第7話:佐藤ひまわり
こちらはヒロインの視点から描かれた章です。
佐藤ひまわりは犬飼陽輝のことをどう思っているのでしょうか?
(佐藤ひまわりの視点)
魔法使いを選んだ。戦うのは好きじゃないけど、もし戦うことになったらこの方が安全かもしれない。私の知識だと、戦士は戦って、魔法使いは火を投げる……それだけ。
だから、一番賢いのは誰かに助けを求めること。多分、誰かが訓練してくれる。でも、それだけで足りるのかな?
周りを見回すと、みんなそれぞれに話していたり、「レベル上げに行こう!」とか言ってたりする。……犬飼くんは、これをゲームだと言ってたっけ?
犬飼陽輝。彼を見つめると、何もない空間をじっと見ていた。他人のインターフェースは見えないはずなのに、彼は考えるポーズを取りながら、まるでパソコンを操作するみたいに指を動かしていた。
すごく自然な動きだった。ここを出る前から、もう前に進み始めてる感じ……私も見習うべきかもしれない。
彼って、教室でもずっとスマホを見てた。今と同じような動きだった。値段を調べてるって言ってたし、入学初日には「店を開きたい」とか言ってた。
全部、そのための準備だったのかも。文化祭でやったメイド喫茶も、彼が全部仕切ってた。あのときだけは、ほんとに楽しそうだった。
……私も、彼に付いて行った方がいいのかもしれない。
そっと近づいたけど、彼は全く気づいていなかった。
「ねえ……」と声をかけると、犬飼くんの目が私に向き、指を左にスッと滑らせてから、やっとこちらに意識を向けてくれた。
「佐藤さん、何か困ってる? 魔法使いのことを話そうか? この職業、ある程度の慣れが必要だけど、マクロに詠唱時間がないから強いんだよ。多分スパム戦法が……」
「ま、待って! えっと、まずそれを話す前に……あれ、何を言おうとしてたんだっけ……」なんだろう、この人、地雷っぽいけど変に安心できる。
「犬飼くん、名前通り犬っぽいね。インターフェース見てるとき、尻尾が動いてるみたいだったよ。……ああ、安心した。えっと、その、パーティってあるんでしょ? 組んでもいいかなって思って……」
「今の失礼じゃない? まあいいや。魔法使い二人は悪くない。でも、タンクと近接、あと遠距離一人は必要だな……」犬飼くんはクラスメートたちを見回した。頭の中、どうなってるんだろ。ほんとに尻尾振ってる姿が想像できる……
「佐藤さん、あと三人、戦士を探して。タンクなしじゃパーティは成立しないから」……うん、たぶん私がリクルーターになるしかない。この人、他の人を引かせちゃいそうだし。
「……わかった」そう答えて、私は他の人の方へ歩き出した。地雷を踏んだ気もしたけど、これが一番の選択肢だと思う。少し離れて、もう一度犬飼くんの様子を見た。
「ヒーラーがいない……まずはアイテムの作り方を覚えないと。それからこの世界の市場の仕組みも……」……この人、一体なにがしたいの?
犬飼陽輝は最初の仲間を得た。
佐藤ひまわりが集める仲間たちは、一体どんなメンバーになるのだろうか?