 俺の視力は良い。

 500メートル先の蟻んこの数を数えれる程だ。


 だが、コレは俺の見間違いだと思いたい。

 だが、コレが俺の見間違いとすると、愛娘直筆の署名を見分けれなかったバカ親父になり下がる……。




 ぐぬぅぅぅっ!!!



 この軟弱野郎がっ!

 どんな手を使って俺のココットを落としやがったぁ~~!

 ―――つうか、いつの間にそんな結婚する仲になったんでぃ?!

 


 

 だが仕方がない。


 ココットがこの軟弱野郎がいいと言うなら認めようじゃないか。


 ココットには俺の様に頑丈な漢をっ! と思っていただけに残念だ……。

 ココットを熱心に口説いていたジョニーには悪いが、俺も男だ、グダグダ言わんっ!!


 

 口では強い事を言っていた俺だが、親の承諾サインをする時に泣いたのは、秘密だ。






 

 

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