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腹ペコな○○たち  作者: 在処


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エピローグ:腹ペコな○○たち

 燃え盛る館を見上げながらアスカは息を吐いた。白い息は山の空気に溶けていく。

 炎の熱が顔を照り付ける。離れようと(きびす)を返すが、歩き出す前に袖を掴まれた。

「ルリさん……?泣いてるんですか?」

 隣を見ると、ルリが涙を流している。

「…………うん。なんか、ね……。」

 ルリは館を見上げたまま答えた。炎に照らされて、頬を流れる涙が光る。

「おぉ~い二人共~!そろそろ行こうよ~!」

 振り返ると、アヤが手を振っていた。荷物を背負って歩き出す。

 鍵を使って正門を開けると、風が吹いて少女達の髪を揺らした。

「道はわかりましたか?」

「メグちゃんが山道以外の道を知ってるって。まだ少し雪が残ってるけど、人目に付きにくい道らしいからそっちから行くのがいいかも。」

 アヤはヒナコと手をつないでいた。その後ろでは、コナツとメグが手をつないでおり、皆一様に大きな荷物を背負っている。

「さぁ、行こう!あたし達の自由な世界へ!」

「「おー!」」

 アヤの声にコナツとヒナコが元気よく答え、少女達は歩き出す。

 アスカは最後に振り返り、いまだ燃え盛る館を見上げた。

 手首に括り付けた白い装飾が揺れる。

「…………さようなら。」


「…………なによ、これ……?」

 焼け落ちた館を見上げながら、女は呟いた。周りでは警察官達がせわしなく動き回っている。

 春が近づいて山道が開かれたため、秋に送った少女の様子見を兼ねて昔馴染みの友人を訪ねて来たのだが、待っていたのは真っ黒に崩れた建物と同僚たちの姿であった。

「……貝塚(カイヅカ)さん?今日非番でしたよね?」

 呆然としていると、こちらを見つけた後輩が話しかけてくる。

「……塩路(シオジ)君。何があったの?」

「見ての通り火事ですよ。幸い山には燃え移らなかったみたいですけど。」

 後輩は淡々と答える。そんなことを聞きたかったわけではない。

「死傷者の数は?!ここの人達はどうなったの?!」

「えっ?……えっと、それが…………。」

「さっさと話すっ!」

 後輩の煮え切らない反応に苛立ち、締め上げる。後輩は苦しそうにもがきながら続けた。

「痛だだだだっ!何も見つかってませんっ!遺体も怪我人も誰もぉ!」

「誰も……?」

 予想だにしない報告に力が抜ける。後輩は肩で息をしながら女から距離をとった。

「はい。人がいた痕跡はありますが、付近には誰もいませんでした。もしかしたら、どこかに避難しているのかもしれません。」

「……こんな山の中に、避難する場所なんてあるわけないでしょ。」

 近くに建っていた炭焼き小屋の焼け跡に近づいた。どうやら付属する建物も全て燃えてしまったらしい。足元は雪解け水でぬかるんでおり、歩くたびにぐじゅぐじゅと不快な音を立てながら靴を汚していく。

「…………誰かが火を点けたんだわ。」

 館と炭焼き小屋の間には、それなりに距離がある。火が燃え移るとは考えにくい。

「………………何があったの、静香(シズカ)?」

 呟いた声は、いまだ冷たい山の風に消えていった。


「……これからどうします?」

 山の麓で、六人の少女が歩いている。

「とりあえず、町まで行って服を買おうよ。それから——。」

 大きな荷物を持った少女達は、手をつなぎながら楽しそうに話す。

「町まで行ったら、おいしいものをいっぱい食べたい!」

「いっぱい食べるですよ!」

 春の陽気が暖かく世界を照らし、どこからか鳥の鳴き声が聞こえてくる。色鮮やかな花々が目の前を彩り、蝶達がその間を飛び交う。

「もう、そんなこと言ってると……ねぇ?」

「……ですね。」

「あぁ~、たしかに。」

「ふわぁ……そうだね~」

 少女達は互いを見つめ合い、声を上げて笑った。


「「「「「「おなか空いた~!」」」」」」



 完

 いかがでしたでしょうか。

 彼女たちは様々なものに飢えていました。これを読んでいただいた皆様の目には、彼女たちがどのように映りましたか?

 かわいそうな少女?それとも……?

 彼女たちの旅はまだ始まったばかりですが、当作品はこれにて完結です。

 また別の物語でお会いしましょう。


 少しでも面白いと思っていただけたなら、評価、リアクションをいただけると嬉しいです。


 ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。

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