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亭主様と恋の種  作者: まるあ
第三章 百花繚乱、花の嵐は尽きることなく
38/58

勘違いと勘違いで勘違い.……? 

サブタイトル通りの内容(笑)


この回はもしかしたら、後々書き直すかもしれません。その際は活動報告にてお知らせします。

『  リウヴェルの奥さん

 

お名前を存じないので、妙な宛名になってしまってごめんなさいね。リウヴェル仕様の贈り物(ぬいぐるみ)は気に入ってもらえたかしら? フィルスの顔を見ればわかるでしょうけれど、この子はリウヴェルの血縁者です。訳があり、しばらくあなた達に預けます。かなり扱いにくい子だけど、宜しくね!』




 ぬいぐるみから出てきた手紙には、そんな事が簡潔に書かれていました。

 そっくりだとは思ったのですが、やっぱりヴェルさんの血縁者さんでしたか!

 でも、どういった血縁なのでしょう。

 ……親戚の子供さんでしょうか?

 それとも、女性に見境が無いとヴェルさんが言っていた弟さんの子供さんでしょうか?

 

 チラリとフィルス君の顔を見てみると、そのどれもが違うような気がしてきました。

 親戚の子供や弟さんの子供とするには、ヴェルさんに似すぎている気がします。

  


「……もしかして」


 頭をかすめた予想に若干心が重くなりながら、傍に居るフィルス君を見ました。

 俯くフィルス君の顔は、ヴェルさんと本当にそっくりで、かなり近しい血縁者と知れます。

 途端に、先ほどマルスさんが言っていた言葉が脳裏をよぎりました。


 『嬢ちゃんと結婚する前に生まれたガキって事になる』


 ―――たしか、マルスさんはそう言ってなかったでしょうか。

 ヴェルさんの年齢的に、居てもおかしくは無いと思えます。結婚を考えていた女性がいた事も聞いていますし。


 フィルス君は、うさぎ亭の誰もが知らなかった子供。

 ヴェルさんですらこの子の存在を知らなかった……。


「もしかしてフィルス君は、ヴェルさんの……」



 『子供さん?』震えている声で、不安げに私を見上げるフィルス君にそう言おうとしました。

 しかし、坂道を転げ落ちるように聴こえてきたた荒々しい靴音が、私の声を遮りました。

 同時に、ヴェルさんの声が、暗く重い私の意識を浚います。


「―――絶対に違うからっ!! マルスも君も早とちりしすぎだ。その子の母親とそんな関係になるなんて、考えたくも無い。気持ち悪すぎる!! ……いや、その子が存在してる時点で、別な意味でかなり嫌悪感湧いてるけど」


 これから出かけるのか、ヴェルさんは外出着に着替えてきた様子です。慌てていたのか、髪が無造作に乱れていました。

 ヴェルさんは本気で気分が悪いのか、片手で口元を押さえながらフィルス君のお母様の事を、更に悪しき様に言い捨てています。

 普段温厚なヴェルさんが顔を歪めて、ここまで人の悪口を言うのは珍しいのではないでしょうか。それほどの事が、フィルス君のお母様との間にあったのでしょうか。

 

 ……でも、小さな子供の前でその子の母親の事を悪く言うのはどうかと思います!

 『気持ち悪い』とか、『年甲斐も無く』とか、『そんな親は恥ずかしい』等など。私には意味不明の言葉が何個か含まれていたのですが、さすがに言いすぎだと思えます。

 フィルス君が泣きそうになってるじゃないですかっ!


 苦悶の表情を浮かべるヴェルさんは複雑でしょうが、私もかなり複雑な心境です。

 平和な結婚生活中に、いきなり夫とそっくりの子供が現れたのですから!

