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出来損ないと呼ばれ追放された魔王の子供は国を創造し王となる  作者: 蒼崎しんのすけ


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15/19

許容

昼下がりの都市リベルタ。


市場はいつもの騒がしさだった。


その上空に――

音もなく、少女が立つ。


イリス。


銀の瞳が街を見下ろす。


かつてなら“整理対象”だった光景。


今は違う。


「……未確定」


彼女はゆっくり降り立つ。


誰も気づかない。


観測の膜で存在を薄めている。


だが一人だけ――


ノアが振り向く。


「……きた」


ノアが駆け出す。


人混みを抜けて、

まっすぐイリスの前へ。


二人は向き合う。


沈黙。


イリスが言う。


「観測継続のため来訪した」


ノアは首を傾げる。


「……あそびにきたの?」


イリスが止まる。


処理不能。


「……近似」


ノアが笑う。


「じゃあ、いこ」


手を掴む。


イリスの瞳がわずかに揺れる。


触れられるのは初めてだった。



市場。


音、匂い、色。


イリスの視界が忙しくなる。


「情報過多……」


ノアがパンを差し出す。


「おいしい」


イリスは観測する。


糖分、熱、構造――


ノアが言う。


「たべるの」


イリスは恐る恐る口に入れる。


咀嚼。


沈黙。


「……非効率だが、良い」


ノアが笑う。


ゼルとアークが到着する。


ゼルが腕を組む。


「また世界消しに来たのか?」


イリスは首を振る。


「今日は消去しない」


アークが微笑む。


「歓迎するよ」



通りで子供が転ぶ。


泣き出す。


イリスの視界に未来が開く。


泣き止む未来。

怪我が悪化する未来。


彼女は一瞬迷う。


最適化なら即修正。


だが――止まる。


ノアが子供に手を伸ばす。


「だいじょうぶ?」


子供は笑う。


自然な回復。


イリスは理解する。


「介入不要……」


彼女は呟く。


「これが“任せる”か」


塔の屋上。


夕日が街を染める。


イリスは静かに見ている。


未来は見える。


だが、確定しない。


ただ流れる。


「……綺麗だ」


ノアが座る。


「でしょ」


ゼルが笑う。


「観測者が感想言ったぞ」


アークが言う。


「それでいい」


イリスは小さく頷く。


「未確定……許容」


イリスは帰らない。


観測のため――という名目で、

都市に留まる。


市場の人々は最初こそ戸惑うが、

すぐに慣れる。


無表情でパンを観測する少女は、

やがて日常の一部になる。


ノアが笑う。


「ともだち」


イリスがわずかに首を傾げる。


「……定義更新。

ノア=友」


夕日が沈む。


都市は動き続ける。


観測者も、その中にいる。

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