第2話:可愛らしい同居人
「今ここにいる子供は12人。みんな女の子だから、そこは安心してね。」
シズカとの面談のあと、マリナに連れられて館内を歩く。
「大人は私と院長の他に先生兼用務員のお兄さんとお姉さんがいるよ。後で紹介するね。」
「勉強はマリナ先生が教えるということですか?」
午前中は勉強の時間らしい。先ほど先生と呼ばれていたマリナが勉強を見るということなのだろう。
「おっ、そうだぞ☆ビシバシやるからなっ☆……なんかイヤそうだな。」
「……いえ、そんなことは。」
どうやら顔に出てしまっていたようだ。
「ンもう!心配しなくてもちゃんと見るから大丈夫!でもまずは、これから生活する自分の部屋に行かないとね☆」
ここでは二階が子供たちの居住空間であり、二人で一部屋を割り当てられるらしい。
つまり、相部屋の人間に今後の生活が左右されるわけだ。
「同室の方はどんな人なんですか?」
その問いにマリナは少し考え——。
「のんびりした子よ。喧嘩とかとは無縁な子だから大丈夫。」
そう言ってアスカの頭を撫でた。
アスカは子ども扱いされていることに苛立ちを覚えたが、ここで怒っては本当に子どもだと考え、抗議の視線を送る。
「ここよ。」
しばらく歩いて一つの部屋の前に立ち止まり、扉を叩く。
「は~い。」
気の抜けるような返事とともに扉が開けられた。中から出てきたのは、栗色のショートカットの少女だった。
「サクラちゃん、この子はアスカちゃん。前に話したあなたと同室になる子よ。仲良くしてあげてね。」
それを聞いた少女—サクラは大きく目を見開いてアスカへと視線を向け、一瞬の沈黙の後、顔をほころばせた。
「ふわぁ~。やっとサクラと同じ部屋の子が来てくれたんですね~。よろしくお願いします~。」
ゆったりとした口調に似合わない素早い動きでアスカの手を握りブンブンと振るサクラ。
「よ、よろしくお願いします。」
いきなりの熱烈な歓迎に、アスカはそう返事をするのが精いっぱいであった。
「お荷物はそれだけですか~?」
「サクラが案内します~!」と意気込むサクラに、マリナは「あとはよろしく☆」と去って行き、あてがわれたベッドに座って一息つくと、サクラが声をかけてきた。
用意された部屋は想像していたより広く、ベッドと机を二つずつ置いて尚、ゆったりと寛げるほどであった。
この部屋で一人でいるのは少し寂しいかもしれない。そう考えると先程の熱烈な歓迎も納得できる。
「そうですね。今はこれが私の全財産です。」
そう言ってカバンを叩く。中身は最低限の着替えだけだ。
「そうなんですね~。………。」
それだけ言うとサクラは黙り込んでしまった。アスカは気にせずカバンの中から着替えを取り出し、クローゼットにしまっていく。普段は指定の制服を着るらしいので、必要なのは下着くらいなものではあるが。
「アスカちゃん。これ~。」
そうしていると再び声をかけられる。振り返ると、ぬいぐるみを抱えたサクラが立っていた。
「お近づきのしるしです~。ぎゅう~ってすると、と~ってもぐっすり寝られるんですよ~」
「あ、ありがとうございます。」
差し出されたぬいぐるみを受け取る。明らかに手作りなそれは緑色の丸っこい体に耳とリボンを付けており、トロンとした垂れ目でこちらを見上げている。何をモチーフにしたものなのかは全くわからない。
「これ、何の生き物なんですか?」
「さぁ~?」
「…………。」
気の抜けた返事にアスカもまた脱力してしまうのであった。




