第7話:喧嘩の絶えない六連星は優雅とは言えない
「……そろそろ行きましょうか~。」
もらった一欠けを食べきったところでサクラが声をかけてくる。
それに頷き、ルリの方を見た。
「……それじゃあケンイチ先生、行ってきますね。」
「おう、いってらっしゃい。」
それに気づいたルリも、ケンイチに声をかけてからやって来る。
「じゃあ、行こっか。」
そう言って歩き出すルリについて行く。
「……すみません。わざわざ。」
「うぅん、気にしないで。……他のみんなにはもう会えた?」
サクラと二人でこれまでの道程を話す。ルリはそれを楽しそうに聞いていた。
「良かった。アスカちゃんもここで楽しくやっていけそうだね。」
「……これから会う二人次第ですけどね。」
そう呟くと、ルリはクスッと笑う。
「大丈夫だよ。スバルちゃんもカリンちゃんもちょっとお口が悪いところはあるけど、根は優しい子だから。」
「それが不安なんですが……。」
そんな話をしながら談話室の前に来た。しかし、中に人の気配は無い。
「……別の場所に行っちゃったんでしょうか~?」
扉を開けて中を覗く。椅子と丸い机がいくつか置かれており、その奥には話に聞いていた暖炉もある。しかし、人影はどこにもなく、部屋は静寂に包まれていた。
食堂で話を聞いてから幾分か時間が経っている。どうやら目的の二人は移動してしまったようだ。
「……ごめんなさい。私がもたもたしてたから。」
「いえ、謝ることではありませんよ。」
しゅんとして謝るルリをなだめる。
どうしたものかと三人で悩んでいると—。
「良かった、アスカさん。スバルさんとカリンさんは食堂にいますわ。」
ユキナがやって来て教えてくれた。
四人で食堂へ向かうと、スミレの正面に二人の少女が並んで座っている。
一人は黒い長髪を左右で二つに結んだ、勝気そうな釣り目の少女。
もう一人はぼさぼさの茶髪に溌溂とした雰囲気の中性的な少女だ。
「おっ、カリン、それウマそうだな。」
「ちょっとスバル!アタシのクッキー勝手に食べないでよ!」
「いいじゃんかちょっとくらい。ケチくさいこと言うなよな。」
「だから自分のやつ食べればいいでしょ!このバカ!」
「なんだと!」
「何よ!」
どうやらボーイッシュな少女が黒髪の少女のおやつを食べてしまったらしい。
見慣れた光景なのか、一緒にいるスミレに二人を止める様子はない。
「あぁもうっ!今日という今日は許さないんだからっ!」
「上等だっ!かかって——。」
「二人とも?」
一触即発、というところで二人に声がかけられる。
喧嘩に発展しかけた二人がこわばった顔でこちらを見た。
背筋を悪寒が這い、アスカも恐る恐る隣を見る。
ルリは笑顔で二人を見ていた。
「今日、新しい子が来るって話、あったよね?今日くらいは喧嘩しないようにって、言われたよね?」
しかし、その声音からは決して笑っているようには感じられない。
「いや、これはスバルが——。」
「何?」
「ナンデモナイデス……。」
黒髪の少女—カリンが何か言いかけるが、ルリからの圧に屈して目をそらす。
「仲良くできるよね?」
「「はい………。」」
こうして喧嘩は終息した。
夕食はとても豪勢であった。
数々の料理が並び食卓を彩っている。
アスカの歓迎にとミドリが張り切ったようで、普段はこんなにたくさん出てこない、とはサクラの談。
シズカから軽く紹介され、挨拶もそこそこに目の前に並ぶ料理の数々に舌鼓を打っていると、アスカに声をかける者がいた。
「たのも~」
「………えっと、初めまして、メグさん。」
目が覚めていてもふわふわしている少女—メグは、アスカをじっと見つめた。
「………………。」
「………………えっと?」
動かなくなったメグに戸惑い、しばし見つめあう。
「……よろしく~。」
やがてメグは満足したのかうんうんと頷き、手を差し出してきた。
「メグちゃん、アスカちゃんのこと気に入ったみたい。」
後ろからイノリが現れ、説明してくれる。
「よ、よろしくお願いします。」
アスカは差し出された手を握った。
「メグちゃんはいっつもお眠さんですけど~、と~っても賢くて、一度見たものは絶対忘れないんですよ~。」
隣に座っているサクラが教えてくれる。
メグは満足したのか自分の席へと戻っていった。
「…………自由な人ですね。」
そう言いながら、今日会った人達を眺めていく。
これだけ個性的な人達に囲まれれば、ここでの生活は退屈しなさそうだと思うアスカであった。




