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腹ペコな○○たち  作者: 在処


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第9話:ルリの秘密

 午前の授業の後は食堂で昼食をとり、午後からは自由時間である。

「アスカちゃんはお昼からは何をしますか~?」

 サクラが午後の予定を聞いてくる。

「少しルリさんに用があって……。どこにいるかわかりますか?」

「……そうですか~。ルリちゃんなら、たぶん炭焼き小屋ですね~。」

 何かに誘ってくれようとしていたのだろう。サクラは残念そうにルリの居場所を教えてくれた。

 それに申し訳なさを感じつつ館の東側へ向かうと、小屋の前ではケンイチが薪を割っているところであった。

「やぁ、アスカさん。ここでの生活にはもう慣れた?」

 笑顔で話しかけてくるケンイチ。

「はい。あの、ルリさん来てますか?」

「うん、中にいるよ。」

 それを聞いてアスカは再び歩き出す。

「……これからアスカさんと秘密のお話をしようと思うんです。」

 が、念のためケンイチに釘を刺しておくことにする。

「……えっと、わかった。俺は隣の畑にいるから、何かあったら声をかけてね。」

 それで察してくれたのか、ケンイチは持っていた斧を置くと、去って行った。

 心の中で礼を言って、炭焼き小屋へと入る。

 扉を閉めて奥へ進むと、ルリは初めて会った時と同じように燻製器の前に座っていた。

「ルリさん。」

 アスカが呼ぶと、ルリは振り返る。

「……アスカちゃん。今日は一人なんだ?」

 しかし、それだけ言って燻製器の方へ向き直ってしまった。

「……火を扱うときは二人以上で、じゃなかったんですか?」

 アスカはそう言って近くにあった椅子を持って近づき、ルリの隣へと腰掛ける。

「火の番をしてるだけだから、一人でも大丈夫だよ。」

 ルリはじっと火を見つめている。二人の間を沈黙が流れた。

「……聞きたいことがあるんです。」

 アスカが沈黙を破ると、ルリは次の言葉を待つように顔を上げて見つめてくる。

「ルリさん。もしかしてあなたは——。」

「…………………………………………アハッ。」

 アスカが何を聞こうとしたのか察したように、ルリが笑った。

「やっと気付いた?………久しぶりだね、アスカちゃん。」

 その姿は心の底から嬉しそうで——。

 アスカはなぜか、少しだけ恐怖を感じるのであった。



「どうしてあの時、初めましてなんて言ったんですか?」

 二人で火を眺めながら語らう。

「サクラちゃんに知られたくなかったの、昔のこと。それに……4年も会ってないんだから、初めましてみたいなものでしょ?」

 ときおりぱちぱちと火の粉が爆ぜる音が心地良い。

「いつからここに?」

 アスカの視線に、ルリはまっすぐ見つめ返してくる。

「アスカちゃんが引き取られて行ってすぐかな。色々あったんだ。」

 初めて会った時の違和感、記憶の奥を揺さぶられるあの感覚は、どうやら気のせいではなかったらしい。

 アスカが前にいた孤児院に、ルリも暮らしていたのだ。

「ケンイチさんから新しい子が来るって色々教えてもらってたの。その時はわからなかったけど、一目見てすぐに気付いたよ。」

 嬉しそうに笑うルリ。

「だったらもっと早く教えてくれればよかったじゃないですか。一ヶ月も黙っているなんて。」

「だってアスカちゃん、忘れてるみたいだったし。それなら、新しい環境で一から関係を始めるのもいいかなって。」

 かと思えば、今度はいたずらっぽく笑って見せる。

「……もういいです。」

 アスカは仕返しとばかりに(しお)れて見せた。

「さ、再会できたのは本当に嬉しかったんだよ?!でも、アスカちゃんも色々あったみたいだし、昔のことをあんまり思い出させるのはどうかなって思ったのもあって……。」

 ルリは焦ったように捲し立てる。

「そこは感謝してます。……私もまた会えて嬉しいですよ。」

「……えへへ。」

 言い合った末に二人で笑いあう。

 これまでの時間を埋めるように様々なことを語り合いながら、穏やかな時間は流れていくのであった。



「……再会した時から思ってたんですけど。」

 思い出語りの中で、アスカはある疑問をぶつけた。

「ケンイチ先生と随分仲が良いんですね。」

「…………………………………………。」

 その問いにルリは答えず、顔を赤くして目を逸らす。

「……そんなに、わかりやすかった?」

「えぇ、まぁ。」

 アスカが頷くと、ルリは呻き声を上げ両手で顔を覆う。

「…………みんなには言わないでね。」

「いえ、多分みんな気付いていると思います。」

「……………………うぅ…………。」

 ルリは再び呻くとぶんぶんと頭を振り、動かなくなってしまった。

「そんなに良いんですか?あの人が?」

「だって優しいし、ああ見えて力持ちだし、笑うと可愛いし、私の事大切にしてくれるし…………。」

 アスカの問いに、今度はうっとりと語りだすルリ。

「それにすごく物知りで、私にいろんなことを教えてくれるし。」

「……それって変な意味じゃないですよね?」

「ケンイチさんはそんなことしないもんっ!」

 その後もケンイチとのエピソードを語り続けるルリを何とかなだめる。

「……とにかく、これからもこのまま、ここで知り合った仲ということでいいんですね?」

「うん、みんなには秘密の関係。……なんてね。」

「……どこで覚えたんですか?そんな言い方…………。」

 あまりにも含みのある言い方に、アスカは目を覆うのであった。

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