未来
上位存在の本体が退いた後。
都市は静かだった。
だがノアだけが落ち着かない。
未来の流れに、
“引っかかり”がある。
一本の未来が、
何度見ても同じ場所で途切れる。
「……ここ、だれかいる」
イリスが観測を重ねる。
「空白ではない……隠蔽」
アークが低く言う。
「意図的に隠してる?」
ゼルが笑う。
「趣味悪ぃな」
空間が――裏返る。
四人は観測層のさらに外へ引き込まれる。
そこは世界ではない。
舞台裏。
光の線が無数に伸び、
未来が糸のように管理されている。
その中心に――
一人の存在が座っている。
人の形。
顔は曖昧。
「よく来たね」
声は穏やかだった。
だが全員が理解する。
こいつが――
設計者。
ノアが震える。
「あなた……なに?」
存在は微笑む。
「私は観測の設計者。
君たちの世界の“枠”を作った」
イリスの瞳が揺れる。
「……創造主?」
「近いね。
正確には“編集者”だ」
光の糸が動く。
虚無の発生。
上位存在の侵入。
全てが“調整”として表示される。
ゼルが怒鳴る。
「全部テメェの都合か!?」
「均衡だよ。
世界は刺激がないと停滞する」
ノアが前に出る。
「それ……えらんでない」
設計者が首を傾げる。
「でも世界は続いた」
ノアの瞳が燃える。
「わたしたちが、えらぶ」
イリスが並ぶ。
「外部編集、拒否」
観測が展開する。
だが設計者は触れられない。
未来そのものを書き換える。
世界が巻き戻り始める。
アークが叫ぶ。
「このままじゃ最初に戻る!」
ノアが叫ぶ。
「みんな、えらんで!」
都市と同期。
市民の意志が流れ込む。
笑い。
悲しみ。
希望。
イリスが支える。
「集合観測――成立」
設計者の編集権限が揺らぐ。
光の糸が絡まる。
ゼルが吠える。
「今だ!!」
アークが枠組みを書き換える。
「この世界の所有者は――住人だ!」
設計者が初めて驚く。
「……想定外だ」
ノアが手を伸ばす。
「さよなら」
観測が確定する。
設計者の権限が剥離。
存在が薄れる。
「興味深い結末だ……
君たちに任せよう」
光が消える。
舞台裏が閉じる。
四人は都市に戻る。
未来が静かに流れている。
誰にも編集されていない。
ゼルが息を吐く。
「やっと自由か」
アークが笑う。
「最初から欲しかったものだ」
イリスが空を見る。
「未確定……完全許容」
ノアが微笑む。
「これから、えらぶ」
空は広い。
世界は誰のものでもない。
住む者のものだ。
物語は終わる。
未来が続く限り。




