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亭主様と恋の種  作者: まるあ
第二章 種を育てた末に
30/58

初めてのキスは月が見ています

やっと二章が終わりました! ここまで読んでいただきありがとうございました☆

三章の開始は暫く後になりますが、更新できそうならしていこうと思っています!


三章は溺愛をテーマに考えております^m^


後書きに、その後の小話が入ります。直伝薬の行方とか……。

 私の言葉を聞いたヴェルさんは、神をも魅了できるほどの蕩ける笑みを浮かべました。

 ずっと待っていた言葉を聞けたかのような、かたい蕾が花開いたのを見届けたような、そんな笑顔です。

 神をも魅了する笑みに、私が敵うわけありません。

 ……正直に言いましょう。この世の物とは思えない美しさに見惚れました。時間が止まったと思えるほど、他の事など考えれない位に見惚れてしまったのです。



 不意に私の身体が引き寄せられ、気付けばヴェルさんの腕に包まれていました。

 温かな、腕の中に―――……。



「嬉しいよ。俺も君と同じだ。―――聞こえる? 俺の心臓の音が」



 耳元から聞こえる心臓の音は、全力疾走をした後のように早鐘を打っています。

 私と、同じ気持ちなのですね。

 ちょっとした事でも心臓が高鳴って、相手の事しか考えれなくなる。



 瞳を閉じて、ヴェルさんの鼓動と温かな温もりに酔いしれました。

 ここが外で、他の街ゆく人が見ていることなど全く気にならない程に……。



 ヴェルさんの香りを堪能しながら温もりに酔いしれていると、不意に瞼に温かなものが触れました。

 瞼に口づけをされたようです。

 反射的に目を開けると、そこには切なげに金の睫毛を揺らす双方がありました。

 


「ごめん。さっきの言葉に浮かれて、約束を破った。君が俺を好きになるまで何もしないと言ったのに、抱きしめた上に瞼にキスを……」




 口元を覆いながら、ヨロリと一歩離れたヴェルさん。

 優しい温もりが離れると夜風が肌をかすめました。それを寂しく感じ、咄嗟に彼の服を掴んでしまいました。


 ―――離れないでください。

 さっきは言葉が足りなかったのです。

 いつもヴェルさんを見てしまうのは……。

 いつもドキドキと切ないほどに胸が高鳴るのは―――。



「ヴェルさんの事が好きです! ヴェルさんの綺麗な翡翠の瞳が好きです。温かい手が、柔らかな低音の声が、私を包むような優しさが好きです!! ……まだ、ヴェルさんの気持ちには程遠いかもしれませんが、あなたの事が好きなんです。だから―――」


 

 謝らないで、離れないで、そう言おうとしました。

 しかし、全ての言葉を言う前に、温かなヴェルさんの唇によって遮られてしまいました。

 目を見開いた視界に入ったのは、ヴェルさんの長い金の睫毛でした。

 ゆっくりと唇が離れると共に開く翡翠の瞳が、私の見開く瞳と合わさり、ヴェルさんが僅かに驚きの色をその瞳に浮かべました。

 苦笑する声が聞こえると、同時にヴェルさんの艶がかった声が耳朶を打ちました。

 


「君の事を世界で一番愛してる。――――目を閉じて」



 その声に導かれるように、瞳を閉じました。

 再び瞼に落とされた唇の温かさを心地よく感じ、彼の息遣いを肌で感じてこの次におこることへの予感に胸を高鳴らせました。

 

 唇が重なる瞬間「もう遠慮はしないから」と、甘い言葉を囁かれたのですが、重なった唇はその言葉を表わすかのようなものでした。

 ……私の中での、口づけの概念を取っ払うような。

 今までそんな経験が無い私は、翻弄されてしまったのは言うまでもありません。




 私の許容量を超えたようで、再び腰が抜けてしまったのは余談です……。

恒例(?)の後書き小話を収録してあります。


今回はアンナ視点です。

二人の帰宅後の様子や、直伝薬の行方を書いてあります^m^


読んでもいいよと思われる方は、下へとズズイ~とお進みください!(^^)!

 

↓↓↓↓



  『アンナの思惑』



 いつものように、リウヴェルが奥さんであるココットちゃんと手を繋いで帰ってきた。

 ……いつものように……?

 いや、今日は違うみたい。

 何だろう? どことなく二人の雰囲気が違う。

 真っ赤な顔の彼女と違い、リウヴェルはとても機嫌が良いようだ。

 機嫌が良いと言うよりも、頭に花が咲き乱れていると言うか……。

 とりあえず、アホっぽい。



「何かあったの? 」



 出ていく時の二人の雰囲気の違いに、疑問が湧いた私は興味深々とばかりアホ面の方に聞いてみた。

 こちらを見たアホ……リウヴェルは、口元を気持ち悪いほど緩めてこちらを見た。



「色々と良い事が。……ね? 」


 

 背中が冷える様な、妖艶とも言える笑顔を浮かべた後ココットちゃんに視線を移した。

 話をいきなり降られたココットちゃんの方は、小柄な体を震わせると、湯気が出てきそうな程顔を赤らめて「そそそ……そうですね」と、どもっている。

 何が有ったんだと疑問に思う私が、首を捻りながら二人を見送ったのは言うまでも無いだろう。



 明くる日。

 リウヴェルが妙にスッキリした顔で私の前に現れた。悩みや疲れが吹き飛んだような、そんな表情だ。緩みきった口元は、アホ面に磨きがかかった顔とも言えるかもしれない。

 何やら緑の液体が入った小瓶を手にしている。

 


「結構前に、強力な眠り薬が欲しいとか言って無かったっけ? コレあげるよ」

「はぁっ?! ナニ、この妖しげな薬は……。何か浮いてるじゃないの! 」

「文句言うならあげないよ? 『ラサジエ』店主直伝薬らしい。コレを飲んだら、どんな屈強な男でも一分と起きていられないらしい」

「―――そ、それはもしかしてっ!! 」



 『究極! 即効爆眠薬』じゃないの?!

 ラサジエの店主がまだ軍医をしていた頃に開発したと言われている、毒物がふんだんに使われた睡眠薬を超える爆眠薬!!

 毒物ばかり入っているのに、不思議と身体に不調が起きない隠れた妙薬!!

 飲んだら、何をしても一週間は目覚めないと噂の、幻の不眠症の治療薬!!

 


 

「ほっ、欲しい! いや、ください!! 喉から何本も手が出る程に欲しいですっ!! 」



 コレを使えばマルスさんを私のものに!!

 コレを使ってマルスさんを昏倒させ、寝台で裸になり隣に寝ていれば、変な所真面目な彼の事だ。既成事実を作ったと勘違いするに違いない。

 


 リウヴェルの手から奪うように『究極! 即効爆眠薬』を貰いうけた私は、黒い笑いを浮かべながらマルスさんのいる厨房に向かうのだった。



 マルスさんっ! 

 この十年来の愛を受けてくださいねっ!!


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