 いくら私との結婚前の子供でも、正直複雑です。モヤモヤしています。

 ヴェルさん自身は全力を持って否定していますが、このフィルス君の顔はどう見ても彼にかなり近い人物だと思えます。

 世の中には三人程同じ顔が存在すると聞いた事がありますが、フィルス君のお母様の手紙によると全くの他人ではないし、黒か白かと言われれば、限りなく黒に近い灰色な気がします。

 八割がたヴェルさんの子供説が有力かと思われます。



 ……やはり、かなり複雑な心境ですが、女性特有の母性本能が幼い子供を守れと私を掻き立てます。

 今にも翡翠の瞳から雫が落ちそうなフィルス君を守れと―――。

 


 私は本能のまま机を掌で勢いよく叩き立ち上がると、フィルス君をヴェルさんの言葉の弾丸から庇うように抱きしめました。

 そして―――、


「ヴェルさんが、人の事を気持ち悪いと言える人だとは思いませんでした! しかも、子供の前でその子のお母様の悪口ばかりっ!! いくら自分の知らない間に生まれた子でも、私との結婚前に出来た子かも知れなくても、ヴェルさんの血縁者でしょう? それなのに、フィルス君が存在してるだけで嫌悪感が湧くなんて! ―――そんな事を言うヴェルさんなんて嫌いです! 見損ないましたっ!!」


 フィルス君を抱きしめる手に力を籠めて、叫ぶように一気に捲し立てると、言葉と一緒に涙があふれて止まらなくなってしましました。

 どうしてか、涙が流れるのです。

 悲しくないのに。

 ヴェルさんが、幼いフィルス君に投げた言葉に怒っているだけなのに。



 ヴェルさんは驚いたように目を見開くと、それまで口を覆っていた手を降ろしました。

 慌てていて転んだのか、血が滲んでいる口を開いて「ごめん」と呟くと顔面蒼白になりながら、私の頬へと腕を伸ばしました。

 顔の前に迫るのは、私の大好きなヴェルさんの温かな手です。きっと涙を拭おうとしてくれているのでしょう。

 彼の手に包まれると、癒されるような安らかな気分になる、その手です。

 ですが、訳のわからない苛立ちで怒っていた私は、ヴェルさんの手を避けると腕の中のフィルス君を引っ張る様に連れ出してしまいました。

 




「おねえちゃん」

 

 どの位歩いたのか、フィルス君が私を呼ぶまで小さな腕を強く引っ張っていたのに気付きませんでした。

 フィルス君の白い腕は、私が強く握りしめた所為で赤くなっていて、痛々しい程です。

 膝をついて、その箇所を擦ります。手を当てる事で、少しは痛みが和らぐと聞いた事があります。文字通り、『手当て』ですね。そんな事を考えながら、フィルス君の顔をのぞきました。


「ごめんなさい。痛かったでしょう?」

「ううん。おねえちゃんは痛い?」

「―――? いいえ? どこも痛くないですよ」


 心は痛いですが。

 お店の扉を出る時にチラリと見たヴェルさんの顔を思い出すと、胸がずきずきと痛みます。心が張り裂けそうです。

 ……あんな泣きそうな顔をさせてしまうなんて。

 ……世の中の終わりの様な顔をさせてしまうなんて。


 フィルス君は、首を傾げながら私の頬に触れました。

 撫でるように一度こすると、次は私の頭に手を置いて撫で始めました。


「ぼくが泣くとね、ママがこうしてくれるの」


 気付かない間に、また涙が流れていたようです。

 フィルス君の優しさが、痛んだ心を補修するようにしみ込みます。

 


「……フィルス君」


 フィルス君は私の頭を撫でながら、しきりに慰めてくれています。

 その慈愛に満ちた頬笑みは、天使の様です。

 きっとお母様の育て方が良かったのでしょう。父親のいない子供を育てるのは大変なのに。おそらく初めての親子の邂逅だったのに。

 それを、私が勝手に怒って台無しにしてしまいました。

 

「……勝手に連れだしてごめんなさい。はじめてお父様と会えたのに、ヴェルさんがあまりにひどい事ばかり言うから」

「おとうさま? ……パパ? パパはお城にいるよ。お仕事なの!」


 ニコニコとするフィルス君のその一言で、私の頭が真っ白になりました。


 あらっ?


 ……お城。

 ……ヴェルさんの弟さんのお子様ですか?

 


 

 

全否定してるのに、フィルス君が自分にそっくりなばかりに信じてもらえない亭主様(:_;)

ココットが出ていった後も、真っ白になってます。きっと気付いたマルスが喝を入れる事でしょう(笑)


次回辺りに、亭主様視点を入れようと思っています☆


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